井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ
<野性>に踏み出してしまった<人間>の姿。
4人が仕掛ける、濃密で官能的なサスペンス・ドラマ
三浦しをん原作・大森立嗣監督による映画「光」

過去の忌まわしい事件が、25年たった今、再び迫りくる―。
「まほろ駅前」シリーズのタッグ再び!
原作 三浦しをん×監督 大森立嗣が描く、逃れることの出来ない運命に翻弄される、人間の心の底を描く過酷で濃厚なサスペンス・ドラマ。

私たちは自然の容赦なき圧倒的な力を前に、畏怖を持って立ち止まることしか出来ない。
誰も責めることの出来ない暴力により全てを失われた時、残されたものは、記憶しかないかもしれない。全てを奪われた者は、僅かに残った記憶を探し求める。
この物語の三人の子どもたちは、一瞬にして生きる場所、自分が犯した罪さえも全てを無くしてしまう。私たちの人生は愛も憎しみも全て、過去の記憶の上に成り立っている。記憶が無ければ、今は成立しない。
痛々しくも純粋な彼らの時間は、禍々しい記憶と共に止ってしまった。
二十年後、愛に飢えた彼らは、過去の秘密を共有し再び巡り会う。
傷ついた記憶を持つ過去を修復し、生きるために愛すべき互いを傷つけ合い、再び罪を繰り返してしまう。残酷と孤独の中で彼らの時間は動き始める。

本作は、相克する愛と憎しみの中で、愛すべきものを守るために、愛すべきものを傷つけてしまう、善と悪とに単純に二分化でき来ない人間の本性と生きるための記憶とは?愛とは?何かを観客に問いかけます。

画像: 井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ <野性>に踏み出してしまった<人間>の姿。 4人が仕掛ける、濃密で官能的なサスペンス・ドラマ 三浦しをん原作・大森立嗣監督による映画「光」


〈ストーリー〉
島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。
それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は美花を守ろうとするが―。

全てを奪われた三人の子どもたち
舞台は、東京の離島、美浜島。記録的な暑さが続く中、平凡とも退屈とも言える生活を中学生の信之は送っていた。信之を慕う年下の輔は、父親から激しい虐待を受けている。同級生は、幼馴染で美しい恋人の美花ただひとりだ。ある夜、美花と待ち合わせた信之は、島の外部からやってきた者に、美花が犯されている姿を見てしまう。美花を救う為に、信之は取り返しのつかない罪を犯す。そして次の日、理不尽で容赦のない自然の圧倒的な力、津波が島に襲いかかり、全てを消滅させる。生き残ったのは、信之のほかには美花と輔とろくでもない大人たちだけだった。

記憶とともに、子どものまま彼らの時間は止ってしまう

そして、それぞれが島を離れて生きてきた25年後、過去の秘密が追ってくる。
一人娘を持つ良き父親として平凡に生きる信之。
誰からも求められず愛されず育った輔は、唯一優しく接してくれた信之の記憶を今もなお探し求める。
一切の過去を捨て、きらびやかで閉鎖的な芸能界で貪欲に生き続ける美花。
25年前の秘密の記憶を共有した三人は、再び巡り会う。
やがて、封じ込めていた過去の真相が明らかになっていく。
秘密を握る輔は、記憶の中の信之を取り戻すため、信之と美花を脅し始める。

愛すべきものを守るために、愛すべきものを傷つける

純粋な子どものまま時間を止められてしまった彼らが、傷ついた過去を修復し、生きるためにしなければならなかったこととは?
彼らは生きていくため、愛すべきものを守るために、ある決断をくだす。
彼らは、再び自らを“あの島の光”の中に導くことは出来るのであろうか。

監督コメント

大森立嗣 監督 

 三浦しをんさんの『光』という小説を映画にしたいと思っていました。まず『光』という抽象的でしかし強い意思を感じるタイトルに今までの三浦作品とは違う気配を感じました。いざ読んでみるとこれは恐ろしい小説でした。小説の持つ強度に驚きました。強度とはモラルやコンプライアンス、あるいはカテゴライズされやすいイメージとかけ離れたものでできあがっているという意味です。
 それから枠の外側に向かっていくという点にものすごく興味を持ちました。飼いならされた犬の悩みみたいな話ではなく、野性に踏み出した人間たちのドラマに強く心を動かされました。
僕にとって『光』という小説は生命そのものの讃歌でした。
『まほろ駅前多田便利軒』を監督する前でしたが写真で見た三浦しをんさんの笑顔が浮かび、それが悪魔か天使にみえるくらいでした。恐ろしい女性だと思いました。

 僕は原作もので映画を作るとき最初に読んだときに僕自身が感じたことを一番大事にします。それが今回は『生命そのものの讃歌』でした。
普段から考えていることですが、社会は良くなっていくように発達しているはずなのに、そう思えないことが多々あります。端的に言ってしまえば、人生は長生きするためにあるわけではない。超高齢化社会は近い未来に生きることは何か?ということを私たちに突きつけてくるでしょう。高いビルが増殖するようにできていくけど、夕陽を見ることも大事だったりします。タバコの悪い所ばかりが言われていますが、一息つくときの一服の旨さはなにものにも代え難いものがあります。“これをしてはいけない”“こうすべきだ”というのが多くなりすぎています。現代の生き難さはそういうところにあります。現代人の抱える問題は生命と自分自身の不調和に起因していると思います。

