「希望のかなた」に出演した女優ヌップ・コイブさんが語るアキ・カウリスマキ・ファミリーの魅力

ヘルシンキのカンピ地区で25年以上、インディペンデントの映画館と飲食店の複合店〈アンドラ〉を運営しているカウリスマキ兄弟。

併設する〈コロナバー〉で働いていたことから、今回、アキ・カウリスマキ映画『希望のかなた』に出演することが決まったヌップ・コイブさん。
レストラン〈ゴールデン・パイント〉のウエイトレス役ヌップさんにアキ・カウリスマキ映画への出演について伺いました。

画像: ヌップ・コイブさん。イベントスペイース〈ドブロブニク〉にて。

ヌップ・コイブさん。イベントスペイース〈ドブロブニク〉にて。

— 「希望のかなた」に出演するきっかけを教えてください。

ここ〈コロナバー〉で、実は15年くらい働いていたんです。女優の仕事と並行しながらね。
途中、大学に行ったりと20〜30歳までは何もしない時期もありましたが、アキは私が女優として活動をしているのを覚えていてくれていて、いつかは彼の作品に出してもらいたいということは彼自身、わかっていました。実際にアキの会社「スプートニック」で製作された白黒映画「ジャンヌ・ダルク」には主演で出してもらったこともありました。

「希望のかなた」のウエイトレス、ミルヤ役はアキの配役の仲で、私を適任だと思ってくれたんだと思います。彼は毎回、キャスティングのオーディションなんかはしないで、自分で良いと思った役者を選んで決める人ですから。

画像: 信頼する役者に時を委ねるというアキ・カウリスマキ・ファミリーの魅力を『希望のかなた』出演の女優ヌップ・コイブさんに聞いたー

— 撮影の間はどんな感じだったんですか?

キャストもスタッフも本当に和気藹々としていて、スタッフも出演者も仲が良く、笑いも絶えなかったけれど、フィルムが廻っている時は皆、真剣でした。アキはデジタルではなく、すべてフィルムで撮影を行うので、1ショットのリリースで撮影を終わらせるのが基本。
アキは信頼する役者に時を委ねるという感じです。
撮影は本当に楽しくて、終わってしまうのが何だか惜しいような、もっと皆んなで、離れずに、ずっと一緒にいたいような気持ちにさせられましたね。

画像: ヘルシンキ市内Kasarmikatu 15番、〈ゴールデン・パイント〉のロケ地は解体の予定だった。

ヘルシンキ市内Kasarmikatu 15番、〈ゴールデン・パイント〉のロケ地は解体の予定だった。

ーベルリン国際映画祭では?

2017年のベルリン映画祭の上映の時、プレスカンファレンスに行ったんですが、カウリスマキ監督や彼の多くの映画に出演している男優のサカリ・クオスマネンの堂々とした姿が印象的でした。
カウリスマキ監督は「第二次世界大戦直後、ヨーロッパ人は皆んな難民だった!」と話していたし、ジャーナリストとのやりとりが白熱してきた後半、クオスマネンさんは歌を披露して、場を和めてくれました。

ベルリンには私も行って、本当にこの映画がベルリンで好意的に受け止められて嬉しかった。
私自身も大きな映画祭に初めて参加できたことを大変、光栄に思いました。アキが監督賞を受賞したのは素直に嬉しかったです。
彼はあまりたくさんを語ることはないのですが、計り知れない正義感や情熱がある人です。
作品では、彼がいま、映画で表現したい社会的な問題と取り組みがいつものユーモアを交えながらも、ストレートに描かれていたと思いました。

画像: 主人公カリード(シェルワン•ハジ)がコーヒーを飲むシーンの撮影現場、 中央駅からも近い〈ウォール・ストリート・バー〉

主人公カリード(シェルワン•ハジ)がコーヒーを飲むシーンの撮影現場、
中央駅からも近い〈ウォール・ストリート・バー〉

— この映画、フィンランドではどんな受け止められ方をしたのでしょうか?
映画に行く人は多いのですが、アキの映画が好きな人は玄人というか、自身がアーティストであったり、プロだったり、映画の技術的なことが好きな人も多いです。アートフィルム系に行く人たちに支持されてますね。ハリウッド映画を見ている人の中には彼のユーモアやセンスをわからない人もいるかと思います。

フィンランドでは学校でも教育の一環で「希望のかなた」を上映しました。
生徒の中からは良い質問が出て来たりしていましたね。昨年の夏にはラップランド・ミッドナイト・サン映画フェスティバルにも招待されて、スタッフがまた、一同に集まりました。
本当にファミリーみたいで再会が嬉しかったです。

画像: ヌップさん、〈コロナバー〉のビリヤード場で

ヌップさん、〈コロナバー〉のビリヤード場で

— ここ、〈アンドラ〉劇場はヌップさんにとって女優デビューのきっかけとなった特別な場所ですね。

ティーンエージャーの頃から、出入りをしているのでヘルシンキの第二の我が家というか、親戚というかとってもお世話になっている、自分の人生を語る上で非常に大切なところです。
女優としてキャリアを積んで行くということもアキやスタッフが暖かく見守ってくれたからという、精神的なサポートも大きいんです。いつという確約はないけれど、またアキの映画に出演できることができたらいいなと思っています。

画像: 〈コロナバー〉カウンターに立つ ヌップさん

〈コロナバー〉カウンターに立つ ヌップさん

画像: 〈アンドラ〉劇場の1階の〈コロナバー〉には映画好きや常連さんが日夜集う。

〈アンドラ〉劇場の1階の〈コロナバー〉には映画好きや常連さんが日夜集う。

(取材・文 浦江由美子/撮影 高橋マナミ)

アキ・カウリスマキ監督『 希望のかなた 』Blu-ray&DVD が発売が決定!

アンドラも舞台になっている、アキ・カウリスマキ監督の最新作『 希望のかなた 』が7月4日にBlu-ray&DVDとして発売されることとなりました。

DVDパッケージビジュアル

画像: アキ・カウリスマキ監督『 希望のかなた 』Blu-ray&DVD が発売が決定!

『希望のかなた』Blu-ray&DVD Release予告

画像: 『希望のかなた』2018.7.4(水)Blu-ray&DVD Release youtu.be

『希望のかなた』2018.7.4(水)Blu-ray&DVD Release

youtu.be

7月4日DVD発売
価格:ブルーレイ4,700円+税 DVD 3,800円+税
【特典映像】                                  
◆劇中音楽ライブシーン(フルバージョン)×4曲                      ◆オリジナル予告/日本版予告                    
◆スチール・ギャラリー                           
◆ビジュアル・パンフレット(※劇場パンフレットを静止画で一部再録)     
発売・販売元:松竹 提供:ユーロスペース/松竹
© SPUTNIK OY,2017

あらすじ
内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手をさしのべ、自身のレストランへカーリドを雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた、行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていた。それぞれの未来を探すふたりはやがて“家族”となり、彼らの人生には希望の光がさし始める…。

監督・脚本:アキ・カウリスマキ(『過去のない男』『街のあかり』『ル・アーヴルの靴みがき』)
撮影:ティモ・サルミネン                                 出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、カティ・オウティネン、ヴァルプ(犬)ほか

This article is a sponsored article by
''.