上野の東京都美術館において、4月2日(日)まで、「ティツィアーノとヴェネツィア派展」が開催されています。

ヴェネツィア、水の都として有名なこの都市は、15世紀末の時点で人口18万人に及び、パリに次いでヨーロッパ第2の大都市となっていました。さらに16世紀にかけて東西文化が交わる特異な立地条件から海洋交易により飛躍的に繁栄します。そしてその富と政治力により、水の都から芸術の中心地へと変わるのです。政庁舎や聖堂、貴族の邸宅のための絵画まで、公私の場のためにさまざまな主題の絵画が制作され、明るい色彩と自由闊達な筆致、柔らかい光の効果を特徴とする、ヴェネツィアならではの絵画表現が生み出されました。

ルネサンス時代のヴェネツィアを活動の拠点とした芸術家たちは、「ヴェネツィア派」と総称されます。ヴェネツィア・ルネサンス美術の特徴とその魅力を満喫しましょう。

画像: 左:ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《マグダラのマリア》 1567 年、油彩、カンヴァス、122×94 cm、ナポリ、カポディモンテ美術館 photo©cinefil

左:ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《マグダラのマリア》 1567 年、油彩、カンヴァス、122×94 cm、ナポリ、カポディモンテ美術館
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みどころが3つ挙げられています。

1. ミケランジェロが嫉妬し、ルーベンスやルノワールも憧れた“画家の王者”ティツィアーノ。

ヴェネツィア・ルネサンスを代表する画家、ティツィアーノ。“画家の王者(プリンス・オブ・ペインター)”と呼ばれ、神話の登場人物から教皇や貴族の肖像まで、人間味あふれる姿で描き、ヨーロッパ中から人気を博しました。また、後世の画家にも多大な影響を与えています。本展はティツィアーノに光を当て、その真髄に迫る日本初の大規模展です。

2. 色彩美が際立つ《ダナエ》日本初公開!イタリアの至宝《フローラ》も来日!

《ダナエ》を見たミケランジェロは、ティツィアーノの色遣いと様式に脱帽しました。日本初公開となるこの《ダナエ》のほか、あでやかな「肌」を描き、イタリアの人々にこよなく愛されてきたバラ色の女神《フローラ》も来日します。天才画家が描いた官能的な神話の世界をご堪能ください。

3. ヴェネツィアの黄金期、花開いた才能が勢揃い!

ルネサンス期、レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロらが活躍していたフィレンツェに比肩し、ベッリーニ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレットなど次々と偉大な画家を生み出したヴェネツィア。光あふれる水の都、その黄金期に花開いた芸術を紹介します。

展示は三章構成

第1章 ヴェネツィア、もう一つのルネサンス

ルネサンス期のヴェネツィア美術の礎を築いたのは、ベッリーニ工房とヴィヴァリーニ工房でした。とりわけヤコポ・ベッリーニに始まるベッリーニ工房は、息子ジェンティーレとジョヴァンニによって引き継がれ、その工房からはティツィアーノをはじめ数々の優れた画家たちが輩出されました。

画像: 左:ジョヴァンニ・ベッリーニ 《聖母子(フリッツォーニの聖母)》1470 年頃、テンペラ、板(カンヴァスに移し替え)、52.5×43.2cm、ヴェネツィア、コッレール美術館 photo©cinefil

左:ジョヴァンニ・ベッリーニ 《聖母子(フリッツォーニの聖母)》1470 年頃、テンペラ、板(カンヴァスに移し替え)、52.5×43.2cm、ヴェネツィア、コッレール美術館
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第2章 ティツィアーノの時代

1510年にジョルジョーネが没した後、ヴェネツィア絵画の覇者となったのはティツィアーノでした。ティツィアーノは、ベッリーニやジョルジョーネに学んだ繊細な色彩の諧調と光の表現に、力強さと抑揚を加え、新しい絵画の可能性を切り開きました。1530年代以降、ティツィアーノのパトロンはヴェネツィアのみならず、ヨーロッパ各地の王侯貴族へと広がり、より美しく、官能的な絵画を求める彼らの要望から、独創性に富む数々の神話画が生み出されたのです。《ダナエ》(カポディモンテ美術館)をはじめとする、魅惑的なポーズをとる横たわる裸婦の表現は、ティントレットら次世代のヴェネツィア派の芸術家たちに引き継がれていきました。

画像: ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《ダナエ》 1544-46 年頃、油彩、カンヴァス、120×172cm、ナポリ、カポディモンテ美術館 © Museo e Real Bosco di Capodimonte per concessione del Ministero dei beni e delle attivita culturali e del turismo

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《ダナエ》 1544-46 年頃、油彩、カンヴァス、120×172cm、ナポリ、カポディモンテ美術館
© Museo e Real Bosco di Capodimonte per concessione del Ministero dei beni e delle attivita culturali e del turismo

画像: パルマ・イル・ヴェッキオ 《ユディト》 1525年頃、油彩、板、90×71cm、フィレンツェ、ウフィツィ美術館 © 2016. Photo Scala, Florence - courtesy of the Ministero Beni e Att. Culturali

パルマ・イル・ヴェッキオ 《ユディト》 1525年頃、油彩、板、90×71cm、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
© 2016. Photo Scala, Florence - courtesy of the Ministero Beni e Att. Culturali

画像: ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《フローラ》 1515 年頃、油彩、カンヴァス、79×63cm、フィレンツェ、ウフィツィ美術館 © Gabinetto Fotografico del Polo Museale Regionali della Toscana

