夏もそろそろ終盤に差し掛かりましたが、まだまだ暑さ厳しい日々が続いております。
今回はそんな残暑も吹き飛ばす「怖い絵」展をご紹介いたします。

兵庫県立美術館において2017年7月22日(土)~9月18日(月・祝)まで「怖い絵」展が開催中です。また、東京では、上野の森美術館において、10月7日(土)~12月17日(日)開催予定です。
「怖さは想像の友です。想像によって怖さは生まれ、恐怖によって創造は羽ばたく。」(中野京子)
ドイツ文学者・中野京子氏が執筆された「怖い絵」は、恐怖をキーワードに西洋美術史に登場する様々な名画を読み解く好著として大反響を呼びましたが、今回「怖い絵」第1巻が刊行されてから、10周年を記念して、本展が開催される運びとなりました。

中野京子氏監修のもと、「怖い絵」シリーズで取り上げられた絵画を筆頭に、中世から近代にかけてヨーロッパ各国で描かれた絵画の中から「恐怖」を主題とする油彩画と版画の傑作が選ばれ、神話、怪物、異界、現実、風景、歴史といったキーワードに沿って、展示されています。
視覚的に直接怖さが伝わるものから、歴史的背景やシチュエーションを知ることによって、
初めて怖さが発生するものまで、美術、芸術の「美」に匹敵する「恐怖」の魅力を、是非この機会にお見逃しなく、ご堪能ください。
それでは、今からいくつかの作品をご紹介いたします。
さあ、恐怖の扉の向こうに「怖い絵」の魅惑の世界が待っています。

神話と聖書

画像: ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館 © Image courtesy of Gallery Oldham

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館 © Image courtesy of Gallery Oldham

ラファエル前派に影響を受け、華やかで美しい女性像で知られるヴィクトリア朝の画家、ウォーターハウスは、ホメロスの奇想に満ちたエピソードやキャラクターを度々取り上げました。

本作で取り上げられているのは、『オデュッセイア』第10歌で、アイアイエー島の女王キルケ―と、運悪くこの島に漂着したオデュッセウスが対面する場面です。
キルケ―は人間をライオンや狼などの動物に変えてしまう美しい魔女なのです。
薄衣をまとい、玉座に座って、右手の杯を高々と掲げる傲慢な態度で描かれています。
挑発的に顎を反らせ、左手に持った魔法の杖で、男たちを動物に変えようとしているのです。オデュッセウスの部下たちはもう犠牲となって、魔法にかけられたのか、キルケ―の足元には、横たわる豚が見えます。
キルケ―の後ろの大鏡の片隅にオデュッセウスの姿も描かれています。
玉座に刻まれたライオンの彫刻は残忍な捕食者として、キルケ―を比喩的に表現しているのでしょう。
獲物を前に勝利を確信した女の傲慢な魅力が描かれています。
ですが、物語では、オデュッセウスは、ヘルメスからもらった解毒剤で、魔酒から身を守り、剣でキルケ―を脅かし、仲間をもとの姿に戻させました。さらに、オデュッセウスは、キルケ―から、セイレーンという海の魔女から身を守る対処法をも授けられたのでした。

悪魔、地獄、怪物

《彼女》 ギュスターヴ=アドルフ・モッサ
                    (web上で画像配信できません。申し訳ございません)
 

モッサは父がニース美術館館長を務めていたので、豊かな芸術教育を受け、アールヌーヴォーの画家や、ギュスターヴ・モローなどの作品に接し、象徴主義の画家となることを決心していたのですが、本作が描かれた1905年頃からは怪奇的な世紀末絵画を描きました。
本作は、「マン・イーター」男を喰う女です。
なんというグロテスクな絵画でしょう。女性の下には、累々と横たわる人々の山があります。ところどころに滴る血。人間の山に横座りする彼女の腰のあたり、腕と腕の間に猫が顔をのぞかせています。不吉な指輪、首飾りには、剣や拳銃、棍棒が付いています。
頭には3つの髑髏と2羽の鴉がいます。
頭上には、「これが私の命令だ。私の意志は理性にとってかわる」というラテン語の語句。
これは、1―2世紀のローマ風刺詩人ユウェナリスによるものです。
彼女は光背のような金色の円を背負い、まっすぐにこちらを見ています。
暗雲の立ち込める空、すべてが不吉な絵画ですが、彼女の人形めいた顔と幼児体型からか、コミカルな雰囲気も感じられます。
《飽食のセイレーン》もまた、本作と同様、「恐怖の美」を描いています。
モッサは、父の死後はニース美術館のキュレーターとなり、ニースのカーニヴァルのポスターを毎年描きました。

異界と幻視

《そして妖精たちは服を持って逃げた》  チャールズ・シムズ
                   (web上で画像配信できません。申し訳ございません)
 

イギリスのヴィクトリア朝時代には、産業革命により急激な都市化や功利主義の反動で、超自然的なものへの憧れが高まりました。妖精や幽霊の存在を信じる者が増え、妖精がも黄金時代を迎えました。
草の上で日向ボっこしている母子。穏やかな光に満ちた平和な情景です。が、よく見ると不思議な出来事が進行中なのです。身長10センチほどの小人の群れが彼らの服を盗んで逃げようとしているのです。

現実

画像: ウィリアム・ホガース『ビール街とジン横丁』より《ジン横丁》1750-51年 エッチング、エングレーヴィング・紙 郡山市立美術館 © Koriyama City Museum of Art

