若い頃インドに旅した時に立ち寄ったインド国立博物館で見た仏像は、鼻筋が通って均整のとれた体つきのなかなかのハンサムさんでした。
対して日本の仏像はどことなく東洋的で、やっぱりシルクロードを通って日本に渡ってくるまでのうちに顔つきも体つきも東洋人化してしまうんだなぁ、と単純に思ったものです。

しかし今回泉屋博古館で開催中の特別展「仏教美術の名宝」を訪れて、単にシルクロードを渡ってきただけではない、様々な時代背景による仏教美術の変化が見られ、大変興味深かったです。

特別展の案内文をちょっと拝借!

とは言っても、私たちにとって仏教美術はある程度の馴染みはあるけれど、実際のところはコアなファン以外はなかなか敷居が高い分野ですので、ここは素直に特別展の案内文を拝借してみると致しましょう。

「仏教美術は、インドに始まりシルクロードを通って朝鮮、日本に伝わり、各地で大輪の花を咲かせました。真摯な信仰心に裏付けされた仏像や仏画の数々は、信仰を持たない人々にも感動を与える普遍的な芸術作品として、今日に伝わっています。」

ふむふむ、確かに、私も含めての日本人の多くが信仰を持っていません。
大半が初詣やお宮参り、七五三などは神社に参拝し、法事や葬式や除夜の鐘はお寺にお世話になり、クリスマスにはエセクリスチャンに変身してしまう民族ですから。
それでも実家も婚家もそれぞれに仏教の宗派に属していますし、仏像を見るのはたとえ信仰心がなくとも心が落ち着いて厳粛な気持ちになるものです。
特に関西在住者は子どもの時の遠足は奈良・京都の仏閣巡りですから、なんとはなく仏教美術に対する親しみが身についています。

「本展では、そうした作品の中から、仏教美術発祥の地ガンダーラの石彫から中国、朝鮮の金銅仏、そして日本の木彫仏や仏画などを、他館からの借用品も交えて、ご紹介します。特に金銅仏では、日本に正式に仏教が伝わる前に中国北魏で制作された作品や、白鳳天平時代の仏教美術の源流である唐時代の作品の他、近年、朝鮮7世紀の優秀な作品として話題になった京都八瀬の古寺にひっそりと伝わった半跏思惟の御像も特別に展示します。一方、日本の作品では、森厳な中にも自然のぬくもりを残す木彫仏や、煌びやかな仏画など、我が国独自に発展した作品の数々をご紹介します。」

なんとなくイメージがつかめてきましたか?
ではこの勢いでいってみましょう!

ガンダーラの仏伝図

日本で言う「仏」は、インドでは人間を超越した存在とみなされ、その姿を表現しない時期が長く続いたそうです。
その代わりにパキスタン西北部のガンダーラでは色々な仏の姿が作られ、「仏像のふるさと」と呼ばれているのだとか。
そのガンダーラで特に好まれたのが、釈迦の生涯を物語風に表現した「仏伝図」だったそうです。
これらの仏伝図の多くは釈迦の火葬骨である仏舎利を祀るストゥーパ(仏塔)の周辺に飾られたそうです。
キリスト教における教会内でイエスの生涯を表したステンドグラスの様なものですね。
今日我々が釈迦の生涯を知り得ているのは、このガンダーラの仏伝図のお蔭によるところが大きいようです。

石彫仏伝図:誕生 ガンダーラ:2~3世紀 泉屋博古館所蔵

中国・朝鮮の金銅仏

青銅に鍍金(金メッキ)を施した仏像を「金銅仏」と言うそうです。
日本で6世紀半ばに百済から初めて献上された仏像が金剛仏で、天皇はいたく感動したとか。
それがのちの仏教伝播拡大に一役買ったようです。

金銅仏は各時代に渡って様々な様式で作られました。
中国で金銅仏が本格的に作られるようになったのは4世紀後半からで、当初は中央アジアを経由して入ってきたガンダーラやインドの影響を受けていたものが、5世紀の後半から中国式の痩身痩躯の像に変化、6世紀中頃には再び西方の影響を受ける、と時代と共に変化していき、7〜8世紀には唐の写実的な仏像という独自の世界に辿り着きます。
一方隣国の朝鮮と日本はというと、中国式の仏教美術からスタートし、中国の仏教美術の変化の影響を受けました。
昔は中国の影響力が大きかったんですね。

