画像: Busan Biennale 2016 
3rd Sept. – 30th Nov. 2016
Busan Museum of Art & F1963(KISWIRE Suyeong Factory)

「釜山ビエンナーレ2016」                        
日中韓の歴史的な現代美術の祭典              上田雄三


「釜山ビエンナーレ」は2000年に「釜山青年ビエンナーレ」として誕生し、2002年の第1回目から「釜山ビエンナーレ」と名称を変更、これまでに700万人の来場者を集めてきた。9月3日に開幕式が行われ、徐秉洙市長は釜山国際映画祭をはじめ、「釜山ビエンナーレ」は釜山市が誇る国際的なビエンナーレに成長したことを多くの来場者に印象付けた。

 今回の尹在甲総監督(HOW ART MUSEUM館長-上海)は釜山市立美術館のProject 1では「an/other avant-garde china-japan-korea」(中国・日本・韓国の前衛)と題して、三ヶ国の歴史的俯瞰及び検証する展覧会を企画。日本から椹木野衣(多摩美術大学教授)、上田雄三(Gallery Q)、建畠晢(多摩美術大学学長)。韓国から金鑽東(京畿道文化財団)、中国から郭暁彦(北京民生現代美術館)の五名のキュレーションによる各国別の展示となった。
Project 2のF1963(KISWIRE Suyeong Factory)会場では「Hybridizing Earth, Discussing Multitude」(混血する地球、多衆知性の公論の場)と題してグローバル時代に誕生した国際的に活躍する若手アーティストたちの展覧会を開催、尹在甲総監督がキュレーションを務めた。

 釜山市立美術館のProject 1「中国・日本・韓国の前衛展」は三ヶ国の現代美術を歴史的視点から検証する場となり、三カ国が一同に揃う歴史的な展示となった。その経緯となった背景として日本の<もの派>や<具体>、韓国の<単色画—モノクローム>、中国の1980年代に北京郊外の円明園や東村で起きた一連の美術の動向が欧米の主要な美術館にてここ数年、数多く紹介されたことで話題を呼んでいることがあげられよう。こうした動向からもこれら三ヶ国の美術作品の価格が香港のクリスティーズ等のオークションによって、高値で取引されていることから、それまでの西洋を追従することの美術史から東洋の独自の芸術・文化(前衛美術)を見直すことで、さらに三ヶ国の芸術への関心も高まっている。こうした要因によって欧米で評価された日本から発信された<もの派>や韓国の<単色画—モノクローム>の前後の時代に起きた美術史の動向を再制作も含めて展示された。中国は文化大革命以降の世代<星星画会>以降に焦点を合わせた独自の美術運動を中心に展示された。

 日本からは岡本太郎(1911-1996)の1950年に描かれた「森の掟」、そして<具体グループ>の田中敦子(1932-2005) の1965/1969年に描かれた「地獄門」。<ハイレッド・センター>の赤瀬川原平(1937-2014)のニセ札(印刷物)「大日本零円札」1967年制作とポスター。<反芸術>の旗手による工藤哲巳(1935-1990)の「あなたの肖像1967」、肥大化した脳のオブジェが展示。<グループ幻触>の鈴木慶則(1936- 2010)は故石子順造と故中原祐介の美術評論家によって企画された『トリックス・アンド・ビビジョン展』に出品したトロンプ・ルイユ(騙し絵)1967年制作の「非在のタブロー」を展示。後に<もの派>で活躍している関根伸夫にも影響を与えている作品。そして篠原有司男(1932-)の1967年制作の「おいらん」。<九州派>の菊畑茂久馬(1935-)の「奴隷系図(三本の丸太による)」の1961年の再制作。榎忠(1944-)の「RPM-1200」金属のインスタレーション。折元立身(1946−)の「26聖人の処刑」、<美共闘>の堀浩哉(1947-) 「REVOLUTION」1971-1972年の再制作を展示し、初日には釜山の東亜大学の学生たちとパフォーマンスを開催。柳幸典(1959-)のネオン管による点滅する「憲法第9条」1994年のインスタレーション。中原浩大(1961- )は1990年に30万個のレゴで制作した「レゴモンスター」を展示。会田誠(1965-)はダンボールで制作されたゴチック建築の教会を制作。日本で制作したものに釜山のボランティアや学生たちとの共同制作を続けるインスタレーションを展示。Chim↑Pomのグループは広島市の協力を得て原爆ドームに祈祷された千羽鶴(約8トン)を古墳に見立て高さ5メートルに積み上げて展示。千羽鶴の古墳の中に回廊を設けて観客が中に入れるように設置している。

 日本の展示は戦後1945年代から高度経済成長期1960年代後半を経て、2000年代の現代までの約70年に渡る歴史と社会制度に接点を合わせた多様な表現を展示。韓国は「単色画」以降の1970年代後半から1980年代の歴史的な展示で、韓国の持つ土俗性、民族性、自然性を中心にした表現を展示。その殆どが色彩を持たないこと、自然のおおらかさを表現としながらも画家の身体性や修行とも思える行為としての表現、もののイメージを消しさる無限的空間を表現している。素材としての「もの」に手を加えない手法として知られている李禹煥や菅木志雄を中心とした「もの派」からの影響も数多く見受けられた。中国は日本の社会性や韓国の民族、自然主義的な表現と異なり、個人の内生に関わる表現が多く、社会主義や共産主義の体制下で抵抗する個人史、批評性のある表現の展示が多く見られた。

