ウォルト・ディズニー・カンパニーへ

私もアメリカへ来て3ヶ月が過ぎ、これまで色々な方にお会いする機会がありました。
今回は、ウォルト・ディズニー・カンパニーでデベロップメントマネージャーとしてディズニー・チャンネルやWEBで放送・配信するアニメーションのプロデュースをしている小原康平さんにお話を聞きに行ってきました。

日本でアニメプロデューサーとしてキャリアを積んだ後、アメリカへ渡りフィルムスクール留学、卒業後そのままアメリカに留まりディズニー本社へ就職された小原さん。その過程やディズニーでのお仕事の事などを紹介させて頂きます。

東映アニメーションからAFI Conservatoryへ

小原さんは大学卒業後、アニメ制作会社大手の東映アニメーションに入社。
企画部に在籍し、TVアニメ「ワンピース」のプロデューサー補などを経てTVアニメ「出ましたっ!パワパフガールズZ」でプロデューサーデビューを果たします。他にも劇場用アニメ「劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」やTVアニメ「ドラゴンボール改」などのプロデューサーとして活躍しました。

2010年に東映アニメーションを退社し、アメリカのAFI Conservatoryへ留学してMFAを取得しました。AFIはAmerican Film Institute の略で、映画に関するアメリカの国家的な機関であり、プロデュース・監督・脚本・撮影監督・編集・美術の6つの学科でプロフェッショナルな教育が行われています。MFAはMasters of Fine Artsの略で、日本語で言うところの美術学修士です。

アメリカのフィルムスクールについてはまた別の記事で改めて紹介しようと思います。ちなみにAFIに関しては、以前東洋経済ONLINEで連載されていた木野下有市氏によるAFIでの研修記がありますので、そちらのリンクを紹介させて頂きます。

アメリカのフィルムスクールを卒業して

2012年にAFIを卒業した小原さんですが、卒業後2年以上の期間、不遇の時代を過ごします。ハリウッドの映像関係の企業に就職するには至らず、無給のインターンで映画プロデューサーのアシスタントをしたり、フリーランスで翻訳やCMコーディネートの仕事をしていたそうです。

小原さんいわくハリウッドはとにかくコネクションありき。企業に仕事のニーズができた際、知り合いや紹介などで適した人材を内々に探し始め、WEBサイトなどで対外的に求人情報が出る頃には既に候補が絞られている段階の事がほとんどだそうです。

ディズニーの世界へ

小原さんもハリウッドでのコネクションを積極的に広げていました。インターン先の社長からの紹介の紹介でディズニーの方と知り合い、半年に一度位のペースでお茶をする関係を続けていたところ、2年程経った時に新しいポストのオファーがきたそうです。

2015年、無事にウォルト・ディズニー・カンパニーへの就職を果たした小原さんは、ディズニー・チャンネルやWEBで放送・配信するアニメーションのプロデュース業に従事しています。現在は大小あわせて15本程の企画を進行していて、そのうちの2本は製作が決定してプリプロダクション中だそうです。プリプロダクションとは、脚本制作やスタッフィングなど制作の前半段階の事を指します。

ファーストフードデベロップメント

ディズニーデジタルネットワークという小原さんの在籍する部門には、小原さん含めて5人のプロデューサーがいます。そこでの一日は朝の企画ブレスト会議から始まります。

各自それぞれの企画の開発や進行もありながら、プロデューサーは皆毎日新しい企画のアイディアを10~20個は考えているそうです。とにかく考えて考えて、そのスピード感から小原さんはそれをファーストフードデベロップメントと呼んでいます。

ディズニーでの企画開発の醍醐味として、環境がとてもクリエイティブだと小原さんは語ります。
優秀な人材が集まっているので、ちょっとした1つのアイディアが魅力的に膨らんでいくそうです。ディズニーは物語を伝える理論に関しての造詣が皆深く、ユニバーサルにその物語が受け入れられるにはどうすべきかという考え方が定着しているとの事。

小原さんのプロデュース作品の紹介

小原さんが携わった作品のいくつかはWEBで視聴できますので紹介させて頂きます。
そのどれもがディズニーの哲学が息づく素敵なものです。

画像: Whisker Haven Tales - The Cookie Boogie - Official Disney Junior UK HD youtu.be

Whisker Haven Tales - The Cookie Boogie - Official Disney Junior UK HD

youtu.be
画像: Disney's Star Darlings | The Power of Twelve : Part 3 | Disney youtu.be

Disney's Star Darlings | The Power of Twelve : Part 3 | Disney

youtu.be

中にはマーベルのこんなものも…。こんなマッシュアップがあったとは知りませんでした。
Marvel Super Hero Mashers: “Loki Overload”

画像: Marvel Super Hero Mashers - 'Loki Overload' Official Digital Short - YouTube youtu.be

Marvel Super Hero Mashers - 'Loki Overload' Official Digital Short - YouTube

youtu.be

これからのディズニー

今回の訪問で、ディズニーのコンテンツ企業としての巨大さ、クリエイションを全ての中心として考える充実の職場環境、ユニバーサルな物語を紡ぐものづくりの哲学を感じる事ができて、とても刺激を受けました。

写真で紹介する事ができず読者の方には拙い言葉で伝えるしかないのですが、インタビュー場所だったウォルト・ディズニー・カンパニーのGrand Central Creative Campusという場所はさながら大学のような作りでとても広大で、各クリエイターの作業スペースは広くて快適、オフィス内の随所に飾られているスケッチやトイなど、ディズニー好きなら発狂しかねない程素敵な場所でした。

ディズニーは昨年、2018年のNetflixとの契約終了後に自社ブランドでの動画配信サービスを立ち上げる計画を明らかにし、さらには21世紀フォックスの主要事業の買収を発表するなど、益々その事業を拡大しています。小原さんもその中で、より大きな規模の作品を手掛ける事を目指しているそうです。

一視聴者としてこれからのディズニー作品も楽しみにしたいと思います。
ちなみに小原さんの好きなディズニー作品は、最近のものだと「ズートピア」、昔は「マイティ・ダックス」シリーズを好んで観ていたそうです。

次回予告

そもそもこの連載のタイトルである”探訪記”とは、字の通り探して訪れて記す事ですので、今回のように映画プロデューサー目線でハリウッドの面白い場所や人を訪ねて書いていくスタイルが取れればと思っています。また次回も見て頂けたら幸いです。

和田有啓
1983年神奈川県横浜市生まれ。
スポーツ取材の会社からキャリアをスタートさせ、芸能プロダクション、広告会社、コンテンツ製作会社を経て現在フリーでアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスに滞在中。
プロデューサーとして参加した⾃主制作映画「くらげくん」の第32回ぴあフィルムフェスティバル準グランプリ受賞をきっかけに、2010年にUNIJAPAN HUMAN RESOURSES DEVELOPMENT PROJECT、2011年に JAPAN国際コンテンツフェスティバル/コ・フェスタPAOにプロデューサーとして参加して各プロジェクトの短編映画を制作。
近年は映画「たまこちゃんとコックボー」「天才バカヴォン〜蘇るフランダースの⽝〜」「⼥⼦⾼」「サブイボマスク」「古都」「はらはらなのか。」「笑う招き猫」などの作品で製作委員会の組成やプロデュース、配給、宣伝などを行い、インディペンデント映画業界でのキャリアを築く。

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