「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」 

睡蓮 前回は「悪女とお金」、今回のテーマは「悪女と権力」ということで三つの歴史映画を取り上げますが、まずはソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』を。映画を観る前から、マリー・アントワネットに対しては何かしらのイメージがあったと思うんです。どうですか?

森下 わたしは歴史の教科書から得た、「絞首刑にされた王妃」ってイメージが強かった。でもそういう断片的な知識しかないまま大人になって、20代でようやく、絵画や映画、小説なんかで少しずつマリー・アントワネットについて知っていったかな。

睡蓮 なるほど。じゃあ映画について、最初のイメージとの違いも話せたら面白いですね。

「マリー・アントワネット」あらすじ
1769年、オーストリアの皇女マリア・アントニアは、オーストリアとフランスの同盟関係強化の一策として、母マリア・テレジアの命によって14歳でフランス王室に嫁ぐことに。ベルサイユ宮殿では格式を重んじることが良しとされ、いささか窮屈な思いをするが、ルイ16世と盛大な式を挙げ、晴れて王妃「マリー・アントワネット」になると、ルイ15世の愛人・デュ・バリー夫人との対立や夫・ルイ16世との夫婦関係など、数々の問題が起こり……。

森下 映画は、ひと言で「マリー・アントワネット=女の子!」だった。

睡蓮 あ、こういう解釈なんだ!っていう。新しい解釈。ちなみに、わたしはマリー・アントワネットだと「ベルサイユの薔薇」の印象が強くて。読みました?

森下 わたしが小学生のときにアニメが放映してたけど、観てないの。漫画も読んでない。「オスカル」って名前だけを知ってる状態。

睡蓮 アンドレ、オスカル……それは架空の人物ですね。

森下 そうなのよね。だから結局はマリー・アントワネットのことも、フランス革命のこともちゃんと知らないの。

睡蓮 わたしも世界史で習った後に忘れちゃったんですけど、18世紀フランスのあの退廃的な時代に夫のルイ16世の性格が温和過ぎて。

森下 牧歌的というか、何をするにも受け身な男性だったね。ほとんど自己主張しない人。

睡蓮 いい人だけど、ある意味では「無能」ともいえるじゃないですか。

森下 時代が変わって国が傾いたら終わりだよ。

睡蓮 もし夫が有能で、政権が安定していて、マリー・アントワネットも王族として上手くいっていたら悪女として描かれないんだなって。これは今回の悪女映画に共通していえることです。

森下 嫌味な言い方だけども、「彼女らは良い人でした」では何百年も語り継がれないよね。

画像1: 「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」

睡蓮 マリー・アントワネットで有名なのは、民衆が困窮していったときに「パンがないならお菓子を食べたらいいじゃない」と発言したこと。この逸話がデマであることも有名ですが、ま、当時からそういうイメージの女性だったんですね。映画にも描かれてる「プチトリアノン」っていう、豪華絢爛な敷地内別荘みたいなところ。あれを王妃は与えてもらってたけど、まあやりたい放題で。

森下 マカロン食べたりお酒飲だり、欲しいものを欲しいだけ買って、あれは10代の女の子の憧れる生活だよね。異常なレベルで楽しみ尽くしてるの見て、ただただ微笑ましかった。ピンクを多用するとかBGMをおしゃれにするとか、演出がポップなせいもあるけど。

睡蓮 この映画のなかでも民衆の生活、庶民の感覚なんてほとんど描かれてないんです。ケーキばっかり食べてるイメージ。マリー・アントワネットという人物についてのソフィア・コップラらしい目線というか。

森下 王宮での優雅な生活と、王妃マリー・アントワネットの人間関係を描こうっていう。目覚めたあと女官に着替えを手渡されて、朝食からフルコースで、寝るまで他人が面倒みてくれる生活かあ……。

睡蓮 可愛い雑貨屋さんみたいな、女の子が好きそうな感じはあんまり長時間観ていると疲れますけどね(笑)

森下 あわーい水色とか、ピンクにしてもイチゴミルクみたいな甘い色味ね。ルイ16世の父、ルイ15世の愛人はドレスの色が真っ赤だったり、黒っぽいコーディネートしたりと、色の対比には気をつかってて。あ、それと、マリー・アントワネットにも不倫相手が……。

