昨年のカンヌ国際映画祭に正式出品された鬼才ロマン・ポランスキー監督最新作である戦慄のミステリー『告白小説、その結末』は、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて大ヒット公開中です。

画像: ©2017 WY Productions, RP Productions, Mars Films, France 2 Cinéma, Monolith Films. All Rights Reserved.

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『ローズマリーの赤ちゃん』『チャイナタウン』『テス』『戦場のピアニスト』『ゴーストライター』など半世紀以上にもわたって観る者を魅了し続けているポランスキーが、初めてふたりの女性を主人公に据え、底知れない戦慄を呼び起こす極上のミステリーを作り上げた。

映画の公開を直前に控えた6月22日(金)、原作「デルフィーヌの友情」の発売と映画公開を記念して、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店で英米文学翻訳家・風間賢二と映画評論家・滝本誠によるトークイベントが行われました。

画像: 左より英米文学翻訳家・風間賢二と映画評論家・滝本誠

左より英米文学翻訳家・風間賢二と映画評論家・滝本誠

滝本氏は、「映画の公開は明日なので、まだ誰もこの映画を観ていない前提とすると、何もしゃべってはいけないということになるんです(笑)」と切り出し、風間氏も「ネタバレせずにはしゃべれないんです。ほのめかしながらやっていくしかないですね」と同意。

滝本氏は、「扱っている内容が、僕のイメージではダーレン・アロノフスキー監督の『マザー!』に似ているんです。詩を書くことができないが、書くためには自分をどういう状況に置いたらいいのかという詩人の幻想みたいな映画で、この映画の凄みは、その内容を主演女優にやらせて監督と女優が撮影中に付き合い、撮影が終わるとともに別れたという・・・現実に女優でそのテーマを試すという、メタムービーの極致のようなことをやったんです」と、最近話題となった作品を引き合いに出しつつメタフィクションである本作のエッセンスを解説。
一方、風間氏は、「原作がデルフィーヌとエルが繰り広げる文学論であるのに対して、映画はサイコミステリーの方向に向かっていきます」と映画と原作の違いを説明。

本作では、スランプ中のベストセラー作家デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)がパソコンのWordを起動させるが、その真っ白な画面を前に何も打ち込むことができず、ついには体に不調まで来してしまうという場面も出てくるが、滝本氏は、「オノ・ヨーコが1960年代に小さな個展を開いたんですが、(その展示内容が)中が真っ白な小さな冊子を開いてパラパラ見ていくようなものだったんです。それに一番通っていたのがロマン・ポランスキーと(ポランスキーの当時の妻だった)シャロン・テートだったんです。ポランスキーは白い世界になぜか魅了されていたんですね」と、本作に通じるはるか昔の経験を紹介する。

ふたりは、本作を紐解くためのヒントや原作で言及される世界観を知る上で助けになる具体的なキーワードや作品名を次々と挙げていくが、風間氏は、「原作は3部に分かれているんですが、それぞれの扉に引用文が付いていて、どれもスティーブン・キングの作品の引用です。彼の作品や映画をよく見て知っているような人には、示唆しているものが分かっちゃうんです(笑)」と物語を紐解く重大なヒントを指摘。

原作を監督に読むように勧めたのは監督の妻で創作上のミューズでもあるエマニュエル・セニエで、原作を読んだ監督は映画化を即決。そして、セニエが演じるデルフィーヌに対峙する人物・エル役に、エヴァ・グリーンがキャスティングされている。そんな二人が演じる、デルフィーヌとエルによる一心同体のようにももろく壊れやすい鏡像のようにも見える関係が描かれているが、作中で物語が進むにつれてエルの容姿が徐々にデルフィーヌに似てくる。

そのことについて、滝本氏は、「エマニュエル・セニエが図々しいと思うのは、相手役に(自分より一回り以上も年下の)エヴァ・グリーンを持ってきたところ。ポランスキーの妻という位置は、ものすごく面白いと思うんですよ。セニエは、ポランスキーを使って自分が妄想する世界を作り上げていると思うんです。今はポランスキーではなくむしろ彼女がメインで動いてるんじゃないか。やっぱり女が勝つんですよ」と、映画の見え方が180度変わりかねない衝撃の指摘を披露。
風間氏は、監督が妻を演出することの難しさについて“一緒に生活することよりも楽ですよ(笑)”と答えたインタビューを紹介し、その推論の裏付けを紹介する。

風間氏は、「これから映画を観る人は、映画のオープニングと一番最後のラストを気を付けて観た方がいいと思います。最初をきちんと観れていないと最後も全く分からないと思います。」と語り、また、監督が手掛けた『ゴーストライター』と本作との関連性は否定しつつも、「“ゴーストライター”は憑りつかれている人という意味でもあるから、色んな解釈ができると思います。」と締めくくった。

鬼才・ポランスキーが仕掛ける戦慄のミステリー『告白小説、その結末』予告

画像: 鬼才・ポランスキーが仕掛ける戦慄のミステリー『告白小説、その結末』 予告編 youtu.be

鬼才・ポランスキーが仕掛ける戦慄のミステリー『告白小説、その結末』 予告編

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【STORY】
心を病んで自殺した母親との生活を綴った私小説がベストセラーとなった後、スランプに陥っているデルフィーヌの前に、ある日、熱狂的なファンだと称する聡明で美しい女性エルが現れる。差出人不明の脅迫状にも苦しめられるデルフィーヌは、献身的に支えてくれて、本音で語り合えるエルに信頼を寄せていく。まもなくふたりは共同生活を始めるが、時折ヒステリックに豹変するエルは、不可解な言動でデルフィーヌを翻弄する。はたしてエルは何者なのか?なぜデルフィーヌに接近してきたのか?やがてエルの身の上話に衝撃を受けたデルフィーヌは、彼女の壮絶な人生を小説にしようと決意するが、その先には想像を絶する悪夢が待ち受けていた……。

監督:ロマン・ポランスキー『戦場のピアニスト』『ゴーストライター』 
出演:エマニュエル・セニエ『潜水服は蝶の夢を見る』、エヴァ・グリーン『007/カジノ・ロワイヤル』 脚本:オリヴィエ・アサイヤス『アクトレス 〜女たちの舞台〜』、ロマン・ポランスキー 音楽:アレクサンドル・デスプラ『シェイプ・オブ・ウォーター』
原作:デルフィーヌ・ド・ヴィガン「デルフィーヌの友情」(水声社)
原題:D'après une histoire vraie/英題:Based on a true story/2017年/フランス・ベルギー・ポーランド/フランス語/100分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:古田由紀子  
配給:キノフィルムズ/木下グループ   
映倫区分:一般
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