今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。

この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!

この映画祭の魅力をお伝えします。

2016年 第69回カンヌ国際映画祭を振り返るー 【CANNES 2016】9



快晴となった15日(日)。本日“コンペティション”部門で正式上映されたのは、フランスのニコール・ガルシア監督の『フロム・ザ・ランド・オブ・ザ・ムーン』とイギリスのアンドレア・アーノルド監督の『アメリカン・ハニー』。
招待部門では人気スターのラッセル・クロウとライアン・ゴズリングの共演が大きな話題を集めるアメリカのシェーン・ブラック監督のアクション・コメディ『ザ・ナイス・ガイズ』とカリム・ドリディ監督作を上映。“ある視点”部門には2作品が登場した。

フランスの人気俳優を起用し、ミレーナ・アグスの同名小説を映画化した才媛ニコール・ガルシア!

フランスのベテラン女優にして脚本家&監督としても活躍する才媛ニコール・ガルシアの3度目のコンペ参戦作『フロム・ザ・ランド・オブ・ザ・ムーン』(フランス語題名=石の痛み)は、イタリア人女性作家ミレーナ・アグスの同名小説(邦訳『祖母の手帖』)を翻案した禁断の愛の物語だ。

1950年代の南仏。感受性が人一倍強く、情熱的な愛に憧れるガブリエル(マリオン・コティヤール)は、その直裁な物言いのために周囲から浮きまくっていたが、農業を営む両親にスペインから来た季節労働者(アレックス・ブレンデミュール)との愛のない結婚をさせられてしまう。やがて彼女は“石の痛み(結石)”の治療に行った保養先でインドシナからの帰還兵アンドレ(ルイ・ガレル)と激しい恋に落ち、逃避行に出て希望を取り戻すが……。

画像: 『フロム・ザ・ランド・オブ・ザ・ムーン』の記者会見:右端がニコール・ガルシア監督 Photo by Yoko KIKKA

『フロム・ザ・ランド・オブ・ザ・ムーン』の記者会見:右端がニコール・ガルシア監督 Photo by Yoko KIKKA

マリオン・コティヤール Photo by Yoko KIKKA

ルイ・ガレル Photo by Yoko KIKKA

朝の8時半からの上映に続き、11時から行われた本作の公式記者会見にはニコール・ガルシア監督(共同で脚本も担当)とプロデューサー2名、そして主演俳優の3人、マリオン・コティヤール、アレックス・ブレンデミュール、ルイ・ガレルが登壇。
ニコール・ガルシア監督は会見の席で、“ボヴァリー夫人”を引き合いに出し、本作について「プリミティブな映画にしたかった」とコメントした。

『アメリカン・ハニー』はアメリカンドリームを求める若者の実像を英国人の視点でリアルに捉えた異色作!

2006年の『レッド・ロード』と2009年の『フィッシュ・タンク』で2度、審査員賞に輝いた英国の俊英監督アンドレア・アーノルドが、ニューヨーク・タイムズ”の記事にインスパイアされ、初めてアメリカを舞台にして撮影したのが『アメリカン・ハニー』だ。

問題を抱えた家を飛び出した少女スター(サシャ・レーン)は、雑誌の予約購読セールスを行いながら旅をするハミ出し者揃いの若者グループに加わる。一行と寝食を共にし、パーティ三昧&違法行為スレスレの行為を重ねていったスターは、やがて、彼女を旅に誘った青年ジェイク(シャイア・ラブーフ)と恋に落ちるが……。
ヒロイン役のサシャ・レーンを始め、殆どの出演者は現地でスカウトした素人のティーンエイジャーで、有名俳優はシャイア・ラブーフぐらいという本作は、アメリカンドリームを求める若者の実像を英国人の視点でリアルに捉えたロードムービーの快作だ。  

画像: 『アメリカン・ハニー』の記者会見 Photo by Yoko KIKKA

『アメリカン・ハニー』の記者会見 Photo by Yoko KIKKA

15時半からの正式上映に先立ち、12時半から行われた公式記者会見には、脚本も兼務したアンドレア・アーノルド監督、撮影監督のロビー・ライアンとプロデューサー、サシャ・レーン、シャイア・ラブーフ、そして共演した若者5名がズラリと登壇した。 

画像: 左からシャイア・ラブーフ、アンドレア・アーノルド監督、サシャ・レーン Photo by Yoko KIKKA

左からシャイア・ラブーフ、アンドレア・アーノルド監督、サシャ・レーン Photo by Yoko KIKKA

ウエストバージニア州など、8つの州でオーディションを重ねてキャスティングしたというアンドレア・アーノルド監督は会見で、テキサスの大学の新入生だったサシャ・レーンをフロリダのパナマシティ・ビーチで見かけ、声をかけたと明かし、その魅力についてもコメント。さらには劇中で流れる多彩な音楽については、「リラックスできて快適なモノをチョイスしたんだけど、おかげで使用料が高くついちゃったわ」と笑い飛ばした。

ラッセル・クロウとライアン・ゴズリングがタッグを組んだバディムービーの快作『ザ・ナイス・ガイズ』!

脚本家出身で俳優としても活動するシェーン・ブラック監督がメガホンをとった『ザ・ナイス・ガイズ』。『キスキス,バンバン』『アイアンマン3』に続く監督第3作目となる本作は、1970年代のロサンゼルスを舞台にしたコミカルなクライム・アクションだ。

シングルファーザーで酒浸りの私立探偵マーチは、腕力自慢の示談屋ヒーリーに強引に相棒にされ、失踪した少女の捜索をすることに。そこに13歳で車の運転までこなすマーチの娘ホリーが加わり、捜索を進めていくと、簡単なはずだった仕事は、1本の映画にまつわる連続不審死事件に、さらには国家を揺るがす巨大な陰謀に繋がっていく。次々と襲い来る凄腕の殺し屋の標的となった3人は、命がけで事件解決に奔走するのだが……。

画像: 『ザ・ナイス・ガイズ』の記者会見:左端がシェーン・ブラック監督 Photo by Yoko KIKKA

『ザ・ナイス・ガイズ』の記者会見:左端がシェーン・ブラック監督 Photo by Yoko KIKKA

22時半からの正式上映に先立ち、14時半から行われた本作の公式記者会見には、シェーン・ブラック監督とプロデューサーのジョエル・シルヴァー、マーチ役のライアン・ゴズリング、ヒーリー役のラッセル・クロウ、ホリー役のアンガーリー・ライス、殺し屋役のマット・ボマーが登壇。

ライアン・ゴズリング Photo by Yoko KIKKA

画像: ラッセル・クロウとライアン・ゴズリング Photo by Yoko KIKKA

ラッセル・クロウとライアン・ゴズリング Photo by Yoko KIKKA

マット・ボマー Photo by Yoko KIKKA

凸凹コンビを好演したライアン・ゴズリングとラッセル・クロウが終始ジャレ合い、ジョークを連発して会場を大いに沸かせた会見で、シェーン・ブラック監督は本作について「シンプルなアイディアのダイナミックワーク」だとコメント。司会者もホリーをキュートに演じたオーストラリア出身の新星アンガーリー・ライスに対して「これまで一体、何処に隠れていたんだい?」と、お得意のジョークをかましていた。
(記事構成:Y. KIKKA)

吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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