画像2: 「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」

睡蓮 「ベル薔薇」でもフェルゼンとの不倫は結構盛り上がるロマンチックなところなんですが、まあ、あの夫だったら浮気しますよねえ。

森下 うん、別に咎めない(笑)いくら夫に構われないからって、若い女の子にも欲望はあるから。性欲もそうだし、人に必要とされたいって気持ちもある。

睡蓮 ルイ16世の男性機能の不能ってかなり深刻なレベルだったみたいですしね。

森下 マリー・アントワネットが恋する相手を想って、ベッドで身悶えしてるシーンがよかったな。あの表情って、女の素顔だと思うの。ただ恋い焦がれてるだけなんだけど、他のことなんにも考えてない欲望ダダ漏れの顔。あまりに人生を謳歌してるせいで嫌な感じがしなかった。女優キルスティン・ダンストの一番の魅力かもしれない。

睡蓮 彼女は政治的なことには無関心なんですよね。そこは面白いです。政治に興味があるかないかによって悪女のタイプが別れてくるけど、王妃になっても自分の快楽にかまけているところ、そういうのは民衆から見たら悪ですが、映画を見る限りではそんなに悪女じゃない。

森下 散財することが後にどう影響してくるか知ってて、「わたしの勝手でしょっ」なんて態度だったらそれは悪女だけどもね。

睡蓮 驚くほど無知なんですよね。ああやって一人の人間の浪費癖によって実際に国が傾く可能性があるのは今の時代にだってあることですけど。

森下 いくら使ったんだろう。5000億くらいかな。いや、正確なことはわかんないけどね……。

睡蓮 首飾り事件とか歴史上にも残ってるけど、それくらい価値観がずれまくってるわけですよ。世継ぎを産むための王妃だから、子供を産まなきゃってプレッシャーが大きくなって、おかしくなっていったのかなって。安易な想像ですけど。だって、朝から晩まで見張られてるようなもので、全てが常人の想像を超えた生活ですもんね。人権とか皆無。

森下 ただ、それまでの宮殿のしきたりがマリー・アントワネットじゃなくても一人の人間をダメにするようなものだったし、王妃から特権を得た人たちにも原因があると思うの。

睡蓮 王族や貴族は、あの時代の共犯者とも言えますよ。実際のマリー・アントワネットは斬首刑になるわけですけど、映画ではそこを描かず、王妃になっていかに栄華を過ごしたか、とにかくファッションショーみたいな映画でした。

森下 「悲劇」を強調しなかったソフィア・コッポラの作風は潔かった。悪女臭薄かったもん。

睡蓮 歴史の中で酷い女扱いされても、彼女は周りに悪女だと思われているなんて思いもしなかったでしょうし、誇張している感じはなかったです。ウィーンから来た女の子が王妃になって、自分の感覚だけで生きていたという……。

森下 ソフィア・コッポラ流の青春映画として観るのが吉、だね。

画像: Marie Antoinette (2006) Official Trailer 1 - Kirsten Dunst Movie www.youtube.com

Marie Antoinette (2006) Official Trailer 1 - Kirsten Dunst Movie

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「わたしは英国と結婚する」

「エリザベス」あらすじ
16世紀のイングランド。旧教であるカトリックと、新教であるプロテスタントの争いが激しさを増す中、カトリックの異母姉メアリー女王によりロンドン塔に幽閉されてしまった新教派のエリザベス。しかしメアリーが病死すると、1558年、25歳で王位を継承する。その後、王女・エリザベスのもとには、ポーランドのアンジュー公やスペイン王との政略結婚の話が持ち上がるのだが……。

森下 『エリザベス』はわたしには少し難しかったなー。

睡蓮 どういうあたりでしょう……?

森下 単にわたしの勉強不足、無知さが過ぎるだけって話なんだけど、カトリックとプロテスタントの対立について知識が薄くて……。政治の利害なんかが絡むと、どうやったって話が複雑になるじゃない?イスラム教の争いの複雑さと同じくらい、キリスト教もかなり面倒な宗教だなと思ったり。

睡蓮 日本だと宗教戦争自体がどうしてもなじみ薄いですよね。

森下 そうだね。映画はプロテスタントを排除しようってところから話が始まるでしょ。

睡蓮 エリザベスの腹違いの姉、メアリー王女がカトリックです。前に「カトリックの学校に通っていた」って言いましたけど、だからといってプロテスタントの人に嫌な気持ちはまったくないんですよ。宗教が純粋なものとして解釈できる環境だからで、彼らのように利害絡んでいないからですけど。

森下 それが普通だと思うけどなあ……。

睡蓮 今回の取り上げる作品の主人公がそれぞれ歴史上の人物で「王妃」「女王」などと偉い立場の人たちなんで、簡単に「悪女」のひと言ではくくれません。お金は当たり前にあるけど、女性が権力を持つとどうなるのか、それと「血」というのが関わってきます。

