僕たちはただ、生きるために音楽を聴いた。
映画『サラバ静寂』
企画・脚本・監督の宇賀那健一にインタビュー!!
「シーンの終わりでカットを止めたくない。そのあと、何か生まれるかもしれないから。」

いま大注目の若手俳優、吉村界人が主演を務め、モデルで映画初出演のSUMIREと映画や舞台で活躍中の若手実力派俳優の若葉竜也を迎え、映画『黒い暴動♥︎』の宇賀那健一監督による、娯楽が失われた世界を描いた、現代社会へ送る静かなるノイズ映画『サラバ静寂』が誕生した。

画像1: 映画『サラバ静寂』企画・脚本・監督の宇賀那健一にインタビュー!「シーンの終わりでカットを止めたくない。そのあと、何か生まれるかもしれないから。」

■ストーリー
「遊楽法」という音楽や映画、小説などの娯楽が禁止される法律が施行された日本。ネジ工場で働くだけのつまらない生活を送っていたミズト(吉村界人)とトキオ(若葉竜也)はある日、偶然根絶されたはずの音楽が沢山保存されている廃墟を見つけてしまう。廃墟に通いつめ、どんどん音楽に魅了されていく2人は、未だに闇ライブが行われているという「サノバノイズ」の存在を知り、そこへいくことを夢見て一緒に音楽を作りだすのだが、音楽を心から憎んでいる杉村(斎藤工)率いる警察、そして、音楽を所持している罪で父親を殺されたヒカリ(SUMIRE)も2人のいる廃墟へと歩みを向けていた…。

今回は、本作の企画・脚本・監督を務めた宇賀那健一に俳優、映画『サラバ静寂』について話を聞いた。

――それでは、今回の作品『サラバ静寂』について伺います。
今回は『音楽が禁止された世界』ですが、その作品を作ろうと思ったきっかけは?
宇賀那:『黒い暴動♥︎』では、ギャルである意味はないけどギャルがやりたい。今回も、禁止されているけど音楽を聴きたい、やりたい。その無駄なものに価値を見出す力に魅力を感じるんです。無駄なことをやるのは、人間ぐらいですよね。何かその部分を描けないかな?と思っていた時に、ちょうど風営法の改正があり、そのタイミングで、音楽が今後どうなっていくのかな?と。自分も音楽が大好きで、無駄なものに対して、なにかをやり続ける人のパワーを描きたいという思いがスタート地点です。

――本作では、脚本も書かれていますが、その思いやエピソードなどは?
宇賀那:SFという設定がとにかく大変でした。音楽がない世界の話だけど、じゃあ、他に音楽以外があっても良いのか?と考えて。作品の中では、音楽以外に映画なども禁止されている設定で、フォーカスをしているのは音楽ですけど「そのロケ地って、どこだろう?」って考えたり。何もない場所であれば良いのか?空き地か?住宅街か?昔はあったけど、今はない場所という混在とした感じが説明できなくて……。

画像: 宇賀那健一監督

宇賀那健一監督

――過去の映像として、ミュージシャンが登場するシーンが多かったですよね。元スターリンの遠藤ミチロウさんや非常階段など、また本編には元アナーキーの仲野茂さんが出演されたり、80年代の音楽シーンのバンドが多かったようですが……。
宇賀那:単純にその時代の音楽が好きだったんです。町田町蔵さんのINUだったり、スターリン、アナーキー、灰野敬二さんなど。

――実際に、放送禁止になったりとか、音楽に圧力が掛かった時代の人たち。
宇賀那:そうですよね。やっぱり、権力に立ち向かう音楽が武器だった時代というか、本作の内容にあった時代です。そういう時代の意思をもって音楽をやっていた方々に、たくさん参加していただきました。

――80年代の音楽を知ったきっかけは?
宇賀那:一番最初は、なんだろうなあ?スターリンは、映画※『爆裂都市 BURST CITY』ですね。それが始まりです。先日、遠藤ミチロウさんのライブに行きましたけど、今でも尖ってますね。

※『爆裂都市 BURST CITY』は、1982年に公開された日本のSFアクション映画。石井聰亙監督(現在名 石井 岳龍)の8作目の作品で、出演は陣内孝則、大江慎也、戸井十月、町田町蔵、泉谷しげるなどが出演し、当時のカルチャーを引っ張る文化人や音楽シーンを賑わせていたパンク・ロック、ニューウェーブのミュージシャンが多数出演している。その中で悪役バンドとしてザ・スターリンが抜擢されている

――当時の音楽には、反骨精神がありました。
宇賀那:そうですね。ですから、大貫憲章さん、灰野敬二さん、仲野茂さんは、僕が直接お会いして、いろいろと思いを伝え出演をお願いしました。
灰野さんは、まったく面識がなかったので、ホームページのお問い合わせフォームからメールを送りました。何度もライブに行ってることを伝えました。その後、川越のカフェで会っていただけることになって。その時はとても緊張しましたよっ!3時間も前に着いて、場所取りしてました。
灰野さんは、ソイラテを飲まれていて、それをポンって目の前に置かれて「宇賀那君、これを飲んでみてくれ。これを飲んでどう思うかが、君と僕との最初の共通項だ」って。「うわぁ、スゲーこときた!!」と。ゆっくり考えながらソイラテを飲んで「どう答えようかな?」と思うわけです。カッコつけても、たぶんバレるなと思って「甘いですね」って答えました。そうしたら「僕も、そう思った」と。そこから話が盛り上がって、出演していただけることになりました。映像を含めて出演していただいたミュージシャンは、僕の憧れの人たちです。

