ナチス・ドイツが白い浜辺に残したのは地雷だけだったのか―?
砂の下に封印されていた 真実の物語

第二次大戦後のデンマークで、ナチが埋めた200万個以上の地雷を撤去したのは、大半が15歳から18歳のドイツ人少年兵だった。異国に置き去られた彼らは、母国の罪の償いを強いられるように危険な作業を命じられ、半数近くが死亡、もしくは重傷を負ったという。
デンマーク国内でも知られることのなかった残酷な史実を題材にした本作は、戦争の矛盾に満ちた現実を浮き彫りにし、観る者に問いかけてくる。

人は憎むべき敵を赦すことができるのか?
いかなる残酷な状況においても、生きるための希望を抱き続けることは可能なのか?
美しい海が広がる白い浜辺に残された“真実の物語”が、あなたの心を激しく揺さぶるだろう。

脚本・監督はデンマークの新鋭マーチン・サントフリート。
一触即発の地雷除去シーンを生々しいスリルをみなぎらせて描く一方で、敵同士であるデンマーク人軍曹と少年たちの間に芽生える疑似親子のような絆を感動的に映し出す。
数々のコントラストが強烈な印象を残す本作は、デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で作品賞や監督賞を含む6部門を独占。
世界各国の国際映画祭でも高く評価され、第28回東京国際映画祭ではラスムスン役のローラン・ムラとセバスチャン役のルイス・ホフマンが揃って最優秀男優賞を受賞した。
また、2017年のアカデミー賞外国語映画部門ノミネートに残る最終選考の9本に残っており、このまま最後の5本に選ばれるのかも注目されている。

画像1: ©2015 Nordisk Film Productions, A/S & Amusement Park Film GmbH & ZDF

©2015 Nordisk Film Productions, A/S & Amusement Park Film GmbH & ZDF

画像2: ©2015 Nordisk Film Productions, A/S & Amusement Park Film GmbH & ZDF

©2015 Nordisk Film Productions, A/S & Amusement Park Film GmbH & ZDF

『ヒトラーの忘れもの』マーチン・サントフリート監督インタビュー

映画化はどのようにして始まり、この題材についてどのようにして知ったのでしょうか?

デンマークの戦争の歴史における暗い側面について描いた映画を作ろうと思い立ったんだ。戦争において 自分たちがいかに正しかったのか、どれほど人々の助けになったのか、という話はよく聞くことだ。だが、どの国 の歴史にも暗い側面があると私は信じてる。そういう経緯で、リサーチを始めたんだ。

脚本を書く際に、何を描くことを目的としていましたか?

この脚本で描きたかったのは、「目には目を」という心理についての物語だ。それはうまく機能しないし、私たちは人間として、自分だったらこう接してほしい、と思うやり方で他人に接するべきなんだということをね。でも、 これはバランスが微妙なんだ。第二次大戦においてのドイツは、通常は全世界を敵に回した悪の国家とし て見られている。でもこの映画に登場するドイツ人は、純朴な少年たちだ。それでもやはり、バランスは微妙だ。だって、その少年たちがデンマークの海岸来る前にどんなことをしてきたのかは、私たちにはわからないからね。

戦争というのは軽い題材ではありません。『ヒトラーの忘れもの』はドイツとデンマークの歴史に おいて特に残酷な側面を浮き彫りにしています。リサーチはどれぐらいの規模で行ったのでしょう? ま た、専門家も作品に携わりましたか?

ドイツ人が、デンマークの海岸に埋められた地雷を除去することを強いられたと初めて知って、この話にますます興味が沸いたんだ。少年兵たちがそんなことを強いられるなんて、ひどい話だと思ってね。もちろん、ドイツ人が埋めたんだから、ドイツ人が除去すべきだろうというふうには感じていた。でも、だからってそれを少年兵にやらせるべきだったのか、ということには疑問を抱いたよ。 それでリサーチを始めたんだけど...この話について書かれた本はあまり多くは存在しなかったから、墓地とか病院とかを訪れたんだ。それと、歴史家ではなくて、デンマークの海岸の歴史に興味のある「準」専門家に話を聞きに行った。ほとんどの人が、当時の物品や話、写真とかいったものの膨大なコレクションを持つ一般人だったんだ。
この話について書かれた歴史書は1冊もない。だから、きっとこの話は誰にとってもあまり触れたくないことなんだろうと感じた。でも、この映画をきっかけに議論が起こって、歴史書が書かれてくれたらうれしいよ。

若い俳優たちをどのようにしてキャスティングしたのかをお教えいただけますか? どのようにし て彼らを発掘したのでしょうか?

キャスティングに関しては、私はいつもミヒャエル・ハネケに触発されてきて、彼の配役の仕方が気に入っていたんだ。だから、「ミヒャエル・ハネケ作品のキャスティング・ディレクターは誰だ?」と(スタッフに)尋ねて、それがジモーネ・ベアーだとわかったってわけさ。それで、彼女のもとを訪れて、どんな人材を求めているのか、どん な子供を探しているのかを伝えた。そうしたら彼女は、少年たちをたくさん連れてきた。街中でスカウトした子たちをね。その中には演技の経験がない子もいたし、ある子もいたんだ。 セバスチャンを演じたルイス(・ホフマン)と、ヘルムート役のジョエル(・バズマン)には演技経験があった。でも 基本的に、起用した時点では彼らはみんな同じ役に...つまり、すべての役に当てはめられてキャスティング されたんだ。自分がどの役を得られるのか知っている者はいなかった。少年5人を1つの部屋の中で互いに組ませて演技をさせて、それぞれがどの役に適しているかを見極めようとした。こうやって少年たちが集まっていると、すぐに、彼らの中で序列が自然とできあがるんだよ。それが面白かったね。ああ、なるほど、彼がリーダーで、彼が負け犬で...っていうのが簡単にわかるんだよ。その序列を、実際に配役に生かしたのさ。 撮影の中で、その序列が大戦当時に実際に少年兵たちの間にあったであろう序列と似たようなものへと発展していく様をカメラに収めることができたのも、とても興味深いことだった。物語の中で、少年兵たちの何 人かは地雷に吹き飛ばされて、ドイツに送り返されるんだけれど、実際の少年たちも、友人がいなくなったことに喪失感を感じていたんだ。映画の中で地雷に吹き飛ばされた者はドイツに戻るから、まるで彼らが本当に死んでしまったかのように寂しがっていたんだよ。もちろん、それでも撮影は続けたけどね。

撮影現場で何か記憶に残るような瞬間や出来事はありましたか?

