今週「カレイド シアター」が上映するのは、待ってました!の「スターウォーズ」サーガ、番外編「ローグワン スターウォーズストーリー」と「エルストリー1976」という『スターウォーズ』関連作二本。今週はたっぷりとスターウォーズ話にお付き合いくださいね。

まずは12/16から公開される『ローグワン  スターウォーズ ストーリー』。
スターウォーズの新シリーズエピソード7・8・9の公開の間に、サブストーリーというか番外編というかスピンオフというか、本筋にリンクした物語を描いて入れて行こうという「スターウォーズストーリー」の一本目です。

さて、今回の「ローグワン」は番外編、ということになります。アニメではクローンウォーズを取り上げた作品があり、登場人物だったイウォーク族を主人公にしたエンドアのシリーズもありましたが、考え方としてはその延長線上にあるものだと言っていいと思います。と、いうことは、つまり最初からルーカスの思い描いていたスターウォーズ世界には様々なサブストーリーがある、ま、日本で言うとガンダムシリーズみたいなものだったということですね。まぁ、ガンダム自体、スターウォーズがなかったら作られなかったお話だと思いますが。

そう。スターウォーズがすごいのは、様々な分野で世界を変えたところなんです。SF映画を変え、女性観を変え、興行システムを変え、マーチャンダイジングを変え、撮影方法や音響の方法だけでなく音響システムそのものを変え、コンピュータを変え、特殊メイクや特殊効果を変え、とうとう「映画はフィルムで作るもの」という映画の構造自体を変えてしまったのがスターウォーズなのです。

というわけで、今週はちょっとだけスターウォーズ学を学んでいただきましょう。
そもそも、先ほどの「スターウォーズのテーマ」 自体、一作目エピソード4が公開された時には「時代遅れ」と思われたものです。当時は若者向けの作品ではヒット曲を使ったり、映画の舞台になっている時代の流行歌を使ったりすることがブームになっていました。スターウォーズのジョン・ウィリアムスのように、交響曲がドドーンと響き渡るなんて、ダッサー、という感じでした。主題歌もなかったですしね。
けれど、叙事詩、サーガを描く映画にはやはり交響曲の壮大さが欲しいわけで、それをやってのけたのがスターウォーズだったわけです。新シリーズになってからは音楽の担当からジョン・ウィリアムスは外れましたが、彼のテーマ曲は外すわけにはさすがに行きません。納得しないもの。
ルーカスフィルムがディズニーに売られてしまったので、あの20世紀フォックスのファンファーレから始まるスターウォーズのオープニングは無くなってしまいましたが、それでも緑色に輝くルーカスフィルムのロゴがまずスクリーンに現れ、スターウォーズのファンファーレがかかると、あー、もうだめですねー。全て飛んじゃいます。気持ちは17歳の高校生に戻っちゃう(笑)。エピソード2と3のお披露目はカンヌでみたんですが、会場一体となってガキンチョになっちゃってましたもんね〜。少なくとも2階3階にいた、評論家ではない世界の映画関係者の若者たちは、ですが。

今回の「ローグワン」が描くのは、最初に公開されたEP4の直前につながる物語になります。
SWのオープニングに出てくる、「これまでのお話」の字幕。スクリーンの下から出てきてスクリーン中央の消失点にむかって消えていく、あの字幕ですね。今回の物語は、EP4のその字幕の一部で語られているエピソードを描くものです。

 つまり。「反乱軍のスパイは帝国の究極兵器に関する秘密の設計図を盗み出す」ってところです。このスパイが「ローグワン」。ローグというのは「ならず者」といったような意味なので、さしずめ「ならず者部隊一号」ってところでしょうか。

 アメリカの男性映画ファンはこういう「ならず者部隊」ってのが好きですね。「特攻大作戦」とか「アルマゲドン」とか、犯罪者とか囚人とか一匹狼的な肉体労働者など世の中のはぐれものの集団が、一つのミッションをやり遂げるために、最初は反目しながらも仲間になって命を懸けてミッションの成功のため敵に立ち向かう、って話。お利口さんじゃ、ダメってのが好き。
 今回もそのパターンを踏襲しているのだと思います。
 
