『ホペイロの憂鬱』は井上尚登の『ホペイロの憂鬱 JFL篇』(東京創元社)の映画化で、神奈川県相模原市をホームタウンとするサッカークラブ・ビッグカイト相模原のホペイロ坂上を主人公にしたほのぼのスポーツ・コメディに仕上がっている。
ホペイロとはポルトガル語で、選手のスパイク、ボール、ユニフォームなどを管理する用具係のことだが、ビッグカイトはJ2の下のJFLに所属する弱小貧乏チームなので、坂上は雑用をすべて押し付けられて大忙しの日々を送っている。

画像1: (C)2017「ホペイロの憂鬱」製作委員会/フィルム・クラフト

(C)2017「ホペイロの憂鬱」製作委員会/フィルム・クラフト

 映画は原作に収録されている六話の中から「カンガルーの右足」「盗まれポスター」「行方不明ベア」の三話を取り上げて、長編にしてある。
所属リーグが2014年に発足したJ3に変えられているほか、登場人物に多少のアレンジを加えてあるものの、原作のエッセンスは残されており、巧みな脚色といえるだろう。
チームの大黒柱であるフォワード選手ヤマケンのスパイクはまだ使えるのになぜ取り替えなくてはならないのか、チームのポスターがなぜ何度も盗まれるのか、監督の大事なクマのぬいぐるみはなぜ消えたのか。坂上にはそんな他愛のない謎を解きあかす探偵の才能もある。社長は社長でスポンサーのご機嫌をうかがってぺこぺこし、悲願のJ2に昇格しなければ経費削減のために首にすると宣告。
なのに、昇格のかかった試合に勝てばチームは身売りして社長以下スタッフは首になるかもしれない。勝っても負けても地獄というトホホの状況に陥ってしまう。

画像2: (C)2017「ホペイロの憂鬱」製作委員会/フィルム・クラフト

(C)2017「ホペイロの憂鬱」製作委員会/フィルム・クラフト

 坂上に白石隼也、ホペイロをこき使う広報係鬼塚に水川あざみ、ゲン担ぎの監督に佐野史郎、ヤマケンに永井大、社長には強面専門の感がある菅田俊が扮している。監督は大阪芸大出身の加治屋彰人、脚本は佐向大、サトウタツオ、加治屋彰人、高橋雄弥が共同執筆している。

画像3: (C)2017「ホペイロの憂鬱」製作委員会/フィルム・クラフト

(C)2017「ホペイロの憂鬱」製作委員会/フィルム・クラフト

 原作者は相模原市在住ということで、小説にも相模原のことがいろいろ言及されており、同じ相模原市在住である私もうんうんとうなずきながら読んだものだった。チームの応援歌にも「相撲じゃないよ、相模だよ」とあり、これまでさんざん揶揄されてきた相撲ギャグ、隣の都市町田への対抗心が相模原市民の心をくすぐらずにはおかない。もちろん、相模原以外の観客も飽きずに楽しめる作品に仕上がっていることは保証する。
ちなみにビッグカイトとは架空のチーム名だが、原作にも書かれているように、5月に相模川河川敷で64坪という大凧をあげる相模原の名物行事に由来している。相模原をホームとする本物は相模原FCでJ3所属。2017年は全17チーム中12位だった。
 地元のMOVIX橋本では1月6日から先行公開されており、一般公開は13日から角川シネマ新宿、小田原コロナシネマワールドで始まり、以後各地で順次公開される。
なお井上は『幸せの萌黄色フラッグ』『ブンデスの星、ふたたび』と書き続けており、チームもJ3からJ2、J1へ昇格しており、坂上の首もつながっている。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

「ホペイロの憂鬱」予告篇

画像: 映画「ホペイロの憂鬱」予告篇 youtu.be

映画「ホペイロの憂鬱」予告篇

youtu.be

角川シネマ新宿、小田原コロナシネマワールドなどで絶賛上映中!

This article is a sponsored article by
''.