Amuse Group USAへ

3回目となる今回は、Amuse Group USAの朽網泰匡(くたみ やすまさ)さんにお話を聞いてきました。
Amuseはご存知、アーティストマネージメントを中心とした総合エンターテインメント企業。
そのグループ企業であるAmuse Group USAは、ロサンゼルスを拠点とし、BABYMETALやONE OK ROCK、Perfumeといったアーティストの米国・海外展開サポートの他、独自のビジネスを開発・推進しています。
その中で、朽網さんが手掛ける日本-アメリカのコンテンツマッチングプロジェクト「J-CREATION」について紹介したいと思います。

朽網さんの略歴

朽網さんは大学卒業後、制作会社で映画、CMなどの制作進行やアシスタントプロデューサーとして活躍しました。
今後コンテンツは国のボーダーがなくなりグローバルなマーケットになっていくと感じていた朽網さんは、その後カナダ滞在を経て、文科省の新進芸術家海外留学制度の派遣員としてアメリカ・ロサンゼルスへ渡りChapman Universityで映画・テレビのプロデュースを学びMFAを取得します。
MFA取得後は米国内のいくつかの企業で映像コンテンツの企画開発やアニメーション制作などに携わり、2015年からAmuse Group USAでビジネスデベロップメントディレクターとして様々な事業や映像製作案件を企画、推進しています。

私見ですが、ロサンゼルスでお会いするエンターテインメント業界の方々はMFAホルダーが多いように思います。

前回の記事でハリウッドはコネクションが重要と書きましたが、その出発点の一つとして、大学ならびに大学院というのは大きく貢献しているようです。学生同士の繋がりは勿論のこと、教授自身が現役の業界人だったり、教授からの紹介で広がるネットワークなど、大学というコミュニティが業界の近くで機能している印象があります。

Amuse Group USAの事業概要

Amuse Group USAでは、映像事業・音楽事業・イベント事業・マネジメント事業などを行っています。日本本社の所属アーティスト・俳優のアメリカでの活動だけでなく、アメリカで独自にアーティストを発掘しているほか、アメリカでUSAオフィスに所属する現地俳優も数多くいます。その他にもブロードウェイミュージカルの製作参加も行っていたりと、事業範囲は多岐に渡ります。

世界各国でそれぞれ強みのあるビジネスを作っていくという概念の元、Amuseはアメリカ・ロサンゼルスの他にもソウル、台北、香港、上海、シンガポール、パリなどに拠点を構えています。これだけ多くの拠点を世界各地に持つエンターテインメント企業は日本ではなかなかないのではないでしょうか。

アメリカでの俳優マネジメントは2017年から始まった事業ですが、Amuseはアメリカだけでなく世界各地に拠点があり出演機会の幅が広いという点(日本本社含め、各海外支社からの案件オファーもあるとの事)に魅力を感じてマネジメント志望に来る俳優も多いそうです。

J-CREATIONとは

朽網さんがAmuse Group USAで行っている事業の一つに、日本-アメリカのコンテンツマッチングプロジェクトである、J-CREATIONというものがあります。

これは日本が持つIP(Intellectual Propertyの略:日本語では知的財産という言葉で語られることが多いです)をハリウッドに売り込むという趣旨のもので、2016年の立ち上げ以来通年活動を行っていますが、年に一度のペースで日米ゲストを一堂に会したマッチングイベントも開催されています。

過去2回のイベントには、日本からはフジテレビジョン、日本テレビ、テレビ東京などの放送局、文藝春秋、幻冬舎、ポプラ社、小学館、集英社、宝島社などの大手出版社、アスミック・エース、松竹、東映といった映画スタジオや、作家マネージメントのCTB、つばめプロダクション(カテゴリー別・英語のアルファベット順)といったIPホルダーがロサンゼルスで開催された本イベントに参加し、会場に集まったハリウッドのメジャースタジオ、TVネットワーク、制作会社やエージェントなどを対象に、各社が持つIPのプレゼンテーションを行いました。

J-CREATIONにおけるAmuse Group USAの立ち位置

上記のような企画のマッチングイベントは国際映画祭などの場でも行われていますが、J-CREATIONはAmuse Group USAがオーガナイザーとして立つことで独自のものになっています。

日本のIPホルダーに協力を得て、Amuse Group USAがコンサルティングとして、どのIPがハリウッドおよびワールドワイドで受け入れられそうか、そのIPをどのようなプレゼンテーションに落とし込むとハリウッドにとって魅力的に映るか、といったマテリアル作りにも参加します。