 で、それでいて、今シリーズのスターウォーズらしく、中心になるのは女性なんです。
幼い時に父と別れ、一人でサバイバルしてきたジン・アーソという娘。生きるためなら、窃盗・暴行・文書偽造など何でもやってきたという彼女が、反乱軍の司令官にですスターの設計図を盗み出すというミッションを任されるのです。なぜかと言うと、その設計をしたのが彼女の行方不明になった父ではないかという疑いがあるからなんですね。といっても、こんな大きなミッションを一人でこなせるわけもないし、ま、犯罪者なのでお目付け役を付けないと心配、というわけで、反乱軍の情報将校キャシアンがついてくることになり、パイロットのボーディ、武器のエキスパートのべイズ、盲目の僧侶戦士チアルート、警備ドロイドのK-2SO、ゲリラのソウという7人組のローグ部隊が出来上がるわけですねー。やっぱり7人なんだ~(笑)

適役も新しい人が加わってて、オーソン・クレニックという白づくめの帝国軍高級将校。ダースベイダーが君臨している時代なのでもちろんベイダーも登場するようです。おなじみの白いよろいかぶとのストームトルーパーに加えて、オーソン直属のデス・トルーパーという黒い奴も出てきます。この雑兵軍団とるーぱーたちにもいろいろあるようで、戦う場所によってよろいかぶとの仕様が違い、今までは砂漠とか雪原だったけれど今回は海辺の戦いになるんだそうで、海向きのトルーパーなんてのも登場します。
 いやー、こういうところだけでわくわくしちゃう私は、やはりスターウォーズ世代なんだなぁ…。

監督は「ゴジラ」のギャレス・エドワーズ。オタクを自認するスターウォーズファンだそうで、どんなオマージュと新しさを持ち込んでくれるか、たのしみです。音楽もアレクサンドル・デスプラに変わり、本家スターウォーズとの違いとオマージュが、これまた楽しみです。

 キャストはヒロインにフェリシティ・ジョーンズ。『博士と彼女のセオリー』でホーキング博士の約三役を演じてアカデミー主演女優賞にノミネートされたので、そういう文芸ものやシリアスなドラマで行くのかなー、と思っていたら『インフェルノ』に出て、あら、アクションもやるわけねとなり、こんどは「ローグワン」。今の女優さんは何でもできなきゃダメなんですねー。
 仲間たちもユニークで、なんといっても私が注目したいのは二人の中国人キャスト。チアン・ウェンとドニー・イェン。カンフーマスターとして有名なドニー・イェンが演ずるのが盲目の僧侶にして戦士という役柄で、それはアナタ、座頭市でしょというきゃらくたーなんですねー。いやー、もー、わくわくする。

画像: 「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」MovieNEX予告 最高傑作編 youtu.be

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」MovieNEX予告 最高傑作編

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さて。ではここで、「スターウォーズ」ミニ講座。

『スターウォーズ』ep4新たなる希望 は1977年5月末にアメリカ公開されました。日本ではその一年後1977年の7月に公開されています。新たなる希望・帝国の逆襲・ジェダイの帰還(復讐)と続く第一シリーズでは、皇帝に使えるダースベイダー率いる帝国軍と反乱軍の戦いが描かれます。いきなり4章から始まることで、まずなんなんだと思った覚えがありますが、最初の頃は全9部作になるという話だったんですね。この三部作は、デススターを巡る戦いになっていて、その間に、ルークがジェダイの騎士として成長していく様子が描かれ、彼の出生の謎とベイダーとの関係がわかっていき、最後には勝利と和解の物語になっていったわけです。

それから22年。
ルーカスが94年にスピルバーグ監督の「ジュラシックパーク」のCGスーパーバイザーをつとめ、自分が思い描いていたSWの世界がやっと技術的に描写可能になったと思い、新シリーズの製作を決意。その前に、映像に手を加えた旧三部作を特別編として公開します。その前に音響をデジタル化したTHX版を作り、今度は映像をデジタル化したわけですね。