森下 血筋には逃れられないよね。宿命だもん。

睡蓮 エリザベスは父が王で直系ですもんね、妾の子といえど。ぱっと思い浮かぶエリザベスのイメージは歴史の教科書に載っていた白塗りで襞襟の衣装を着た姿で、「怖い……」って印象でした。そのイメージへと向って彼女が名実ともに「エリザベス」になるまでの過程を映画は描くんですが、「この人がこうなるんだ」って変化の面白さがありました。

森下 歴史映画ほどエンターテイメント性を発揮しないといけないんだなって、改めて思うね。

画像1: 「わたしは英国と結婚する」

睡蓮 彼女の人生の一部分を抜き取ったにすぎないとしても、エリザベス個人の描写が丁寧で、有無を言わさない圧倒的な力を感じました。ラスト、あの男の家臣たちと同様、彼女の神々しさにはっとする。

森下 結局は45年間も統治したんだもんね。それを予期するかのような殺気。憧れるなあ。

睡蓮 単なる覚悟じゃないですね。独身を貫いたわけですから。

森下 王女としての徹底した振る舞いに猟奇的なものを感じつつ、絶対的な権力を持ちながら好きな男をなかなか諦めないじゃない?しかも、恋人のロバートって人には奥さんがいるんだよ。

睡蓮 それでもロバートのことは殺したりはしないですもんね。

森下 複雑な人だなって思ったけど、周りが見ている前で感情的になって女心を曝け出したりもするから、ますますわからない。ロバートも映画の後半、「王女が自分の虜になってる」ってイイ気になりかけて暴走したり……。

睡蓮 エリザベスのことは自分の野心も含めて本気で好きだったんだろうなと思うんですよ。ただ、王女には敵いませんでしたね。エリザベスにはロバート以外にも関係する男がいっぱいいたみたいですし。

森下 「女傑、色を好む」だ。そのバイタリティが権力を持つ運命を引き寄せたんだろうけど、潔癖症な感じ……繊細と言った方がいいのかな、マイナスな面もふんだんに持っていたから、自分の性質に振り回されることもあったと思うよ。

睡蓮 面白いほどの男性不信……!求婚もたくさんされたらしくて、50代のときに20歳の男性から結婚の申し出があったとか。

森下 男性側からすると王女と結婚すれば力が手に入るわけだから、上昇志向のある男性なら「俺が!」ってなるよ、きっと。

睡蓮 結局、「わたしは英国と結婚する」って言って処女性を保とうとするんですけど、なんでそこにこだわったのか気になって調べてみたんですよ。そしたら、幼い頃のなにかしらのトラウマで女性性が機能してなかったとか、王女になった以上は世継ぎをと言われて、子供を産むことが重要視されている時代に不妊説もささやかれたらしくて。

森下 エリザベスのような男っぽい性格の人にとっては生き辛かったよなあ。

睡蓮 女になるんでもなく男になるでもなく、何かを越えましたよね。処女性が女の根源じゃない。だって処女って男の人と交わってない女、そういう意味ですよね。男女が交わらず「生物を超える」って意味だったら処女性という言葉を理解できますけど。

森下 「1回でも男性と交わったらもう処女じゃありません」「でも1回前は処女でした」みたいな区分けはもういらない気がする。神聖さは1度きりで終わりなんて、ねえ。くだらないよ。

睡蓮 映画のエリザベスは、「怖い女」というイメージとはちょっと違いましたね。彼女の場合、もともと政治に興味があって、実権を握っていく上で国をどうするか自分で考えて、「わたしの精神は男だ」って言い切ってる。今は、女性は女性として楽しむことを推奨されてる時代だけど、まだ概念の域を出てないですね。たとえば、「女性としてどう見えますか」って言葉に違和感があるんです。女性目線って、蔑視?って。戸籍上たまたま女であるわたし個人のとしての意見じゃだめですかね、って。

森下 映画のトークショーに呼ばれるとよくあるのは、「女性にも観てもらいたい」「女性の意見を聞きたい」「女性に支持されるにはどうすればいいか」とかね。最近は「女性からの意見」を問われた瞬間に、わからなくなるのよ、自分の意見が。女性としての自分がどうかなんて知らないもん。

睡蓮 戸惑いますね。わたしは女性という名前ではないので……。確かに、男性の好み、女性の好み、くらいはありますよ。でも「中年男としての意見を聞かせてください」っていうくらい、失礼ですよ。

