新しい昭和カルチャーを生み出した編集者・作家の末井昭のエッセイを、冨永昌敬監督が7年越しの想いで映画化した『素敵なダイナマイトスキャンダル』。

脚本・監督の冨永昌敬と、実在する末井を演じた柄本佑による対談インタビュー。

画像1: 左より冨永昌敬監督と、実在する末井昭を演じた柄本佑

左より冨永昌敬監督と、実在する末井昭を演じた柄本佑

「冨永監督の脚本は、ただ読んで面白いというだけではなくて、監督の身体を通すと妙な色気を増すんです。」

———はじめに、冨永監督と末井さんとの出会いについて聞かせてください。

冨永昌敬(以下、冨永):末井昭さんはパチンコのCMによく出ている“女装のおじさん”というイメージでした。でもその女装のおじさんが、文庫「素敵なダイナマイトスキャンダル」の表紙に出ていて手に取ってみたんです。実際本を読んでみると、ご自身の半生はもちろん、当時の日々の雑記まで実に痛快に綴られていて。お母さんのダイナマイト心中の話などは悲惨なエピソードなのに、余計なことを感じさせない、軽い文体で書かれていて衝撃を受けました。そしてお若い時、キャバレーやピンサロの看板を描いていた時代のエピソードなどは、若者の葛藤というか屈託が包み隠さず書かれていて一気に惹きつけられましたね。とても人ごととは思えなくて、この楽しい世界を映画で観てみたいと思いました。

画像2: 左より冨永昌敬監督と、実在する末井昭を演じた柄本佑

左より冨永昌敬監督と、実在する末井昭を演じた柄本佑

———“女装のおじさん”の末井さん役を柄本佑さんが演じられていますが、起用の決め手はどこにあったんでしょうか。

冨永:元々佑くんに興味があったんですよね。それに末井さんはちょっと面妖な方なので、誰が一番パシッとハマるかなと検討していく中で、柄本佑だろうという話になりました。佑くんはただの男前じゃないですからね。気持ち悪い顔もできるし。

画像: 映画場面写真 映画で末井を演じる柄本佑 ©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

映画場面写真 映画で末井を演じる柄本佑
©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

柄本佑(以下、柄本):していたかなぁ(笑)。

冨永:これが撮りたいって顔が撮れた。魔物みたいな顔をね(笑)。

画像: 冨永昌敬監督

冨永昌敬監督

———冨永監督が書かれた脚本を読んでの感想を聞かせてください。

柄本:単純に「どうやって映画にするんだろう?」って興味が沸きましたね。その疑問はクランクインしてからもずっと続いていました。でも冨永さんはとても男らしい方だし、僕はどちらかというと内面が女子なので、そういう意味では不安は一切なく、監督に安心して抱かれてもいいかなと(笑)。冨永監督の脚本は、ただ読んで面白いというだけではなくて、監督の身体を通すと妙な色気を増すんです。

画像1: 映画場面写真 ©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

映画場面写真
©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

冨永:僕はもう最初から佑くんをイメージしながら脚本を書いていったから、佑くんにフィットしたのならよかった。

柄本:本当に楽しいなと思いながら毎日過ごしていましたよ。ストレスを全く感じない現場でしたね。

画像1: ★cinefilインタビュー★ 話題の映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』-冨永昌敬監督と、実在する末井昭を演じた柄本佑による対談インタビュー

———共演者も個性派が揃いましたが、柄本さんは演じていてどのシーンが楽しかったですか。

柄本:一日一日共演する役者さんが違ったので、毎日が新鮮でしたね。

冨永:役所の窓口みたいだな(笑)。

柄本:それまでずっとひとりだったり、2人や3人のシーンが多かったところに、喫茶店のシーンで同年代の男子たちが一気に集まって。「あぁ〜、オレ、孤独じゃねぇ!」って思いました。

冨永:冒頭の喫茶店のシーンでしょ? あれは楽しかったね。

柄本:監督もウキウキされていて、「これが撮りたかったんだよ!」って嬉しそうでしたね。

冨永:ポラロイドの4人をアオリで撮るカットは脚本を書く前から入れたいと思っていたものでした。

画像2: 映画場面写真 ©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

映画場面写真
©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

画像2: ★cinefilインタビュー★ 話題の映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』-冨永昌敬監督と、実在する末井昭を演じた柄本佑による対談インタビュー

———ロケ地含め、全体的に美術へのこだわりに目を奪われました。

冨永:アイテムの多い現場って、それだけで面白いんですよね。特に『素敵なダイナマイトスキャンダル』は業界映画でもあるので、仕事道具がふんだんに登場します。編集部の机の上にもたくさんの道具があって、ただそこに座っているだけでも、役者さんからしたら目に飛び込んでくる情報量が違うわけです。

画像: 柄本佑

柄本佑

柄本:丁寧に作り込まれた現場にいると、演じる側もテンションが上がりました。髪型や衣装も昭和初期の雰囲気だし、ロケ地なども当時の空気感が残る場所ばかりだったので、僕はそこに立ってセリフを言うだけという感じでした。空いた時間には当時の資料をペラペラと読んで、セッティング中に眠くなったら寝て、スタッフに呼ばれたらセリフを読んで、撮影が終わったら家に帰る。あれ、今、普通のこと言っちゃったな(笑)。まぁそんな普通のことがとにかく嬉しくて。最近はそう感じられる現場に入っていなかったのかもしれない。楽しい時間でしたね。

写真:中村好伸
構成:平井万里子
インタビュー:矢部紗耶香

『素敵なダイナマイトスキャンダル』予告

画像: 尾野真千子が《初》映画主題歌を原作者と歌う『素敵なダイナマイトスキャンダル』予告 youtu.be

尾野真千子が《初》映画主題歌を原作者と歌う『素敵なダイナマイトスキャンダル』予告

youtu.be

映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』
―芸術は爆発だったりすることもあるのだが、僕の場合、お母さんが爆発だった―
バスも通らない岡山の田舎町に生まれ育った末井少年は、7歳にして母親の衝撃的な死に触れる。肺結核を患い、医者にまで見放された母親が、山中で隣家の若い男と抱き合いダイナマイトに着火&大爆発!!心中したのだ──。青年となり上京した末井昭は、小さなエロ雑誌の出版社へ。のち編集長として新感覚のエロ雑誌を創刊。読者の好奇心と性欲をかきたてるべく奮闘する日々の中で荒木経惟に出会い、さらに末井のもとには南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら、錚々たる表現者たちが参集する。その後も発禁と創刊を繰り返しながら、数々の雑誌を世におくりだしていく……。昭和のアンダーグラウンドカルチャーを牽引した稀代の雑誌編集長の実話を元に綴られた自伝的エッセイ「素敵なダイナマイトスキャンダル」がまさかの映画化!ダイナマイト心中という衝撃的な母の死。この数奇な運命を背負って、転がる石のように生きていた青年が辿り着いた先は──。稀代の雑誌編集長の《笑いと狂乱》の青春グラフィティ。

出演:柄本 佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 松重 豊 村上 淳 尾野真千子
中島 歩 落合モトキ 木嶋のりこ 瑞乃サリー 政岡泰志 菊地成孔 島本 慶 若葉竜也 嶋田久作
監督・脚本:冨永昌敬
原作:末井 昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫刊)
音楽:菊地成孔 小田朋美 
主題歌:尾野真千子と末井昭「山の音」(TABOO/Sony Music Artists Inc.) 
配給・宣伝:東京テアトル
  
2018年/日本/138分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル/R15+
(C) 2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開中!

This article is a sponsored article by
''.