 小説『光』を映画化するということは生命そのものの讃歌、命の輝きを描きたいということでした。映画の冒頭、主人公たちが住んでいる島に津波が襲ってきます。それは無慈悲にあらゆるものを飲み込んでしまいます。何も残りません。ただ無だけがあります。無を受け入れるには過剰な生、命の輝きが必要だったのかもしれません。わかりません。
 でも映画の中には輝きを持って確実に生きている主人公たちがいます。彼らを見つめることが、低迷した高度消費社会を生きる、どこか生を謳歌できない僕たちに微かな光を感じさせてくれるのではないかと信じています。

 おそらく主要なキャストの井浦新 瑛太 長谷川京子 橋本マナミもそういう原作、脚本の持つ異様なまでの社会生活の中での混沌と生命の調和、それが人間ドラマを通して描かれていくことに共感してくれたのではないでしょうか。
今、撮影が終わり編集している所です。
 井浦新の冷たい熱情、瑛太の優しい怪物性、長谷川京子の狂気と美、橋本マナミの色気と母性が映画に充満しています。
スゴい映画になると確信しています。観客が観ることを想像するとワクワク感を押さえきれません。今はそんな感じです。

<コメント>

井浦新

「人を暗い方へ導く光もあるんじゃないか」と作者の三浦しをんさんが言うように、人間の意識・無意識の中、そして自然の中にも潜む様々な形の暴力と向き合い続けた撮影期間は、自分の心の奥底のほうにこびり着いている得体の知れないナニかを引っ掻き出し、光にさらし、時にはまた飲み込み、正直、しんどい日々でした。笑
大森立嗣監督作品への参加は3度目。信頼があるからこそ、自分でも理解できないナニかが出てきてしまっても、どんなに振り切ってしまっても、いつもカメラ横でしっかり受けてくれる監督に、喜んで全身全霊を捧げることができます。この作品を背負い、それぞれの役と共に苦悩し、自らも振り切ってゆく大森監督は活き活きとどこか楽しげで、初めて見るそんな監督の姿に火を焚べられ静かに燃えていました。
その燃焼から自然発生した芝居を受ける共演者やスタッフの皆さんは大変だったと思います。この場を借りて、すみませんでした。ありがたい事に、役柄的に出演者のほとんどの方々とお芝居させてもらえましたが、大変嬉しく思う分、罪も大きくなりました…苦笑。
その中でも、最も化学反応を起こせたのが瑛太くんでした。彼と芝居がしたいと前々から大森監督に言っていた分、この座組でナニかが起きないわけがないとは思っていましたが、彼のポテンシャルは想像以上、互いに後ろを顧みない変化球なしの真っ向勝負の連続は、どのシーンも何が起きるか、どこに向かうのか、まったく予測なんてできません。芝居が終われば心には辛さが残りましたが、微かに全部出し切った心地良さもありました。
一体感ある組で、反応し合える共演者たちと芝居を重ねる度、日々深化し野生化して役を飲み込んでゆく感覚を体感しました。原作の創造の世界を生身の人間が生きるとこうなる、映画だからこその生命感溢れる【光】が生まれたと思います。

瑛太さん

大森立嗣監督、共演者、スタッフのおかげで輔という役を楽しく演じられた。
もともと大好きだった井浦新さんとの共演はとにかく刺激的で芝居の新たな面白さを教えていただいた。新さんが演じる信之の内側にある凄まじい熱量と冷酷さは、原作、台本を超越していた。
橋本まなみさんは、妖艶なパブリックイメージとは違う、普通の主婦を見事に揺るがない姿勢で演じ切っていた。濡れ場のシーンもありましたが、皆さんの期待を裏切らないシーンになったと思います。
大森立嗣監督とは3回目でしたが、新鮮な気持ちで芝居を楽しませてもらえる現場の空気を作っていただいた。大森立嗣ワールド全開の完成を楽しみにしています。

長谷川京子さん

限られた撮影日数の中で「美花」がどんな人物なのか模索しましたが、結局、撮影が終わった今も彼女のことが分かりません。
撮影中は考えても考えても正解の出てこない旅路に疲れ、逃げ出したくなる時もありましたが、もしかしたらそれが「美花」だったのではないかと、今思います。
大森監督との撮影は刺激的で、ある種、自分探しのような作業でした。体全部で感じること、ぶつかることの楽しさを教えてもらいました。
それぞれの人物がぶつかり合い、どのような作品になるのか、私自身楽しみです。

橋本マナミさん

最初にこの脚本を読ませていただいたとき、あまりの面白さに一気に「光」の世界に惹き込まれました。そして監督はずっと憧れていた大森立嗣さんに共演者の方々も素晴らしい方ばかりで撮影中は濃厚で刺激的な時間を過ごさせていただきました。
この作品のテーマの1つとなる無意識の暴力。
人って生きてると無意識に人を傷つけてしまうもので、この作品でも様々な思いがぶつかりあいます。胸が苦しくなる瞬間が何度もありました。
私が演じた黒川南海子は社会性を気にする普通の主婦ですが、それだからこそ時には怖い一面もあるかも!?そして今までやったことのないような刺激的なベットシーンがあるかも!?それは観てからのお楽しみ♡
観ている方の心を揺さぶる魂がこもったすごい作品になっていると思います。私もその中で共演者の方に支えられながらも一生懸命頑張りました。何か感じていただけたら嬉しいです。ぜひ皆さん"光の世界"にどっぷりつかってみてください。

三浦しをんさん(原作)

大森立嗣監督に映画化していただけて、光栄です。素晴らしいスタッフ、キャストのみなさまのお力により、悪の色気にあふれた作品になりそうで、とてもとても楽しみです。

出演
井浦新 瑛太 長谷川京子 橋本マナミ
南果歩 平田満
監督:大森立嗣 
原作:三浦しをん(「光」集英社刊)
配給:ファントム・フィルム

2017年秋 公開

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