森下 「女性意見」というものがすでに曖昧で、明確ではないのかも。意見を狭められたくない、限定されたくないって気持ちで、つい反発しちゃうよね。

画像2: 「わたしは英国と結婚する」
画像: Elizabeth (1998) Trailer www.youtube.com

Elizabeth (1998) Trailer

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世にも恐ろしい中国の女性権力者 

睡蓮 さて、これまで語った映画はどれもかなりお金かけてますが、これはもう……。

森下 総製作費150億! 大がかりな歴史ロマンだよ。

「西太后」あらすじ
清朝末期の中国。イギリスら列強諸国の侵攻に揺れる大国を治める若き皇帝・咸豊帝の後宮に入るため集められた大勢の少女たちの中に、「玉蘭」という名のひとりの美しい少女がいた。若い女の身でありながら絶大な権力への野心を胸に秘めた彼女は、下等な身分であるにもかかわらず皇帝の寵愛を得て第二夫人の地位につき、皇太子を出産。「西太后」となって皇后・東太后と共に政治を動かすようになる。
 
※「火焼圓明園」「垂簾聴政」の2本を編集し短縮したのが「西太后」(129分)である。DVDでは「火焼圓明園」を邦題「西太后 第一部」(93分)、「垂簾聴政」を「西太后 第二部」(115分)とし、「続・西太后」(99分)も製作された。

睡蓮 『西太后 第一部』で、少女時代の西太后が歌っているところを見染められます。あの感じは悪女に至るコンプレックスを全く背負ってなくていいなと思いました。

森下 西太后はドラマティックな人生を歩んでいるんだよね、成り上がりな人だし。権力者の輪に入ってからはみるみるのし上がって、第二夫人でありながら実権を握るでしょ。

睡蓮 決められた結婚ではないですもんね。彼女の場合、政治に興味があったから口出しをして、皇太子を産んだ女性ってことで地衣が確立されました。

森下 西太后の映画は、小学生のときかなあ、TV放映で観たのね。全体としては記憶があやふやだけど、西太后が指先につけてる鋭い爪カバー?で若い女の顔を思い切り引き裂くシーンが衝撃的でさ。「恐ろしい中国の女権力者」のイメージが脳に張りついちゃったのよ。

画像1: 世にも恐ろしい中国の女性権力者

睡蓮 わたしは西太后=どぎつい、怖いことした悪女の印象が強すぎたのかな。なんとなくホラー映画の要素を期待したんですが、あんまりきつくはなかったです。

森下 そうなんだ。

睡蓮 皇帝・咸豊帝に寵愛されていた麗妃の手足を切り落として壺に入れるとか、あれも手足の切断シーンはなかったから……。壺から首だけ出た状態で喋ってるのは衝撃でしたけど。

森下 権力者の一番怖いところは、家来に「やれ」って命じるだけで何でもできちゃうことだよね。

睡蓮 邪魔だと存在を消しちゃう。あまりに軽々と。あえて比較すれば、マリー・アントワネットは女性的で、エリザベスは男性性が優位、西太后は両方を持ってるのが怖かった。

森下 うん、女性性と男性性の両方を強烈に持ってる。男だろうが女だろうが中途半端に情けをかけない。ひとりを守るために1万人を殺す必要もあると思うし、10万、100万それ以上の国民の上に立つんだから、どこか非情でなくちゃいけないんだけどね。

画像2: 世にも恐ろしい中国の女性権力者

睡蓮 女性の感覚だけではやっていけませんよね。そもそも女であることは邪魔だろうから。

森下 情に流されたらすぐ敵に潰されちゃうよ。ただ、映画の中では描かれてないけど、西太后は健康と美容にすごく気をつけてたみたいね。天然石の美顔ローラー使ったり、食事は栄養素の高いものをバランスよくとって、冷たいものは食べないとか……。毎朝母乳を飲んでたって噂まである。

睡蓮 美容に気を遣ってたんですね……!

森下 尋常じゃないくらい徹底してたみたいだよ。フカヒレやツバメの巣って「西太合も食べていたあの高級食材」って言われたりするもんね。エネルギーを感じるなあ。

睡蓮 女のコスチュームを完璧に着こなしたわけですね。あそこまで長い映画をよく作ったなあって純粋に思うんですけど、本人がそこまですごくなかったら撮られなかっただろうなって。

森下 女性っぽさより、人間としての強さを思うよ。その、さっき言った自己管理だって生半可な気持ちじゃないだろうし。

睡蓮 悪女というより、成功者の光と影みたいな。

森下 西太后も即位して長かったよね。これは完全に余談だけど、北京の紫禁城には西太合が「翔鳳為林」っを言葉を残していて、「女たちよ次々と飛び立て」みたいな意味らしいの。映画では魔物のように描かれてて、そのギャップたるや歴史と同じく謎めいてるんだよなあ。

