ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか絶賛公開中のサミュエル・マオズ監督最新作『
運命は踊る』。

公開するやSNS上で<構成、映像、演技のすべてに圧倒される><今年ベスト級>と絶賛の感想があふれ、はやくも監督の次回作が待ちきれないとの声が飛び交う本作。
監督は、デビュー作『レバノン』で第66回ヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)に輝いた、イスラエルの鬼才サミュエル・マオズ。

8年ぶりとなる最新作『運命は踊る』では、同映画祭審査員グランプリ(銀獅子賞)ほか、イスラエル・アカデミー賞で主要8部門受賞など国内外で高い評価を得ている。

『運命は踊る』では、夫婦に告げられる息子の戦死の〈誤報〉をきっかけに、思いもよらない方向に掛け違っていく3人の〈運命〉が描かれる――。

画像: © Pola Pandora - Spiro Films - A.S.A.P. Films - Knm - Arte France Cinéma – 2017

© Pola Pandora - Spiro Films - A.S.A.P. Films - Knm - Arte France Cinéma – 2017

この度、本作のヒットを記念し、10月12日(金)に新宿武蔵野館にて『ミステリ映画』の論点からパンフレットに寄稿した脚本家の會川昇氏と、サミュエル・マオズ監督来日時に対談をはたした映画評論家、ライターの森直人氏が登壇し、映画の魅力を徹底解剖するトークイベントを行った。

『探偵は観客自身』!監督が仕掛ける謎かけを解いていく楽しさ

本作の感想について問われると、

會川氏「一見、捉えようがないように見えて、すごく面白いつくりの映画。監督は劇中で何度も観客に謎かけを提示しますが、きちんとすべてを回収している。冒頭に映し出される車にいったい誰が乗っているのか、孫の死を伝えに行った際に母はなぜあんな態度をとったのか、息子の部屋にあったアダルト雑誌を父が悲しげに見つめていたのはなぜか、すべて観客に答え合わせをしてくれる。作家性の一つではあるけれども、匂わすだけで回収せず『あとは家に帰って自分で答え合わせをしてね』
という作品が多々あるなかで、意外にこの映画のつくりは珍しいんですよね。でも、それでいてあのラストを想像できる観客はほとんどいないと思います」

森氏「會川氏が指摘したように、従来の『ミステリ映画』のイメージと少し違って、映像言語やイメージの解釈を必要とさせるので頭をフル回転させて観る楽しさがあるし、冒頭から世界観ごと仕掛けられているのが面白い。マオズ監督と話した際に感じた印象は『理系タイプ』の人。今は量子物理学に興味があると言っていましたが、その因果応報的な法則が本作にも通じていると思います」

画像: 『探偵は観客自身』!監督が仕掛ける謎かけを解いていく楽しさ

映画でしかできないミステリートリックの無限の可能性を提示した作品

會川氏「ミステリーを映画で描くのは実はとても難しい。いまでは『殺人事件』や『名探偵もの』が主流となっていますが、昔はもっと映画ならではの見せ方がいろいろと考えられていたと思
います。小説の叙述トリックのように、映画でしかできないミステリートリックのやり方が実はまだまだあるのかも、と思わせてくれました」

森氏「監督は黒澤明監督や村上春樹氏からの影響を語っていましたが、まさに本作は『羅生門』だと思う。両作に共通するのは『探偵のいないミステリー』『探偵は観客自身』だということ。『羅生門』の同じエピソードを全く違う主観から描き、全体像を浮かび上がらせていく構造が本作ととても似ていますよね」

『このままでいいのか?』イスラエル社会に問いかける

會川氏「『レバノン』はヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞した作品ですが、監督の力量はそれより圧倒的に上がっています。イスラエルはいま、パレスチナなどの近隣諸国との関係悪化が進んでいますが、イスラエルを正面から批判した映画では多くの人には観てもらえない。本作では連鎖するイスラエルの歴史的トラウマのメタファーとして、必ず同じところに戻ってくるフォックストロットのステップを用い、“変えられない運命”を描いていますが、監督はそれを許容しているわけではない。『このままでいいのか?』『子どもの世代まで押し付けていくとこんな悲劇が生まれるのだ』
と、言葉にはしないが明快に描いている点が『レバノン』より深化しているし、時代の変化をきちんと描いていると思います」

監督兼脚本を手掛けるマオズ監督の強み

3部構成で描かれている本作。
脚本家の視点からマオズ監督の脚本のスタイルについて問われると

會川氏「いま、日本では起承転結的な脚本、ハリウッド映画は3部構成の脚本が主流です。同じ言葉なので誤解されがちですが、ハリウッド映画とマオズ監督が用いた3部構成はまったく別物で、本作の3部構成はギリシャ悲劇で昔から使われているもの。主人公を入れ替えて違う角度から描いたり、
人生の時間の流れを雄大に描き出します。この3部構成はアメリカの演劇では今でも優れたスタイルの一つとして多用されていますが、それだけにあまり映画向きではないと思われているんですよね。そういうこともあり、本作は脚本家からはあまり提案しにくいスタイルで撮られた映画だと思います」

脚本家としてのジレンマを問われると、

會川氏「普段、映画をどのようなスタイルで描くのかについて、脚本の段階である程度明確に決めています。自分のなかではスタイルが定まっていても、監督にそれが伝わらないことも。監督兼脚本のマオズ監督が自分の描きたいものがはっきりと見えているからこそ、このようなスタイルで映画を撮れたのだと思います。自分のスタイルに自信があるのであれば、脚本をともに手掛けることができるのは監督の大きな強みですよね」

次回作は英語作品!ハリウッドが見逃さない才能

會川氏「『運命は踊る』は、この秋一番面白い映画の一つ。そして、いま日本では立て続けに中東映画が公開されています。例えば、先日公開された『判決、ふたつの希望』では、近隣諸国のレバノンがイスラエルをどのように見ているのかがわかる。世界各国の映画を観て得た知識をクロスして理解していくことによって、自分なりの解釈ができるようになりますよね。まずはぜひ両作品を合わせて観てほしいです」

森氏「マオズ監督の次回作は英語作品。常に面白い人材を探しているハリウッドがまさに好む才能だと思う。さらに一般的なテーマを題材に、どう自分の作家性を出していくのか注目していきたいし、
楽しみです」

ミステリ映画のあり方から脚本家の視点からの解説まで、
本作を応援する両者の熱量溢れるトークイベントとなった。

サミュエル・マオズ監督『運命は踊る』予告

画像: ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ!サミュエル・マオズ監督『運命は踊る』予告 youtu.be

ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ!サミュエル・マオズ監督『運命は踊る』予告

youtu.be

監督・脚本:サミュエル・マオズ

出演:リオール・アシュケナージー、サラ・アドラー(『
アワーミュージック』)、ヨナタン・シライ

2017年/イスラエル=ドイツ=フランス=スイス/113分/
カラー/シネスコ
後援:イスラエル大使館 
配給:ビターズ・エンド
© Pola Pandora - Spiro Films - A.S.A.P. Films - Knm - Arte France Cinéma – 2017 

ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか大ヒット上映中!

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