Top画像:《ドップ:清潔な子どもの日》1954年 ポスター(リトグラフ、紙)パリ市フォルネー図書館蔵 ©︎Annie Charpentier 2018

ポスターの魔術師、レイモン・サヴィニャック

芸術としてのポスターについてほとんど無知な私でも、ロートレックとミュシャの名前と彼らのいくつかの作品ならすぐに思い浮かびます。
でも「レイモン・サヴィニャック」という人物については全く知りませんでした。

そんなサヴィニャックの作品を観てみると、なんだかとても懐かしいような親しみのあるものばかり。
しかも彼の残した作品には日本人にとってもなじみの商品がかなりあるばかりか、日本の企業のポスターまで制作していて、そのどれもが素朴な味わいを持ちながらもポップでキュートでインパクト溢れる作品ばかりで、思わず引き込まれてしまう不思議な魅力があります。

今回の兵庫県立美術館の展覧会は、商業用のポスターの様式を一新させたレイモン・サヴィニャックにスポットを当てています。

一体サヴィニャックとはどういった人物なのでしょうか?

遅咲きの花がポスターの様式を変えた!

激動の20世紀にパリで生まれたレイモン・サヴィニャック(1907-2002)は、20世紀のフランスを代表するポスター作家です。

彼は1948年の41 歳の時に、ベルナール・ヴィルモと開催した二人展で、牛乳石鹸モンサヴォンのために制作したデザインで遅蒔きながらも注目され、一躍人気を博します。

彼は出世作の《牛乳石鹸モンサヴォン》 (1948/50 年)に代表されるように、陽気でシンプルで大胆な色遣いの表現で、それまで主流だったポスターの装飾的で細やかな表現の伝統な要素を排したことで、ポスターの様式を一新します。

さらに彼が生まれ育ったパリに息づくユーモアとエスプリが加わり、人々を一瞬で虜にする不思議な魅力を生み出します。

サヴィニャックの出世作《牛乳石鹸モンサヴォン》のポスター。↓
誰にでもわかるシンプルな限られたモチーフ、限られた色、簡潔な言葉、でも商品はリアルにきちんと描く、ということを心がけていたそうです。
そしてそのスタイルを貫き通しました。

画像: 《牛乳石鹸モンサヴォン》1948/1950年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵 ©︎Annie Charpentier 2018

《牛乳石鹸モンサヴォン》1948/1950年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵
©︎Annie Charpentier 2018

今回の展覧会は、サヴィニャックの師であるカッサンドルの作品2点を含むポスター 93点を展示します。
またポスターと合わせて、原画を31点、ポスターが貼られた風景やサヴィニャックの作業風景などを含む写真が31点の他、彼の愛用の画材、関連作品に加えて、晩年のサヴィニャックをとらえたドキュメンタリー映画『街路の人サヴィニャック』(約25分)も展示し、サヴィニャックの仕事を多角的に捉えます(原画や資料、その他の作家による作品なども含めると総出品数は 200 点以上です)。

中でも、パリの街角を賑わせた最大で約 3m×4m の巨大なポスター群は圧巻で、これがポスター!?と度肝を抜かれるサイズです。これらは、実際にパリの街角や地下鉄の構内に貼り出されていたものと同じサイズであることから、当時のポスターの大きさを体感できます。

↓ ポスターが美術館のように張り巡らされた当時のパリの街角の写真。これは楽しい! 

ロベール・ドアノー《パリ、ポスターの貼られた壁》
1959年、2017年リプリント 写真( ゼラチンシルバープリント)
アトリエ・ロベール・ドアノー蔵
photo©︎cinefil

当時のパリっ子になったウキウキした気分で、街を彩ったサヴィニャックの数々のポスターの魔法の世界をどうぞお楽しみ下さい。

第1章 ポスターの魔術師サヴィニャックが誕生するまで

10 代の頃から絵を描き始めたサヴィニャックは、夜間学校で工業デザインを学び、就職した広告アニメーション映画工房でポスターを複製していましたが、26 歳の頃、巨匠カッサンドルに出会ったことで本格的なポスターの制作を手掛け始めます。この巨匠の元で3年近くアシスタントとして修行を積み影響を受けながらも、その後自分のスタイルを見つけ独自の方向性をつかんでいきます。