ウィリアム・ホガース『ビール街とジン横丁』より《ジン横丁》1750-51年 エッチング、エングレーヴィング・紙 郡山市立美術館 © Koriyama City Museum of Art

18世紀半ばのロンドン。大人ばかりでなく子どもまでもが安酒ジンを飲んでいました。
荒んだ街の風景、地獄さながらの様相が繰り広げられています。
中央の会談に腰かけた酔いどれのヒロインは、子持ちの娼婦です。
素足に梅毒の腫物、嗅ぎたばこをつまもうとして、授乳中の我が子が転落死しそうなことに気が付きません。
そばには前後不覚に酔いしれた元兵士がいます。
ボガーズは、この作品と対比して、《ビール街》も描いています。
ビールを飲んで人生を謳歌する職人たちと、安酒ジンを飲んで、死に至る貧民の悲惨さを描いています。

崇高の風景

画像: ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ドルバダーン城》1800年 油彩・カンヴァス ロイヤル・アカデミー © Royal Academy of Arts, London; Photographer: Prudence Cuming Associates Limited

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ドルバダーン城》1800年 油彩・カンヴァス ロイヤル・アカデミー © Royal Academy of Arts, London; Photographer: Prudence Cuming Associates Limited

日本で、古いお寺や枯山水の美があるように、外国の廃墟にも退廃的な美しさがあるのでしょう。ヨーロッパでは風景画の誕生が遅く、それまでにない新しい発見でした。
廃墟には過去の栄光や、崇高、そして恐怖とも結びつく美がありました。
本作のドルバダーン城はウェールズ北西部のスノードン山麓スランベリス湖畔に建つ古城。
荒涼とした景観には退廃的な美学があり、18世紀のイギリスの画家たちにとって「絵になる景色を探す旅」の格好の目的地となっていました。
ターナーもこの景色に魅せられ、作品を描き、出品時に、自作の詩をつけました。
「荒れ果てた静けさの恐ろしさよ、
そこは自然の力が山々を空へと隆起させる場所。
荘厳なる孤独の塔を見よ。
そこは絶望したオーウェンが長く囚われ
自由を求めて空しく両手を握りしめた場所。」
                (引用文 「怖い絵」展 図録 岡本 弘毅 兵庫県立美術館)

歴史

画像: ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》 1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey,  © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》 1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

この作品は、16世紀半ば、イングランド初の女王となりながらも9日間しか王座に就くことが出来なかった悲劇の女王ジェーン・グレイを描いたものです。
歴史的事実ですが、演劇のワンシーンのように描かれ、まるで舞台を見ているようです。
画面中央には、処刑直前のジェーン・グレイ。目隠しをされ、白いドレスを着ています。

16歳の元女王は司祭に導かれ、真新しい結婚指輪をはめた手で、首置台を手探りで探しているのです。右側には、派手な色のタイツをはいた死刑執行人が大きな斧を携えています。左側には2人の侍女が描かれています。1人は、女主人が直前まで身に着けていたマントや宝石類を膝に置き、茫然と座り込み、またもう1人は、円柱にすがって、悲しんでいるようです。
ジェーン・グレイが敷いているのは、腹這いになって首を差し出すためのクッションです。
下に敷かれた藁は飛び散った血を吸わせるための物のでしょう。
あまりに残虐なシーン。16歳の悲劇の王女の儚い運命。散りゆく白い花のようです。
          (参考文献 「怖い絵」展 図録 産経新聞社)
           (参考文献 「怖い絵のひみつ」中野京子 KADOKAWA)

みなさま、いかがでしたでしょうか?
是非、この夏、美術館で恐怖の体験をしてみてください。

展覧会概要

会期:2017年7月22日(土)~9月18日(月・祝) ※月曜休館(9月18日は開館)
 
開館時間:午前10時~午後6時 (金・土曜日は夜間開館、午後8時まで)※入場は閉館の30分前まで 
料金:   当日券  20名以上の団体割引料金
一般   1,400円   1,200円
大学生  1,000円  800円
高校生以下 無料
 
主催:兵庫県立美術館、産経新聞社、関西テレビ放送、神戸新聞社
 
後援:公益財団法人 伊藤文化財団、兵庫県、兵庫県教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会、ラジオ大阪、サンケイリビング新聞社、サンケイスポーツ、夕刊フジ、サンテレビジョン、ラジオ関西
 
協賛:日本写真印刷、TKG Foundation of Arts & Culture
 
協力:日本航空、KADOKAWA、NHK出版
 
企画協力:アルティス、Art Sanjo、FCI
 
特別監修:中野京子(作家、ドイツ文学者)
 
交通案内:
・阪神岩屋駅(兵庫県立美術館前)から南に徒歩約8分
・JR神戸線灘駅南口から南に約10分
・阪急王子公園駅西口から南西に徒歩約20分
・JR三ノ宮駅南から神戸市バス(29、101系統)阪神バスにて約15分、HAT神戸方面行き「県立美術館前」下車すぐ
・地下駐車場(乗用車80台収容・有料)
※ご来館はなるべく電車・バスをご利用ください。
※団体バスでお越しの場合は、バス待機所の予約をお願いします。

怖い絵 展@神戸 cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、怖い絵 展@神戸 cinefilチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2017年9月10日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
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8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
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   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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