「日本かぶれのナビ」から「視神経の冒険」へ

19世紀の後半にパリの近郊で生まれた画家のピエール・ボナール(1867-1947 年)は、19 世紀末から20 世紀前半にかけてフランスで活躍しました。

世紀末のパリで「ナビ派」の一員となったボナールは、浮世絵の影響を強く受け、躍動的かつ装飾的な作品を生み出し、「日本かぶれのナビ(ナビ・トレ・ジャポナール)」の異名を取ります。

ところが次第にパリを離れ、ノルマンディー地方や南フランスで自然に触れ、印象派の画家たちとの交流を通じて色彩の研究に没頭するようになります。身近な主題を描き続けたボナールは、目にした光景の鮮烈な印象をいかに絵画化するかという「視神経の冒険」に身を投じ、鮮烈な色彩の絵画を多数生み出しました。

※ ナビ派とは1890−1900年ごろに活躍した、ゴーギャンの影響を受けて結成されたフランスの画派。平面的・装飾的な構成を重視し、形や色彩は作家自身の解釈によって決定すると考えた。

画像: ピエール・ボナール《水の戯れ あるいは 旅》1906-10年 油彩、カンヴァス 248.6×298.3cm オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール・ボナール《水の戯れ あるいは 旅》1906-10年 油彩、カンヴァス 248.6×298.3cm
オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

近年本国フランスでは、ナビ派の画家たちへの評価が高まり、ボナール人気も急上昇中です。

今回オルセー美術館の豊富なコレクションを中心に、初来日の作品約30点を含む130点超のボナール作品を一挙公開する大規模な回顧展になります。

全7章で、絵画はもちろん、素描や版画、写真といった様々なジャンルを通じて、謎多きボナールの魅力に迫ります。

ここでは、ボナールを楽しむキーワードと主な作品をご紹介しましょう!

大の動物好き!

動物を愛し、猫と4匹の犬を飼っていたボナール。
生涯作品2300点以上の絵画のうちの約1/3にあたる700点ほどに動物を描きこんでいます。

今回来日している作品群の中にも、彼の愛した猫や動物がたくさん描かれています。
探してみてください!

画像: ピエール・ボナール《大きな庭》1895 年 油彩、カンヴァス 168×221 cm   オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール・ボナール《大きな庭》1895 年 油彩、カンヴァス 168×221 cm オルセー美術館
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

グラフィック・アート   

芸術家としての出発点のきっかけは、1889年にフランス=シャンパーニュ社の課題ポスターに入選したことでした。これによりボナールは画家になる決意をし、わずか20歳そこそこで、まずは版画家としてデビューします。
このポスターはのちの《ムーラン・ルージュ》などの一連の傑作ポスターを生み出したトゥールーズ=ロートレックに強い感銘を与えます。

こちらのポスターがまさにそれ!です。
この泡の表現は、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」の中に描かれた波を参考にしたものと言われているそうです。

     ピエール・ボナール《フランス=シャンパーニュ》1891年 多色刷りリトグラフ 78×50cm
     川崎市市民ミュージアム

ジャポニスム 

ジャポニスムが一世を風靡した19 世紀のパリで、ボナールも歌川国貞や国芳、広重の浮世絵を所蔵し、「日本かぶれのナビ」と呼ばれるほど日本美術を愛好していました。
屏風を思わせる縦長の構図や、平板な色面構成、くっきりした輪郭、西洋とは違う遠近表現を浮世絵から積極的に取り入れます。

画像: ピエール・ボナール《庭の女性たち》1890-91年 デトランプ、カンヴァスで裏打ちされた紙 (4 点組装飾パネル) 160.5×48cm(各)   オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール・ボナール《庭の女性たち》1890-91年 デトランプ、カンヴァスで裏打ちされた紙 (4 点組装飾パネル)
160.5×48cm(各) オルセー美術館
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ボナールのミューズ 謎多き女性・生涯の伴侶マルト