この章では、①幼年期〜ポスターに魅入られるまで、②カッサンドルに学ぶ、③戦時中・戦後の時代、④サヴィニャックと出版物、の4つの項目に分類し、サヴィニャックが世に出るまでの足跡をたどります。

左はサヴィニャックの師匠・カッサンドルの作品。↓ エアブラシが得意だったらしい。
右はそのカッサンドルの影響を受けたと思われるサヴィニャックの作品。師匠を尊敬しながらも、エアブラシは苦手だったので全て筆で描いたそうです。

画像: 左)カッサンドル《北部鉄道:快速、贅沢、快適》1929年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵 右)サヴィニャック《北部鉄道:ディーゼル特急》1937年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵 photo©︎cinefil

左)カッサンドル《北部鉄道:快速、贅沢、快適》1929年 ポスター(リトグラフ、紙)
パリ市フォルネー図書館蔵
右)サヴィニャック《北部鉄道:ディーゼル特急》1937年 ポスター(リトグラフ、紙)
パリ市フォルネー図書館蔵
photo©︎cinefil

第2章 10の項目から見つめるサヴィニャックのポスター

幅広いジャンルのポスターを生み出し、「ヴィジュアル・スキャンダル」とも称されたサヴィニャックの作風を、10 の項目に分けて見ていきます。

展示には、ポスターと、サヴィニャックが描いたポスターの原画を並べている箇所も多数あります。原画がポスターになるまでを想像するのも楽しいです。

①動物たち

画像: 《「デクーヴェルト / 発見」原画》1990年頃  原画(アクリル絵具、厚紙) ティエリー・ドゥヴァンク・コレクション  ©︎Annie Charpentier 2018

《「デクーヴェルト / 発見」原画》1990年頃  原画(アクリル絵具、厚紙) 
ティエリー・ドゥヴァンク・コレクション  ©︎Annie Charpentier 2018

上の原画 ↑ のポスターは、この写真 ↓ のようにぐるりと巻いて展示されていました。この発想力!

画像: 《「デクーヴェルト/発見」が貼られたポスター塔》 1990年頃、2017年リプリント 写真(インクジェットプリント) ティエリー・ドゥヴァンク・コレクション photo©︎cinefil

《「デクーヴェルト/発見」が貼られたポスター塔》
1990年頃、2017年リプリント 写真(インクジェットプリント)
ティエリー・ドゥヴァンク・コレクション
photo©︎cinefil

②オトコの人、オンナの人

左上)《「フランス国有鉄道」原画下絵》 1964年 原画下絵(顔料、厚紙 )アニー・シャルパンティエ蔵
左下)《「フランス国有鉄道」原画下絵》 1964年 原画下絵(顔料、厚紙 )アニー・シャルパンティエ蔵
真ん中)《フランス国有鉄道: 半額料金パスで旅行を》1964年 ポスター(リトグラフ、紙 )
パリ市フォルネー図書館蔵
右)《フランス国有鉄道: 半額料金パスで旅行を》1964年 ポスター(リトグラフ、紙 )
パリ市フォルネー図書館蔵
photo©︎cinefil

③働く人

《セブの圧力鍋ならおいしい料理を素早く》1966年 ポスター(リトグラフ、紙 )パリ市フォルネー図書館蔵
photo©︎cinefil

④製品に命を吹き込む

ご存知「サントリービール」!

《サントリービール》1979年 ポスター( オフセット印刷、紙 )
トゥルーヴィル市 ヴィラ・モンテベロ美術館蔵
photo©︎cinefil

⑤子どもたち

「森永ミルクチョコレート」
左の女の子の足の横にお馴染みのエンジェルマークが見えます。
これは美味しそう!