そして、1999年に新しい三部作が始まったわけです。三年に一本。
ファントム・メナス、クローンの攻撃、シスの復讐です。時代は旧三部作よりさかのぼり、後にダースベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの一代記が描かれます。子どもだったアナキンが、大人になり、ジェダイとなるも、ダークサイドに落ち、兄弟子であるオビワン・ケノビと闘い瀕死の重傷を負い、皇帝によってダースベイダーとして黄泉替えらされるところまでが描かれたわけです。その間、爛熟し腐敗した銀河共和国が崩壊し、クローン戦争がおき、共和国とジェダイは滅ぼされ、帝国が出来上がるという物語があるんですね。ひたすら、くらい…。ルーカスってペシミストなんですよねー。自分で監督すると、どうもそっちに行ってしまう。

というわけで、もうつくらないと宣言していたんですが、ルーカスフィルムをディズニーに売却するとともに、ディズニーの手によって新生スターウォーズシリーズ、EP7・8・9を作ると発表しました。それから2015年にEP7が公開されるまで、心配で仕方なかったもんです。どうなっちゃうのかしらって。

蓋を開けてみると、今度はEP6の終わりから30年後の話ってことで、帝国は滅びたものの、欲深いその残党たちがファーストオーダーという軍組織を作り、帝国の復活をもくろんでいるということになっていました。ダメじゃん、反乱軍。共和国、どうした。革命はならずか?! ま、それはアメリカ映画ですから、革命はよいことだよーとは描けないわけですね。というわけで、今はなきジェダイの騎士を復活させるべく、行方不明になったルークを探しだし、その手にライトセイバーを返す、ところまでが、EP7フォースの覚醒 でした。

1~3 ・4~6はそれぞれ三年に一本づつ作られていましたが、今回のシリーズはそんな悠長なことはやっていられません。時代のスピードが速くなっていますからね。
というわけで、三本の正史、つまりEP789のあいだに、サブストーリー、番外編を挟んでいくことになったのです。その一本目が「ローグワン」で、次のSWストーリーはハン・ソロの若かりし頃を描くことになっています。

さてさて。なんか、1977年から40年間、スターウォーズに振り回されちゃってる私ですね。まぁ、私くらいのファンはマニアの世界からすると可愛いもんですけどね。

 今年初めて日本でも開かれた「コミコン」コミック・コンベンションですが、日本伝統の「コミケ」コミック・マーケットとはちょっと違い、アメリカのコミコンにならったもので、映画との関係が深いんです。で、中でも日米合わせて人気なのがスターウォーズでして、コスプレイヤーはもちろんのこと、キャストの中には40年間これで食べている、それは大げさでも、少なくとも小遣い稼ぎしているという人たちがいるんです。 ということを教えてくれるのが『ローグワン』の翌日から公開されるドキュメンタリー『エルストリー1976』です。

1976年、イギリスのエルストリーという町にあるスタジオで、スターウォーズの撮影が行われたんです。カンティーナの酒場のシーンとか、セットを組んで室内で行われるシーンの撮影でした。そこに集められたほとんどエキストラ扱いの人たち、中には俳優もいたけれど、そうではない人も結構いたようです。彼らはいろんなコスチュームを着せられ、頭から着ぐるみをかぶせられ、メイクされ、たくさんのエイリアンに変身しました。画面のはじっこにちょっとだけ写っている人とか、ハン・ソロと絡んで殺されちゃうとか、通り過ぎるルークの後ろにちょっと写っているとか、そんな人たちが、今でも「私はスターウォーズに出ている」って胸を張るんですよ。中には自分の役のフィギュアがあって、それを自慢にしている人もいる。
そういう人たちがコミコンとか、スターウォーズセレブレーションというファンの集いとかに行って、サインをする。それだけで一枚1500円くらいのもうけになるんですって。スターウォーズが彼らの人生を変えたんです。

1976年当時は、まさかこんなことになるとは、出ていた本人たちも、作っていたルーカスたちも、誰も思わなかった。でも、ファンにとっては、意味があることなんですね。
ずっと、スターウォーズの世界に触れているために。そして、そんなことが始まったのもスターウォーズから、なんです。
スターウォーズはいろいろなことを変えました。それが、アメリカン・ニューシネマの時代に決定的に終止符を打つことになり、「ニュー・ハリウッド」「イベント映画」の時代を生んだんです。それが、今も続いているんですね。
しかも、世界的に。というわけでここで、おおっと、なんと、時間になってしまいました。

画像: エルストリー1976 予告編 youtu.be

エルストリー1976 予告編

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