1893年、パリの街角でボナールは後に妻となるマルト・ド・メリニーと名乗る少女と出会います。この時ボナールは 26 歳、マルトは16 歳だと彼に告げました。
華奢な体つきに紫がかった青い目をした彼女は、やがてボナールの恋人になり、最良のモデルにもなります。
1日の大半を浴室で過ごし何度も入浴するマルトを、ボナールは「浴室の裸婦」として度々描いており、これは晩年の彼の大きなテーマとなります。(マルトのために晩年の家には当時としては贅沢な浴室を備え付けます。)
ボナールがマルトの本名と実年齢(ボナールよりも2歳年下)を知ったのは知り合って30年近く経った 1925年に2 人が正式に結婚したときでした。

それにして8歳もサバを読むなんて!(読めるなんて。。。)

ピエール・ボナール《猫と女性 あるいは 餌をねだる猫》1912 年頃 油彩、カンヴァス 78×77.5cm
オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

裸婦像 

ボナールの画業全体において最も重要な位置を占めるのが、生涯の伴侶であったマルトをはじめ、複数の女性をモデルとして裸婦を描いた作品の数々です。
ボナールの裸婦には、ヌードそのものより、周辺の雰囲気と、調和した暖かくやわらいだ色彩に特徴があります。反映する室内の微妙な彩りー壁紙やタイル、カーテン、絨毯、小物、鏡などーが織りなす重層的な室内空間の中で、ボナールの描く裸婦たちは存在感を現します。

ピエール・ボナール《化粧室 あるいは バラ色の化粧室》1914-21年 油彩、カンヴァス 119.5×79cm
オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

写真好き 

19世紀の終わりにコダック社が小型カメラを販売するやいなや購入したボナール(当時20代半ば)は、1890年代の初めから写真撮影を開始します。
ボナールの写真にはユニークな構図も多く、水遊びに興じる甥っ子たちをはじめ、家族がめいめいに余暇を過ごす様子や、恋人マルトのヌードを写した美しい写真などが数多く残されています。
ボナールはこの数々の写真を絵画を描く時の着想源のひとつにもしていました。

今回ボナールが撮影した写真もたくさん展示され、日常のアルバムを見るように楽しめます。

《ル・グラン=ランスの庭で煙草を吸うピエール・ボナール》1906年頃 モダン・プリント 6.5×9cm
オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

視神経の冒険 

ボナールの絵をよく見ると、ぼんやりとした印象を受け、構図も遠近感も不可思議であるのにもかかわらず思いがけない発見があります。
目がとらえた形や色がものとして意味をなす以前の、見ることのプロセスを絵画化する試みを、ボナールは手帖に「絵画すなわち視神経の冒険の転写」と書きつけています。

こちらの絵もよくよく見ると、あんなところに白猫が!

画像: ピエール・ボナール《ル・カネの食堂》1932年 油彩、カンヴァス 96×100.7cm オルセー美術館(ル・カネ、 ボナール美術館寄託) © Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

ピエール・ボナール《ル・カネの食堂》1932年 油彩、カンヴァス 96×100.7cm
オルセー美術館(ル・カネ、 ボナール美術館寄託)
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

温かくて柔らかい色彩の魔術師、ボナールの世界観をぜひお楽しみ下さい!

音声ガイドは「ボナール家の猫」!?

今回のボナールの作品にたびたび登場する「ボナール家の猫」が展覧会をナビゲートします。

ピエール・ボナール《白い猫》1894年 油彩、厚紙 51.9×33.5cm
オルセー美術館  © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

猫役に扮するのは、映画「アナと雪の女王」のアナ役で声優としての実力と知名度を不動のものにし、舞台を中心に活躍中の女優で歌手の神田沙也加さん。
キュートな猫の案内でボナールの世界を存分にお楽しみ下さい。

貸出料金)550円(税込)(お一人様一台)

「オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展」
開催概要

会場)国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

会期)開催中 〜12月17日(月)

