シネフィル+京都ヒストリカ リレー連載 その1
世界でひとつの映画祭、京都ヒストリカ国際映画祭を知っていますか?
世界でただひとつの歴史をテーマにした映画祭『京都ヒストリカ国際映画祭』が10月27日から始まります。
歴史の街であり映画の街と云える街は世界でも多くはありません。ローマ、パリ、ロンドン、プラハ、モスクワ、北京。1200年の歴史と120年の映画史を誇る京都は歴史映画祭にふさわしい街と云えるでしょう。
京都で歴史映画と言っても時代劇のみの映画祭ではありません。日本の時代劇のみならず、西部劇や史劇(韓国)など世界の最新の歴史劇も含めて発信している映画祭です。
意識することは少ないかも知れませんが、歴史に材を採った映画は、デジタル技術が進歩した1990年代半ばから様変わりし、シネコンの品揃えに欠かせなくなっているのです。
例えば『パイレーツ・オブ・カリビアン』『恋に落ちたシェイクスピア』『レッドクリフ』『レ・ミゼラブル』など枚挙に暇がありません。同じジャンルというには間口が広過ぎるかも知れませんが、これらを全て歴史映画という視点で見てみようというのがこの映画祭の取り組みです。通底するキーワードは「格差」と「自然」、これが歴史映画の魅力です。
格差と自然の苛烈さが物語のコアを際立たせ、観るものの感情をガッチリ掴んでしまう。これが歴史映画の凄まじさなのです。
格差社会や自然の驚異が問題化する現代だからこそ、世界はさらに歴史映画を求めているのかもしれません。
ヒストリカは世界の歴史映画をモニターし続けて10年、今年のプログラムは記念の年ならではの内容になっています。
これから始まる連載のスタートとして今年のラインナップの紹介をさせていただきます。
豪華な歴史映画を集めた<ヒストリカ・スペシャル>
ヴェネチア国際映画祭で絶賛を浴びた内田吐夢監督『恋や恋なすな恋』デジタルリマスター版の日本初公開!
先ずはヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアされた『恋や恋なすな恋』デジタルリマスター版のジャパンプレミアです。
日本映画黄金期のゴージャス極まりない美術や衣裳が生まれたての色に甦っています。同い年の溝口健二や伊藤大輔と違い、巨匠と呼ばれても成熟より挑戦を選び続けた内田吐夢監督。
その野心的なストーリーテリングは、復元版でこそ読み取れます。
題材になっている歌舞伎狂言「芦屋道満大内鑑」にて≪葛の葉≫役を演じた歌舞伎俳優中村扇雀丈をゲストに招き、いまに通ずる古典の物語を紐解いていただきます。
さらに目玉として、『バーフバリ伝説誕生<完全版>』『バーフバリ王の凱旋<完全版>』の二部作完全版上映です。今年ブームが盛り上がったバーフバリの日本上陸は2年前の京都ヒストリカでした。会場の京都文化博物館で特別に絶叫上映での鑑賞になります。
世界の最新時代劇を紹介する<ヒストリカ・ワールド>の5本は全て日本初上映!
世界の最新時代劇を紹介する<ヒストリカ・ワールド>では、そのうち4本が今回のみの上映になります。が、勿体ないほどの傑作揃い。稀な機会を逃さないでください!
ゲストには2名のフランス人監督を招きます。両作ともフランス革命の頃の田舎町が舞台。閉じた空間に舞い降りる異物を前にした人々の物語も同様です。光線と、木々を渡る風と、予期せぬ事態に抱く怖れと好奇心も両作を同じように包みます。しかし印象は全く違う。片眉を三角にして恐ろしがらせる女性監督の『乙女たちの秘めごと』、語ることの楽しさが滲み出てくる『欲望にさそわれて』。長編作品は1、2本目の両監督ですが、そのタッチは今後の活躍を約束するものです。今こそサインをゲットすべきです。
保存状態の良いミイラとしてアルプスで発見された「5000年前の男」の物語『アイスマン』、近年良質な作品を多数生み出しているハンガリー発ロードムービーの傑作『旅芸人』、あらゆるものが精を秘めて見えてしまう北欧のダークファンタジー『ノベンバー』も見逃し禁止の逸品です。
時代劇をテーマでセレクトし上映する<ヒストリカ・フォーカス>
"軽み"の沢島忠のミュージカルコメディと"重さ"の内田吐夢作品
時代劇をテーマでセレクトし上映する<ヒストリカ・フォーカス>では、昨年の加藤泰に続き、“いま、世界が観たら、どうなるんだろ日本の時代劇”です。
沢島忠のミュージカルコメディを世界に問いたいと考えています。
作品は『殿さま弥次喜多』『ひばり・チエミの弥次喜多道中』『白馬城の花嫁』。
ゲストに『引っ越し大名!』が公開予定の犬童一心監督と、沢島批評では追随を許さないミルクマン斎藤さん。
また、軽さの沢島忠に対比する形で、重さの内田吐夢作品も用意しています。
『血槍富士』『妖刀物語・花の吉原百人斬り』。
ゲストは『弧狼の血』白石和彌監督と『ソウルフラワートレイン』西尾孔志監督。白石さんには周到に準備された片岡千恵蔵の爆発を、西尾さんにはカネとモテの今昔を聞こうと思います。
映画祭10周年記念企画は、観る機会の少ない無声映画の”カツベン”上映!