睡蓮 架空の人物であれば色々と言えるんですけど、歴史上の人物ですもんね。西太合のレベルだと悪女かどうかなんて言えませんね。

森下 なんとなく悪女でいて欲しい気もする。中国はデカいから(笑)歴史上の人物ってファンタジーとして扱われるのが常で、映画の演出としては多きなスケールで作りたいわけだから、西太后を「残忍な人物」とした方がわかりやすくて面白いのはわかる。権力者が邪魔な人間を拷問にかけるシーンなんて超見どころだもん。

睡蓮 少なくともマリー・アントワネットやエリザベスに関しては彼女らを悪女扱いして映画を作ろうっていう、単純なものではなかったですよね。

森下 確かに『西太后』はド直球だった。だんだん悪女のタイプがグレーな感じになってきたような。

睡蓮 お金や権力までいくと、自己に起因しているものを越えますよね。今までの悪女のタイプは自分の女性性にとらわれて意識が内面に向かっていたから。今回のテーマは完全に外に価値観がありました。

森下 処刑されるのは運命だから仕方がないけど、男に裏切られて逮捕されたり国外に逃げたりしても、自分の人生に決して負けないで欲しいね。

画像3: 世にも恐ろしい中国の女性権力者
画像: The Burning of Yuan Ming Yuan (火烧圆明园)(1983) Trailer www.youtube.com

The Burning of Yuan Ming Yuan (火烧圆明园)(1983) Trailer

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今回取り上げた3本

『エリザベス』
原題 Elizabeth /製作年 1998年/製作国 イギリス/配給 日本ヘラルド映画/上映時間124分
監督シェカール・カプール/脚本マイケル・ハースト
撮影 レミ・アデファラシン/美術ジョン・マイヤー/音楽デビッド・ハーシュフェルダー
キャスト ケイト・ブランシェット/ジェフリー・ラッシュ/ジョセフ・ファインズ/リチャード・アッテンボロー他

『マリー・アントワネット』
原題 Marie Antoinette/製作年 2006年/製作国 アメリカ/配給 東宝東和,東北新社/上映時間 123分
監督・脚本 ソフィア・コッポラ/製作 ソフィア・コッポラ、ロス・カッツ/製作総指揮 フランシス・フォード・コッポラ
撮影 ランス・アコード/美術 K・K・バレット/衣装 ミレーナ・カノネロ/編集 サラ・フラック/音楽 ブライアン・レイツェル
キャスト/キルステン・ダンスト/ジェイソン・シュワルツマン/アーシア・アルジェント/リップ・トーン/ジュディ・デイビス

『西太后』
原題 垂簾聴政/製作年 1984年/製作国 中国・香港合作/配給 東宝東和
監督 リー・ハンシャン/脚本 ヤン・シン・ピン/製作総指揮 チェオ・ウェイ/製作 トン・ホン・ドウ
、ウー・ピン・チュアン
撮影 ヤン・リン、タン・ムー・セン/美術 ソン・ホン・ロン/音楽 イエ・チェン・ジ
キャスト/リュウ・シャオチン/レオン・カーフェイ/チェン・イエ/張樹義/チョウ・チェ

★前回の対談記事はこちら

森下くるみ(もりした・くるみ)
1980年生まれ。秋田県秋田市出身。文筆家。「小説現代」2008年2月号に短編小説「硫化水銀」(のちに電子書籍化)を発表。著作に『すべては「裸になる」から始まって』(講談社文庫)、『らふ』(青志社)、『36 書く女×撮る男』(ポンプラボ)、『虫食いの家』(kindle singles)など。季刊誌『東京荒野』に旅エッセイ「中国回遊録」を寄稿。「食べびと。」連載中の、ポエジィとアートを連絡する叢書『未明02』が発売中。

睡蓮みどり(すいれん・みどり)
1987年生まれ。神奈川県横浜市出身。早稲田大学第二文学部中退。在学中より映画を中心に女優として活動を開始。主な出演作は『恋の罪』(園子温監督)、『青春群青色の夏』(田中佑和監督)、『断食芸人』(足立正生監督)、『第九条』(宮本正樹監督)など。その他、「月刊デジタルファクトリー」で写真モデルを務める。文芸誌「文學界」や「群像」にエッセイを発表。図書新聞に「シネマの吐息」連載中。著作には『溺れた女 渇愛的偏愛映画論』(彩流社)。

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