――それでは、出演者についてお聞かせください。吉村界人さんは、いかがでしたか?
宇賀那:界人君は『黒い暴動♥︎』を撮り終わったころから「一緒に何かやろう!」と言われていて、そこからこの作品の企画がスタートしました。当時、彼はヤンキーっぽい役が多くて『獣道』や『セトウツミ』だったり。この作品では、そうじゃない吉村界人を写したいなと思い、前半は寡黙な少年という感じになりました。彼は長く回したほうが良さが出るタイプです。本能に任せた芝居が彼を活かせるので、撮影方法も含めて、そういうところを意識して撮りました。

――最初から彼と作ろうということが始まりなんですね。
宇賀那:そうです。彼はカルチャーの権化みたいなヤツなんです。彼自身、ラップもやっていて、凄く音楽の匂いがするんです。ファッション誌にも登場したり、カルチャーを体現してる人間に、カルチャーに触れてなにかに向き合っていくこの物語の主人公として、説得力が出せるんじゃないかと思いました。

――今回は、全体的に主役であってもサポート的な役ですよね?
宇賀那:彼はシーンを常に引っ張っていく役どころが多いと思うんです。どの作品を観てもそう感じるんです。だから今回は、そうではない吉村界人を写したいという思いもあったので、若葉君・SUMIREさんが引っ張って、彼をサポート的な役の設定にしました。だから、彼自身も演技には相当悩んでいたし、現場ではなにが正解かということを常に自問自答していました。その結果、良い演技に繋がったと思います。

画像2: 映画『サラバ静寂』企画・脚本・監督の宇賀那健一にインタビュー!「シーンの終わりでカットを止めたくない。そのあと、何か生まれるかもしれないから。」

――吉村さんのシーンで特に印象的だったのは長回しの箇所でした。
宇賀那:そうですね。役者から監督になった人の特徴かもしれないですけど、シーンの終わりでカットを止めたくないんです。そのあと、何か生まれるかもしれないから。あと、吉村界人の芝居がそういうほうが良いと思ったんです。同じことを、何回も決め込んでやらせるより、自由にやらせたほうが良い役者だなと。そこの良さを引き出したかったので、長く使っています。あ、でも、界人は「トラウマだ」って言っていました。カットを、いつまでも止めないから。いつまで芝居して良いのか分からないと。

――上映時間が少し短いと思いましたが、脚本の段階からでしょうか?
宇賀那:そうですね。基本90分以内に収めたいので、前作の『黒い暴動』も75分です。理想はピクサーなんです。15分で、何か1つのターニングポイントがある映画作りをしたいです。ただ、『黒い暴動』も過去と未来を作ったので複雑になったし、今回も複雑な構造にしたので、毎回うまくいかないのです。いつかはヘブンズストーリーみたいなのも撮りたいですけどもね。

画像3: 映画『サラバ静寂』企画・脚本・監督の宇賀那健一にインタビュー!「シーンの終わりでカットを止めたくない。そのあと、何か生まれるかもしれないから。」

――それでは最後に、作品についてメッセージをお願いします。
宇賀那:音楽が題材の作品ですが、音楽だけの話ではなく、なにか自分の好きなことが抑圧された世界というものは誰でも当てはまることだと思うんです。そういったなにか好きなものがある人に観ていただきたい作品です。是非、劇場にお越しください。

(インタビュー:谷健二・尾崎康元 撮影:尾崎康元)

宇賀那健一監督『サラバ静寂』メイキング特報

画像: 吉村界人主演・宇賀那健一監督『サラバ静寂』メイキング特報 youtu.be

吉村界人主演・宇賀那健一監督『サラバ静寂』メイキング特報

youtu.be

企画・脚本・監督:宇賀那健一

出演:
吉村界人・SUMIRE・若葉竜也・森本のぶ / 斎藤工
内木英二・川連廣明・泊帝・美館智範・カトウシンスケ・影山祐子・髙木直子・田山由起・細川佳央
杉山拓也・仲上満・古澤光徳・伏見狸一・南久松真奈・高橋美津子・ミヤザキタケル・ヒス・ソニー

出演アーティスト:
大貫憲章 仲野茂 ASSFORT GOMESS 切腹ピストルズ 今村怜央 / 灰野敬二
渡辺俊美(ZOOT16・TOKYO NO.1 SOULSET)&三星幸紘・COLORED RICE MEN・GOMA・始発待ちアンダーグラウンド
リンダ&マーヤ・羊文学・SMASH YOUR FACE・INU(町田町蔵)・かせきさいだぁ・オキシドーターズ×遠藤ミチロウ
Trinite・桑名六道(ex.LIP CREAM)・仮面女子・藤井悟・笹口騒音オーケストラ・ばちかぶり(田口トモロヲ)
Compact Club・Yuji Rerure Kawaguchi・ランキンタクシー・輪入道・jan and naomi・QP-CRAZY(殺害塩化ビニール)
忘れらんねえよ・U-zhaan・山川冬樹・WRENCH・FORWARD・非常階段・ギターウルフ・チバ大三

©映画『サラバ静寂』製作委員会

公開:018年1月27日(土)より、渋谷ユーロスペース他、順次全国公開予定

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