《森永ミルクチョコレート》1958年 ポスター(オフセット印刷、紙)
トゥルーヴィル市ヴィラ・モンテベロ美術館蔵 
©︎Annie Charpentier 2018

⑥指さすヒト

この「指さす」モチーフが気に入って、一時多く描いたそうです。
展覧会場内にはサヴィニャックの指さす人たちが道案内をしてくれています。
探してみて下さいね。

左)《フリジェコ:良質の冷蔵庫》1959年 ポスター(リトグラフ、紙)パリ市フォルネー図書館蔵
右)《フリジェコ洗濯機》1959年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵
photo©︎cinefil

⑦自動車とその部品

画像: 《ダンロップタイヤで出発》1953年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵 ©︎Annie Charpentier 2018

《ダンロップタイヤで出発》1953年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵
©︎Annie Charpentier 2018

⑧タバコ

左)《ジターヌ》1955年 ポスター(リトグラフ、紙)パリ市フォルネー図書館蔵
真ん中)《ジターヌ》1953年 ポスター(リトグラフ、紙) パリ市フォルネー図書館蔵
右)《シガレット・フランセーズ》1965年 ポスター(リトグラフ・オフセット印刷、紙)
パリ市フォルネー図書館蔵
photo©︎cinefil

⑨ビック(ボールペン)

サヴィニャックのデザインがそのまま有名なトレードマークになっているボール頭のキャラクター。

左)《「ビック:新しいボール」原画》1960年 原画(グワッシュ、合板)
トゥルーヴィル市 ヴィラ・モンテベロ美術館蔵
真ん中)《ビック:新しいボール(スイス版)》1960年 ポスター(リトグラフ、紙)
パリ市フォルネー図書館蔵
右)《ビック:柔らかい書き味》1956年 ポスター(リトグラフ、紙)パリ市フォルネー図書館蔵
photo©︎cinefil

⑩パリ

画像: 左)《テュイルリー公園祭》1953年 ポスター(リトグラフ、紙)パリ市フォルネー図書館蔵 右)《「テュイルリー公園祭」デザイン画(再制作)》1993年(1953年制作ポスターより描き起こし) デザイン画(ペンその他、紙) マッサン蔵 photo©︎cinefil

左)《テュイルリー公園祭》1953年 ポスター(リトグラフ、紙)パリ市フォルネー図書館蔵
右)《「テュイルリー公園祭」デザイン画(再制作)》1993年(1953年制作ポスターより描き起こし)
デザイン画(ペンその他、紙) マッサン蔵
photo©︎cinefil

サヴィニャックの「ダンロップタイヤ」のドライバーになりきろう!
写真撮影コーナー

美術館の1階に出現した、日本でダンロップタイヤを製造販売していて今回の協賛企業の一つでもある住友ゴム工業株式会社との夢のコラボにより実現した面白写真撮影コーナー。
これであなたもポスターの中に入り込める ⁉︎
せっかくなので、赤い服、赤い帽子持参で撮影に臨むのも楽しいかも。

なお「#サヴィニャック展」、「#ダンロップ」でSNSの投稿大歓迎です!

画像: 特別展「サヴィニャック」 写真撮影コーナーの説明ポスター 兵庫県立美術館 photo©︎sinful

特別展「サヴィニャック」 写真撮影コーナーの説明ポスター
兵庫県立美術館
photo©︎sinful

椅子に座って同じポーズで撮ってみよう!これが案外キツイ。。。

特別展「サヴィニャック」 写真撮影コーナー 兵庫県立美術館
photo©︎cinefil

関連行事

記念講演会「レイモン・サヴィニャック:そのアイデアとユーモア」

デザインがご専門で2005年の「レイモン・サヴィニャック展」(サントリーミュージアム天保山)を担当された植木氏に、専門家の目で見たサヴィニャック作品の魅力についてお話をしていただきます。

講師:植木啓子氏(大阪新美術館建設準備室 研究副主幹)
日時:11月25日(日)午後2時~(約90分)
会場:同館ミュージアムホール
聴講無料(定員250名、要観覧券)
「芸術の館友の会」会員優先座席あり

