独特の繊細な筆使いと鮮やかな色彩で繰り広げられる寓話の世界。
ベルギーの現代美術を代表する、ピエール・アレシンスキー展が国立国際美術館において、1月28日(土)から4月9日(日)まで開催中です。

ピエール・アレシンスキー(1927年生まれ)は、第2次世界大戦後、ベルギー、オランダ、デンマークの若い作家たちが1948年結成した、前衛芸術グループ「コブラ」に参加し、本格的な作家活動を始めました。(※「コブラ」とは、コペンハーゲン、ブリュッセル、アムステルダムの頭文字を結合させた名前。)
「コブラ」の作家たちは、子供の絵に触発され、主義主張にとらわれず、自由を何よりも大切にし。内面から湧き出る情熱を描き出しました。
アレシンスキーも、線の要素を主にした、抽象絵画を、個性的に描きました。

「コブラ」の活動は、1951年までと短命に終わりましたが、アレシンスキーは、その後もこの精神を受け継いでいきました。
また、アレシンスキーは、日本の前衛書道の奔放さに興味を持ち、1955年、来日し、森田子龍らと交流し、映画『日本の書』を、制作しました。
この頃から、アレシンスキーは、重い油彩を徐々にやめ、インクによる流れるような繊細な筆致を求めていきます。
1965年には、水性のアクリル絵具を用いて、名作《セントラルパーク》を描きました。この作品は、アメリカのコミック本からの影響を受け、枠を設けて絵を描く、独特のスタイルの最初の作品となりました。
枠の中には、海や樹など、天地創造のいろいろなものを描いています。

アレシンスキーのコマ割りの絵には、日本の漫画とも通じるものがあります。
90歳を迎えて今なお、その筆の勢いは衰えることなく、あふれる情熱で描き続けるアレシンスキー。
本展では、アレシンスキーの初期から最新の大作、約80点がご覧いただけます。
また、今年、日本・ベルギー友好150年を記念し、本展が開催されることになりました。
この機会にベルギーを代表するアレシンスキーの日本で最初の回顧展を、是非、ご堪能ください。
では今からいくつかの作品をご紹介いたします。

画像: ピエール・アレシンスキー《写真に対抗して》1969年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 ベルギーINGコレクション © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《写真に対抗して》1969年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 ベルギーINGコレクション © Pierre Alechinsky, 2016

アレシンスキーは、写真は瞬間の記憶を収める、という意味で写真を好む一方で、真の芸術の表現ではないと考えているようです。
写真はその刹那のありのままの記憶を、写すものではあるが、真実のイメージは、彼の描く芸術の世界にあるのです。

画像: ピエール・アレシンスキー《夜》1952年 油彩、キャンバス 大原美術館蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《夜》1952年 油彩、キャンバス 大原美術館蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

アレシンスキーは、書道の世界に興味を持ち、「墨美」を見出しました。
絵と文字の相違点と、共通点を意識する中で、50年代初頭の作品には、表彰とも文字ともつかないものが前面を覆いました。

画像: ピエール・アレシンスキー《肝心な森》1981~84年 アクリル絵具 / インク、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《肝心な森》1981~84年 アクリル絵具 / インク、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

中心となる絵の周りにコミック本のように升を作った中に墨で絵を描いた和紙の短冊を巡らせ、それらをすべてキャンバスに貼り付けました。
こうして、周囲を漫画のような小さな絵で取り囲むという、アレシンスキー独特のスタイルを完成させたのです。
このスタイルにより、作品の主要部分は、特別な重みを獲得し、何かの物語が展開しているかのような予感を観る者に与えているのでしょう。

画像: ピエール・アレシンスキー《あなたの従僕》1980年 水彩、郵便物(1829年12月17日の消印) ベルギー王立美術館蔵 © Royal Museums of Fine Arts of Belgium, Brussels / photo: J. Geleyns - Ro scan © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《あなたの従僕》1980年 水彩、郵便物(1829年12月17日の消印) ベルギー王立美術館蔵 © Royal Museums of Fine Arts of Belgium, Brussels / photo: J. Geleyns - Ro scan © Pierre Alechinsky, 2016