お宝は、デジタルリマスターで蘇った溝口健二サイレント期の傑作『折鶴お千』
10周年記念企画として、お祭りとお宝を仕込みました。
お祭りはカツベン祭り!3日4日の土日に7本の無声映画をカツベンとピアノつきでお腹いっぱい楽しんで頂きます。
日本映画とほぼ同じ120年前に産まれた3人の大監督、内田吐夢、溝口健二、伊藤大輔。彼らの無声映画をカツベンします。
いずれも映画史に輝く名作揃い。現存する彼らの無声映画の美味しいところを選びました。
カツベンはライブ感、会場の京都文化博物館別館ホールは重要文化財の歴史的な佇まいが盛り上げてくれるでしょう。着物でお出かけされても良い機会でしょう。
お宝は『折鶴お千』、溝口健二サイレント期の傑作です。京都府デジタルリマスター人材育成事業で未来に残るデジタルリマスターに甦らせました!明治150年事業の一環として、その新しいお宝のお披露目です。若さ光輝く山田五十鈴は見逃し厳禁です!
歴史映画の歴史を変えた傑作7作品「ディケイド・プログラム」
ヒストリカ10年を振り返るディケイド・プログラムでは、歴史映画の歴史を変えた作品を並べました。スペシャルの『バーフバリ伝説誕生<完全版>』含めて7本がヒストリカに帰って来ます。
映画祭自体の変遷も香ってくるプログラムになりました。10年ひと昔とはいえ、だいぶ変わりました。それぞれの京都ヒストリカのカラーも振り返りながら作品の紹介をしていきます。
ヴェネチア国際映画祭とが提携した人材育成プログラムから生まれた2作品!
今年は、はじめて本映画祭の人材育成プログラム「京都フィルムメーカーズラボ」と、ヴェネチア国際映画祭とが提携。
選りすぐった企画を物心両面でサポートして完成まで導き、翌年のヴェネチア国際映画祭でプレミアするという、2015年に長谷井宏紀監督の『ブランカとギター弾き』を生んだことでも知られたヴェネチアのプロジェクト「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」で製作されたドキュメンタリー『Beautiful Things』とヴァーチャルリアリティ(VR)の『Chromatica』を、監督とともにご紹介します。
是枝裕和監督総合監修の『十年Ten Years Japan』のジャパンプレミア上映!
また、<京都フィルムメーカーズラボ スクリーニング>は、ラボの過去の参加者が、海から川へ戻ってくるがごとく、かつて学んだ京都で作品をお披露目するプログラムで、今年は11月3日公開予定のオムニバス映画『十年Ten Years Japan』を日本初上映。
「いたずら同盟」を監督した木下雄介さん(京都フィルムメーカーズラボ2016参加)と、プロデューサーの高松美由紀さんを招き、日本の近未来像とフィルムメーカーズラボからの経緯と今後の展望を語ってもらいます。
以上合わせて30本、VRからカツベンまで。得がたい上映機会と深掘り、または、新たな角度からのトークを用意して映画の楽しさを分かちあいたいと考えています。
これからシネフィルでは、京都ヒストリカの見どころ、楽しみ方を連載して提案します。
いままで気にしなかった歴史映画という視点から映画を捉える機会になれば嬉しいです。
前売りチケットの発売は10月6日(土)からです。遠方からのご参加もお待ちしています。
会期 2018年10月27日(土)ー11月4日(日)
主催:京都ヒストリカ国際映画祭実行委員会
(京都府、京都文化博物館、東映株式会社京都撮影所、株式会社松竹撮影所、株式会社東映京都スタジオ、巌本金属株式会社、株式会社ディレクターズ・ユニブ、立命館大学)
共催:KYOTO CMEX実行委員会
協賛:株式会社テスパック/三井ガーデンホテル京都四条/TSUKUMO
協力:京都クロスメディア推進戦略拠点/ヴェネチア国際映画祭/イタリア文化会館‐大阪/国際交流基金京都支部/国立映画アーカイブ/KYOTO V-REX実行委員会/出町座
後援:一般社団法人日本映画製作者連盟/一般社団法人外国映画輸入配給協会/一般社団法人日本映画テレビ技術協会
助成:芸術文化振興基金
詳細は下記公式ページより