休館日)毎週火曜日

開館時間)10:00〜18:00

※ 毎週金・土曜日は20:00まで。
※ 入場は閉館の30分前まで。

観覧料(税込)
一般   1,600 円(1,400 円)
大学生  1,200 円(1,000 円)
高校生  800円(600円)

※ 中学生以下無料。
※()は団体料金で20名以上。
※ 障がい者手帳をご持参の方(付き添いの方1名を含む)は無料。
※ 11月14日(水)〜11月26日(月)高校生無料観覧日(学生証の提示が必要)

主 催)国立新美術館、オルセー美術館、日本経済新聞社
後 援)在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協 賛)花王、損保ジャパン日本興亜、ダイキン工業、大日本印刷、BIGLOBE、
   ブシュロン ジャパン、三菱商事
協 力)日本貨物航空、日本航空、BSテレビ東京

お問い合わせ)03-5777-8600(ハローダイヤル)

展覧会ホームページ)bonnard2018.exhn.jp

関連イベント

◆ピエール・ボナール展開催記念シンポジウム「ボナール、ナビ派、日本」
日時)10月21日(日)13時30分〜17時 
会場)国立新美術館 3階講堂
定員)200名(先着順、申込不要) ※ 聴講は無料ですが本展の観覧券(半券可)が必要です。
主催)国立新美術館、ジャポニスム学会
プログラム)
<13:30-13:40>
 開催趣旨 三浦篤(東京大学教授)
<13:45-14:15>
 プレゼンテーション1 宮崎克己(昭和音楽大学教授)「ボナールのジャポニスム」
<14:20-14:50>
 プレゼンテーション2 平石昌子(新潟県立近代美術館学芸課長代理)「ボナール―沐浴の詩学」
<14:55-15:25>
 プレゼンテーション3 杉山菜穂子(三菱一号館美術館学芸員)「ボナールとナビ派の日本受容」
<15:30-15:45>
  休憩
<15:45-16:45>
 全体討議 ディスカッサント 高階秀爾(大原美術館館長)
<16:45-17:00>
 質疑応答

◆対談「ボナールの教え」
出演者)岡﨑乾二郎(造形作家、批評家)× 松浦寿夫(画家、武蔵野美術大学教授) 
日時)10月27日(土)14時〜16時(開場 13時30分)
会場)国立新美術館 3階講堂
定員)260名(先着順、申込不要)※ 聴講は無料ですが本展の観覧券(半券可)が必要です。

◆担当研究員による展覧会レクチャー
日時)11月25日(日)14時〜15時30分(開場13時30分)
会場)国立新美術館 3階講堂
定員)260名(先着順、申込不要)※ 聴講は無料ですが本展の観覧券(半券可)が必要です。

◆講演+対談「ボナールの視覚」
出演者)佐々木正人(多摩美術大学教授)、ホンマタカシ(写真家)、山田剛(日経イノベーション・ラボ上席研究員)
日時)12月2日(日)14時〜16時(開場 13時30分)
会場)国立新美術館 3階講堂
定員)260名(先着順、申込不要)※聴講は無料ですが本展の観覧券(半券可)が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。

◆ふろ(26)の日 ポストカードプレゼント
浴室を多く描いたボナールにちなみ、
「ふ(2)」「ろ(6)」の日である10月26日(金)、11月26日(月)に、先着100名様にポストカードをプレゼント。
※ 柄は選べません。

◆ハロウィン割引
10月31日(水)に猫のアイテムを身に付けて来館した方は当日券購入時に100円引き。

◆# びよーん猫 写真を募集中
ボナールの《白い猫》に負けないびよーんと伸びた猫の写真を募集中!
よく伸びた猫は展覧会ホームページで紹介します。

◆同時開催割引
「生誕110年 東山魁夷展」(会期:2018年10月24日(水)〜12月3日(月))の展覧会チケット(半券可)を国立新美術館の券売窓口で提示された方は、ボナール展のチケットを100円引きでご購入いただけます。

cinefil 読者チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「ピエール・ボナール展」プレゼント係宛てに
メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2018年10月27日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。

抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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