今回の特別展には多くの金銅仏が展示されています。
中国・朝鮮の現存する金銅仏は今回こちらで展示されているような小振りのものが多いのだとか。
小さいものは高さが5cm程のミニサイズで、私たちがお財布に入れるお守りの様なものかも、と想像してしまいました。

こちらの作品 ↓ は約40cmの大きさです。
細かい細工がとても精巧で、6世紀の時代にこういう美しい物を見せられたら、当時の天皇が魅入られてしまうのも納得です。

     重要文化財 鍍金弥勒仏立像 太和 22年銘 北魏時代 (498) 泉屋博古館所蔵

こちらの菩薩像はやや大きめの50cm程の坐像です。↓
近年、朝鮮半島からの渡来仏として新たに紹介されました。
残念ながら別鋳の台座は失っているそうです。(台座がなくても座れるのがすごい!)
宝冠や装飾具の精緻な作りは、簡素な装飾が多い半跏思惟像の中にあっては異色の作だそうで、7世紀の東アジア仏像の流れを考える上での重要な作例と位置付けられるんだとか。

学術的なことはよくわかりませんが、優しげないいお顔をした美しい菩薩様です。

鍍金菩薩半跏思惟像 朝鮮三国時代・7世紀 八瀬・妙傳寺所蔵(撮影:深井純)

日本の木彫仏・仏画・鏡像

日本の仏教美術は、平安時代以降次第に大陸からの影響を離れ、鎌倉時代にかけて新たな展開を見せ、独自の美術作品を誕生させました。

日本の木彫仏

木彫像は平安時代より、それまでの金銅仏や塑像を押しのけて彫刻の主流となっていきます。
木に慣れ親しんだ日本ならではの現象だったようです。
その様相も次第に和様化していき、更に平安時代には貴族の好みを反映した繊細で穏やかであったのが、鎌倉時代に入ってからは新たな支配者となった武家の好みを反映させた写実的で力強いものへと変化していきます。

重要文化財 木彫阿弥陀如来坐像 大治 5年銘 平安時代 (1130)  泉屋博古館所蔵

日本の仏画

平安時代に貴族が競って造寺造物に財を投じた結果、繊細かつ美麗な作品が誕生し、日本の仏画の黄金時代を築きました。特に現世利益と願う密教尊の絵画は特徴があり、鎌倉時代にも盛んに製作されました。

いつの時代もパトロンが優れた芸術を育てるんですね。

       文殊菩薩渡海図 鎌倉時代・14世紀 泉屋博古館所蔵

日本の鏡像

日本の鏡像は日本の神と外来のホトケが一体となる神仏習合思想に基づいて誕生した作品で、これも平安時代以降盛んに製作されました。

この仏画が刻まれている方が鏡面です。
鏡自体は直径15cm、小振りのものです。
こんなに小さな面にこれほどまでに繊細な描写を刻めるとは!
実物は本当に美しいです。
ぜひ実物をご覧下さい。

国宝 線刻仏諸尊鏡像 平安時代 泉屋博古館所蔵

最後にもう一度、案内文の最後の一文の引用を。

「時代、地域によって様々に変化する多様な仏教美術世界を、東山の秋景色とともに心ゆくまでお楽しみください。」

特別展「仏教美術の名宝」
開催概要

会場)住友コレクション 泉屋博古館
〒606-8431 京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24

会期)平成30年9月8日(土)~ 10月14日(日)

開館時間)午前10時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分まで)

休館日)月曜日(9月17日・24日、10月8日は開館、 9月18日・25日、10月9日は休館)

入館料 )一般800円/高大生600円/中学生350円 (小学生以下無料)
※企画展・青銅器館両方ご覧いただけます
*20名以上は団体割引20%、障害者手帳ご呈示の方は無料

主催)公益財団法人泉屋博古館、日本経済新聞社、京都新聞
後援)京都市、京都市教育委員会、京博連、公益社団法人京都市観光協会、NHK京都放送局

お問い合わせ)075-771-6411(代)

cinefil 読者チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「仏教美術の名宝」展プレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2018年10月8日 24:00 火曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。

抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

This article is a sponsored article by
''.