記憶に残っているような瞬間はたくさんあるよ。何かしらの困難があったせいで覚えていることもあるし、その他は...。一番、鮮明に覚えているのは、双子の片方が小屋にいて、ローラン・ムラ演じる(ラスムスン軍曹) と一緒に座って話していて、双子の片割れを探しに行きたいと伝えるシーンだ。私も含め、制作チーム全員が泣いていたのを覚えている。全員がだよ。胸が張り裂けるようなシーンだったんだ。(双子の片方を演じた)エーミール(・ベルトン)は自分の演じるキャラクターをあれほど深く理解しているとは思わなかった。これまで一切、演技経験が無いにも関わらずだ。彼は、近しい者を失うということがどういうことなのか、その本質を非常にうまくとらえていた。これは、ローラン演じるラスムスン軍曹にとって非常に重要なことなんだ。 そして、これは彼にとってのターニング・ポイントになった。「よし、今こそがラスムスン軍曹の変化を描くべき時 だ」と思ったんだ。

特殊効果の使用と、感情的側面を描き出すこと、どちらのほうが困難でしたか?

一番大変だったのは、たぶん天気と海岸かな。砂浜を80人ものスタッフが歩き回るんだから、常に足跡が残ってしまう。撮影が始まってから、自分の考えが甘かったということを実感した。撮影前は、たった一か所で撮影するのだから、準備したり、演出の指示を出したり、実際に撮影したりということにたっぷり時間を使えると思っていたんだ。でも、実際には足跡を消したり埋めた地雷を取り出したりということにたくさん時間を 取られてしまった。正直、予想外だったよ。 感情的側面で言えば、一番大変だったのはちょうどいいバランスを見つけることだった。この作品は、ドイツ人を英雄視するような映画ではない。これは許しについて描いていて、自分だったらこう接してほしい、と思
うやり方で他人に接するべきだと伝えているんだ。そして、ラスムスンがちゃんと正しい道のりを歩んだというこ ともしっかりと描き出したかった。ラスムスンが自身の中にある憎しみの感情を自覚すると同時に、変わって いく自分を感じ取っていく様をね。

撮影前は、砂の下には本物の地雷があったから、恐ろしかった。踏んでも爆発はしないけど、ハンマーで殴ったりしたらどうなるかわかったものじゃない。あそこにはまだ地雷が埋まってると私は思うよ。政府はすべて除去したと言っているけどね、まだ何個かはあるんじゃないかな。地雷を埋める場所を記した地図があったとは言うけれど、地雷が多すぎて、本来埋めるべき場所でないところにまとめて埋めたんだ。でも、波や砂によって地雷は動いたりするから、あの海岸に地雷が残っているかいないかなんて、誰にもわからないんだよ。

この作品を 2〜3 言で言い表してください

『ヒトラーの忘れもの』は、第二次大戦直後の時期を取り上げている。デンマーク政府によって同国の海岸に連れて行かれ、そこに埋められた地雷を除去するよう強いられた14人の幼いドイツ人兵士たちの物語だ。

『ヒトラーの忘れもの』を見るべき理由とは?

『ヒトラーの忘れもの』を見るべき理由は、この作品は第二次大戦についてだけでなく、人間の振る舞いについても描いている映画だからだ。戦時下で、または戦後、人間がお互いに対してどのような態度を取るのかを描くのと同時に、怪物を倒そうとして自分自身が怪物になってしまってはいけないと警鐘を鳴らしている。 そして、人間は過ちから学ぶのだということと、たとえ自分の信念は正しいと思っていても、その信念とは異なる方向に進んでもいいということを伝えている。 これは、現代においても通じる重要なことだと思う。難⺠に対してどういう態度を取るべきか、国境を開放するのか、または一般的な憎しみや恐怖ということに関してね。本作においてラスムスン軍曹は、少年兵たちのことを知るにつれて、彼らが自分と同じ感情を抱えていて、同じものを必要としていることに気づく。食べ物だったり愛だったり、そういったものだ。ラスムスン軍曹と同じように、私たちも互いに十分な時間を一緒に過ごせば、相手のことがわかってくると思うんだ。今、私たちが生きているこの世界でもね。我々みんな、同じ物を必要としているんだ。 だから、この作品は昔の出来事を描いたつまらない戦争映画ではなくて、現代にも通じることを伝える作品になってたらいいと思ってるよ。

画像: 映画『ヒトラーの忘れもの』本予告篇 youtu.be

映画『ヒトラーの忘れもの』本予告篇

youtu.be

[監督]マーティン・サントフリート
[出演]ローラン・ムラ、ルイス・ホフマン
上映時間:1時間41分
配給:2015年デンマーク=独映画/キノフィルムズ配給
©2015 Nordisk Film Productions, A/S & Amusement Park Film GmbH & ZDF

シネスイッチ銀座ほかにて絶賛公開中!

This article is a sponsored article by
''.