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《フローラ》 1515 年頃、油彩、カンヴァス、79×63cm、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
© Gabinetto Fotografico del Polo Museale Regionali della Toscana

第3章  ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ ― 巨匠たちの競合

ティツィアーノは長い画歴のなかで、次々と様式を変化させていきました。後年には、筆致の荒々しさが増し、光と影の対比を強調した表現へと移行していきます。その一方で、ヴェネツィアではティントレットとヴェロネーゼという新たな絵画の担い手が誕生します。ヴェネツィア出身のティントレットは、当初はティツィアーノに学ぶも、色彩と素描の調和を目指し、ダイナミックな構図と極端な短縮法を取り入れたきわめて個性的な様式へと到達します。一方、ヴェローナからヴェネツィアに移住し、ティツィアーノの評価を得たヴェロネーゼは、ヴェネツィア派らしい華麗な色彩と古典的な造形をもって、物語場面を明快かつ祝祭的に描き出しました。こうしてティツィアーノの遺産はさまざまに引き継がれ、それぞれの画家の個人様式が際立つ時代を迎えることとなります。

画像: 左:ティントレットと工房《ヴェネツィア提督の肖像》1570年代、油彩/カンヴァス、フィレンツェ、ウフィツィ美術館 右:ヤコポ・ティントレット(本名ヤコポ・ロブスティ)《ディアナとエンディミオン(もしくはウェヌスとアド ニス》1543-44年、油彩/カンヴァス、フィレンツェ、ウフィツィ美術館 photo©cinefil

左:ティントレットと工房《ヴェネツィア提督の肖像》1570年代、油彩/カンヴァス、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
右:ヤコポ・ティントレット(本名ヤコポ・ロブスティ)《ディアナとエンディミオン(もしくはウェヌスとアド
ニス》1543-44年、油彩/カンヴァス、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
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画像: 左:ヴェロネーゼの工房《ベルシャツァル王の饗宴》16世紀末-17世紀初頭、油彩/カンヴァス、106.8×128.1cm、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館 右:ダル・フリーゾ(本名アルヴィーゼ・ベンファット)《カナの婚礼(ヴェロネーゼに基づく)》1590年頃、油彩/カンヴァス、149x207cm、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館 photo©cinefil

左:ヴェロネーゼの工房《ベルシャツァル王の饗宴》16世紀末-17世紀初頭、油彩/カンヴァス、106.8×128.1cm、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館
右:ダル・フリーゾ(本名アルヴィーゼ・ベンファット)《カナの婚礼(ヴェロネーゼに基づく)》1590年頃、油彩/カンヴァス、149x207cm、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館
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画像: ボニファーチョ・ヴェロネーゼと助手《最後の晩餐》1540-45年、油彩/カンヴァス、118x332cm、フィレンツェ、ウフィツィ美術館 photo©cinefil

ボニファーチョ・ヴェロネーゼと助手《最後の晩餐》1540-45年、油彩/カンヴァス、118x332cm、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
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音声ガイドは別所哲也さん。
しっとりとした声で案内されながら会場を歩くのも格別です。

画像: photo©cinefil

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展覧会概要

会期:2017年1月21日(土)~4月2日(日)
会場:企画棟 企画展示室
休室日:月曜日、3月21日(火)
※ただし、3月20日(月・祝)、27日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)

観覧料
当日券 | 一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
団体券 | 一般 1,300円 / 大学生・専門学校生 1,100円 / 高校生 600円 / 65歳以上 800円
※団体割引の対象は20名以上
※中学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください

主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
後援:イタリア大使館
協賛:大日本印刷
協力:アリタリア-イタリア航空、日本貨物航空
特設WEBサイト:http://titian2017.jp
お問い合わせ先TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

イベント情報

「記念講演会」:本展監修者をはじめ、研究者らがそれぞれのテーマで講演します。

第3回
日時2017年2月18日(土) 14:00~15:30
テーマ「ヴェネツィア美術の魅力」
講師宮下規久朗(神戸大学大学院教授)
会場東京都美術館 講堂(交流棟 ロビー階/定員225名)

第4回
日時2017年2月25日(土) 14:00~15:30
テーマ「ティツィアーノ《ダナエ》をめぐって」
講師小林明子(東京都美術館 学芸員)
会場東京都美術館 講堂(交流棟 ロビー階/定員225名)

※聴講無料。ただし本展観覧券(半券可)が必要です。
※当日13:00より講堂前で整理券を配布し、定員になり次第、受付を終了。開場は13:30です。

「障害のある方のための特別鑑賞会」 事前申込制:普段は混雑している特別展を障害のある方が安心して鑑賞できるように、休室日に鑑賞会を開催します

日時:2017年2月27日(月) 10:00~16:00
対象:身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳などをお持ちの方400名とその介助者(1名まで)
会場:東京都美術館 企画展示室(企画棟)
申込方法:郵送もしくは、ウェブサイトにて、事前申込
※応募者が多数の場合は抽選になる場合もあります。
※障害のある方のための特別鑑賞会の詳細はこちらhttp://www.tobikan.jp/learn/accessprogram.html

「ティツィアーノとヴェネツィア派展」cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「ティツィアーノとヴェネツィア派展」チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いしております。

☆応募先メールアドレス  
info@miramiru.tokyo

*応募締め切りは2017年2月28日 24:00 日曜日
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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