ワークショップ「はじめてのリトグラフ」

関西を拠点にリトグラフでの作品制作・展覧会・プロジェクトの企画運営などを行う4人組のグループLighter but Heavier(LbH)からおふたりを講師に迎え、リトグラフについてのレクチャーや簡単な制作体験も行います。初心者の方もぜひご参加ください。

講師:衣川泰典氏、田中栄子氏(LbH)
日時:12月8日(土) 午後1時~(約4時間)
会場:同館アトリエ 2(定員20名)
対象:小学校4年生以上
参加費:1,500円

要事前申込、応募者多数の場合は抽選
お申込みはこちらから → https://www.artm.pref.hyogo.jp/ref/event/t1810-1/jform.php
12月1日(土)申込締切

ワークショップ「ダンロップものづくり教室:まわって 起き上がる 不思議なロボットを作ろう」

メカ工作キット「スクローラーⅡ」をつくります。図面をたよりに、倒れてもひとりでに起き上がるロボットを組み立ててみましょう。

講師:NPO団体コアネット
協力:住友ゴム工業株式会社
日時:12月15日(土) 午後2時~(約2時間)
会場:同館アトリエ 2(定員30名)
対象:小学校5年生以上

要事前申込、応募者多数の場合は抽選
お申込みはこちらから → https://www.artm.pref.hyogo.jp/ref/event/t1810-2/jform.php
12月8日(土)申込締切

おやこ解説会

11月10日(土) 午後1時半~(約1時間)
同館レクチャールームにて
聴講無料(定員先着20組・要事前申込)
こどものイベント係:TEL.078-262-0908(10月10日(水)午前10時より受付開始)

学芸員による解説会

11月17日(土)、12月1日(土)
いずれも午後4時~(約45分)
同館レクチャールームにて
聴講無料(定員先着100名)

ミュージアム・ボランティアによる解説会

会期中毎週日曜日 午前 11 時〜(約 15 分)
同館レクチャールームにて
聴講無料(定員先着 100 名)

特別展「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」
開催概要

会場)兵庫県立美術館
〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通 1-1-1

会期)2018 年 10 月 27 日(土)〜12 月 24 日(月・振替休日)

開館時間 )午前 10 時〜午後 6 時
金・土曜日は午後 8 時まで
入場は閉館の 30 分前まで

休館日) 月曜日(ただし 12 月 24 日(月・振替休日)は開館)

観覧料金(消費税込み)
  一般   1,300 円(1,100円)
  大学生   900円(700円)
  70 歳以上 650円(550円)
※ 高校生以下無料
※ ( )内は20 名以上の団体料金。
※ 障がいのある方(70 歳以上を除く)は各当日料金の半額、その介護の方 1 名は無料。
※ 大学生、70 歳以上の当日券の購入および障がい者割引の適用には証明が必要。
 割引を受けられる方は、 会期中に美術館窓口で観覧券をお買い求めください。
※ 県美プレミアム展は別途観覧料が必要(同展とあわせて観覧される場合は割引あり)。

↓ 人物が一緒だとわかりやすい、こ〜んなに大きなポスターが目白押しです!

画像: 特別展「サヴィニャック」展示風景   兵庫県立美術館 photo©︎cinefil

特別展「サヴィニャック」展示風景 兵庫県立美術館
photo©︎cinefil

主催)兵庫県立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
後援)在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、公益財団法人 伊藤文化財団、兵庫県、 兵庫県教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会
特別協力)パリ市、公益財団法人 日本教育公務員弘済会 兵庫支部
協力)日本航空
特別協賛)大日本印刷
協賛)ライオン、損保ジャパン日本興亜、サントリーコミュニケーションズ株式会社、
TKG Foundation of Arts & Culture、住友ゴム工業株式会社
助成)一般財団法人 安藤忠雄文化財団
企画協力)DNP アートコミュニケーションズ

お問合せ)078-262-0901

美術館ホームページ)https://www.artm.pref.hyogo.jp

cinefil 読者チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「サヴィニャック展」プレゼント係宛てに
メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2018年11月24日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。

抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

This article is a sponsored article by
''.