ハリウッド側の参加者集めも、Amuse Group USAのハリウッドでのコネクションが存分に発揮されています。これまでに、ネットフリックス、アマゾン、Hulu、20世紀フォックス、ワーナー・ブラザーズ・エンターテインメント、ソニーピクチャーズ、トゥモロースタジオ、レジェンダリー・ピクチャーズ、バッド・ロボット(J.J.エイブラムスのプロダクション会社)、ヴァーティゴ・エンターテインメント(ロイ・リーのプロダクション会社)、ゴーストハウス・ピクチャーズ(サム・ライミのプロダクション会社)、アラッド・プロダクション(アヴィ・アラッドのプロダクション会社)、タレントエージェンシーのUTA、WME、APAなど、多数のハリウッドのスタジオエグゼクティブ、プロデューサー、エージェント、マネージャーなどが来場しました。

イベント当日はプレゼンテーション後の各商談にAmuse Group USAのスタッフも同席し、イベント以後も対日本・対ハリウッドのそれぞれフォローアップをきめ細やかに行っています。

そうしたAmuse Group USAのオーガナイズが功を奏し、数作品がハリウッドのスタジオ、プロダクションと交渉中および開発中であるほか、2016年にプレゼンテーションされた宝島社の「シャトゥーン」(増田俊也著)は脚本が完成し、監督候補・キャスティング候補のフェーズに企画開発が進んでいます。内容も英語劇としての製作を想定している為、公開やセールスに関しても世界市場を視野に入れたプランが検討されています。

お話を伺って、映像コンテンツの企画開発においてJ-CREATIONのような活動は非常に効率が良い仕組み化であると感じました。

画像1: イベント開催時の様子 ©Amuse Group USA

イベント開催時の様子 ©Amuse Group USA

画像2: イベント開催時の様子 ©Amuse Group USA

イベント開催時の様子 ©Amuse Group USA

画像3: イベント開催時の様子 ©Amuse Group USA

イベント開催時の様子 ©Amuse Group USA

今後のJ-CREATION

今後のJ-CREATIONに関して、現在の活動をしっかりと着実に前進させながら、いわゆる原作(漫画や小説といった、映画などのストーリーの元となるもの)をIPとして売り込むだけでなく、クリエイター、企業、テクノロジー、カルチャーなどIPを創り出す日本人や日本企業の活躍を応援できるようなプラットフォーム的存在になれればと朽網さんは語ります。

知的財産という言葉の定義から言うと既に創造された成果物を指すのが一般的な捉え方ではありますが、朽網さんの言うようにそれを生み出す人材もまた財産であると考えられます。
J-CREATIONをきっかけとして、近い将来により多くの日本のモノ(原作)やヒトがハリウッドを通じてコンテンツ化され、世界市場へ流通していく事を期待しています。

近況と次回予告

この連載を読んだという、ロサンゼルス留学中で映画を勉強している日本人の方から、Facebookを通じて連絡があって先日お会いしてきました。まさかこの連載からこういう広がりが生まれるとは想定しておらず、嬉しい出来事でした。Facebook内でArihiro Wadaと検索して頂くと私おりますので、何かありましたらお気軽にご連絡下さい。
次回のネタは現在リサーチ中ですが、またテック系の記事も近々書こうかと思っています。

和田有啓
1983年神奈川県横浜市生まれ。
スポーツ取材の会社からキャリアをスタートさせ、芸能プロダクション、広告会社、コンテンツ製作会社を経て現在フリーでアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスに滞在中。
プロデューサーとして参加した⾃主制作映画「くらげくん」の第32回ぴあフィルムフェスティバル準グランプリ受賞をきっかけに、2010年にUNIJAPAN HUMAN RESOURSES DEVELOPMENT PROJECT、2011年に JAPAN国際コンテンツフェスティバル/コ・フェスタPAOにプロデューサーとして参加して各プロジェクトの短編映画を制作。
近年は映画「たまこちゃんとコックボー」「天才バカヴォン〜蘇るフランダースの⽝〜」「⼥⼦⾼」「サブイボマスク」「古都」「はらはらなのか。」「笑う招き猫」などの作品で製作委員会の組成やプロデュース、配給、宣伝などを行い、インディペンデント映画業界でのキャリアを築く。

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