アレシンスキーは、捨てられた手紙や、不要になった書類など焼かれる難を逃れた紙類を使って多くの作品を制作しています。中には19世紀のものもあり、パリや南仏の蚤の市、古物商、古本屋などで、見つけ出し、再利用して、オリジナリティーあふれる作品を生み出しています。

画像: ピエール・アレシンスキー《デルフトとその郊外》2008年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《デルフトとその郊外》2008年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

新たな挑戦を続けるアレシンスキーは、街のマンホールに紙を当てて、模様を浮きだたせる拓本のような技法を取り入れた作品や、円形の斬新な作品も創り出しました。

画像: ピエール・アレシンスキー《ローマの網》1989年 インク・アクリル絵具、拓本、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《ローマの網》1989年 インク・アクリル絵具、拓本、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

画像: ピエール・アレシンスキー《ボキャブラリーⅠ-Ⅷ》1986年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《ボキャブラリーⅠ-Ⅷ》1986年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

画像: ピエール・アレシンスキー《鉱物の横顔》2015年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《鉱物の横顔》2015年 アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 作家蔵 © Pierre Alechinsky, 2016

画像: ピエール・アレシンスキー《至る所から》1982年 インク / アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 ベルギー王立美術館蔵 © Royal Museums of Fine Arts of Belgium, Brussels / photo: J. Geleyns - Ro scan © Pierre Alechinsky, 2016

ピエール・アレシンスキー《至る所から》1982年 インク / アクリル絵具、キャンバスで裏打ちした紙 ベルギー王立美術館蔵 © Royal Museums of Fine Arts of Belgium, Brussels / photo: J. Geleyns - Ro scan © Pierre Alechinsky, 2016

壮大なスケールが感じられるこの作品。周囲は鮮やかに彩られ、中央の光景は、空と海を表しているのでしょうか?
アレシンスキーの芸術は、原点と変転、暴力と情熱、現実と超現実を混ぜ合わせることが可能です。
若いころの作品と変わらぬ情熱を持ち続け、たゆまぬ努力と探求心で、力強く取り組むアレシンスキーの作品に感動させられました。衰えぬ情熱。走る筆。
みなさまも是非、アレシンスキーの生涯をかけた情熱に満ちあふれた芸術作品を、ご堪能ください。

画像: ピエール・アレシンスキー ©Adrien Iwanowski, 2009

ピエール・アレシンスキー ©Adrien Iwanowski, 2009

展覧会概要

会場:国立国際美術館
 〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 TEL:06-6447-4680(代)

会期: 2017年1月28日(土)―4月9日(日)

開館時間:
10:00~17:00、金曜日は19:00まで (入場は閉館の30分前まで)
 
休館日:月曜日、3月20日(月・祝)は開館、翌日(3月21日)は休館
 
観覧料:一般900 円(600 円) 大学生500 円(250 円)
※( )内は20名以上の団体料金
※高校生以下・18歳未満、心身に障害のある方とその付添者1名無料(証明できるものをご提示願います)
※同時開催の「クラーナハ展̶500年後の誘惑」もご覧いただける、お得な共通チケット(1,900円)を販売します(1月28日(土)から4月9日(日)まで)。国立国際美術館の窓口でお買い求めください(当日券のみの販売となります)。
 
関連イベント:
・アレシンスキー展 講演会
講師:山梨俊夫(国立国際美術館 館長)
※2月18日(土)14:00~/B1階 講堂
※10:00から整理券を配布
※参加無料・先着130名
 
・アレシンスキー展 ギャラリー・トーク
講師:中井康之(国立国際美術館 学芸課長)
※3月4日(土)14:00~/B2階 展示室
※13:30から聴講用ワイヤレス受信機貸出
※参加無料(要観覧券)・先着90名
 
主催:国立国際美術館、毎日新聞社
 
後援:ベルギー大使館
 
協力:ヤマトロジスティクス株式会社、日本貨物航空株式会社、ダイキン工業現代美術振興財団 

おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展@国立国際美術館
cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上「おとろえぬ情熱、走る筆。ピエール・アレシンスキー展」チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。
☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2017年3月19日 24:00 日曜日
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
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 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
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   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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