Busan Biennale 2016 

画像: Chim↑Pom PAVILION 協力:広島市

Chim↑Pom
PAVILION
協力:広島市


画像: 折元立身 Orimoto Tatsumi (1946〜  ) 「26聖人の処刑」 木材、鉄板、布、 新聞紙 2004-2016

折元立身 Orimoto Tatsumi (1946〜  )
「26聖人の処刑」
木材、鉄板、布、
新聞紙 2004-2016

画像: 柳幸典 Yanagi Yukinori 「アーティクル 9」(憲法第9条) ネオン管、電気関係 1994

柳幸典 Yanagi Yukinori
「アーティクル 9」(憲法第9条)
ネオン管、電気関係 1994

画像: 菊畑茂久馬  Kikuhata Mokuma  (1935- ) 左 「奴隷系図(三本の丸太による)」 再制作 木、布、ミクストメディア 500×320cm1961-2016 赤瀬川原平 Akasegawa Genpei (1937-2014) 右 所蔵:個人

菊畑茂久馬  Kikuhata Mokuma  (1935- ) 左
「奴隷系図(三本の丸太による)」 再制作
木、布、ミクストメディア
500×320cm1961-2016
赤瀬川原平 Akasegawa Genpei (1937-2014) 右
所蔵:個人

画像: 鈴木慶則 Suzuki Yoshinori(1936- 2010) 「非在のタブロー(アルチンボルトによる) 油彩、木、カンヴァス 53.7×46.2×6cm 2点 1967 所蔵:鎌倉画廊

鈴木慶則 Suzuki Yoshinori(1936- 2010)
「非在のタブロー(アルチンボルトによる)
油彩、木、カンヴァス
53.7×46.2×6cm 2点 1967
所蔵:鎌倉画廊

画像: 田中敦子 Tanaka Atsuko (1932-2005) 左 「地獄門」 ビニール塗料、アクリル、カンヴァス 331.5×245.5cm 1965/1969 所蔵:国立国際美術館 中原浩大 Nakahara Kodai (1961〜  ) 右 「レゴ・モンスター」 レゴ H320×W280×D210cm 1990 所蔵:豊田市美術館

田中敦子 Tanaka Atsuko (1932-2005) 左
「地獄門」
ビニール塗料、アクリル、カンヴァス
331.5×245.5cm 1965/1969
所蔵:国立国際美術館
中原浩大 Nakahara Kodai (1961〜  ) 右
「レゴ・モンスター」
レゴ H320×W280×D210cm 1990
所蔵:豊田市美術館

画像: 岡本太郎 Okamoto Taro (1911-1996) 「森の掟」 油彩、カンヴァス 181.5x259.5cm 1950 所蔵:川崎市岡本太郎美術館

岡本太郎 Okamoto Taro (1911-1996)
「森の掟」
油彩、カンヴァス
181.5x259.5cm 1950
所蔵:川崎市岡本太郎美術館

画像: 篠原有司男 Shinohara Ushio (1932- ) 「おいらん」 油彩、カンヴァス 160×390cm 1967 所蔵:宮城県美術館

篠原有司男 Shinohara Ushio (1932- )
「おいらん」
油彩、カンヴァス
160×390cm 1967 所蔵:宮城県美術館

画像: 榎 忠  Enoki Chu (1944- ) 「RPM-1200」 Steel 2006-2016

榎 忠  Enoki Chu (1944- ) 
「RPM-1200」
Steel
2006-2016

画像: 堀 浩哉 Hori Kosai (1947- ) REVOLUTION 新聞紙、布、ミクストメディア 2014-2016

堀 浩哉 Hori Kosai (1947- ) 
REVOLUTION
新聞紙、布、ミクストメディア
2014-2016

画像: 会田 誠 Aida Makoto + 21st Century Cardboard Guild

会田 誠 Aida Makoto + 21st Century Cardboard Guild

画像: 工藤哲巳 Kudo Tetsumi (1935-1990) 「あなたの肖像1967」 乳母車、傘、綿、プラスチック、ポリエステル 樹脂、接着剤、鎖、チューブ、絵具 1967 所蔵:青森県立美術館

工藤哲巳 Kudo Tetsumi (1935-1990)
「あなたの肖像1967」
乳母車、傘、綿、プラスチック、ポリエステル
樹脂、接着剤、鎖、チューブ、絵具 1967
所蔵:青森県立美術館

画像: 馬六明 Ma Liuming (中国) Great Wall C-print 2004

馬六明 Ma Liuming (中国)
Great Wall
C-print 2004

画像: 張曉剛 Zhang Xiaogang (中国) Bloodline : Big Family No.3 Oil on canvas 190x150cm 1996

張曉剛 Zhang Xiaogang (中国)
Bloodline : Big Family No.3
Oil on canvas 190x150cm 1996

画像: 王廣義  Wang Guangyi (中国) Great Criticism: Casio Oil on canvas 150x120cm 1993

王廣義  Wang Guangyi (中国)
Great Criticism: Casio
Oil on canvas 150x120cm 1993

画像: 谷文達  Gu Wenda(中国) Drama of Two Culture Formats Merge Ink gouache on rice paper 137x68.5cm 8panels 1987

谷文達  Gu Wenda(中国)
Drama of Two Culture Formats Merge
Ink gouache on rice paper 137x68.5cm 8panels 1987

画像: 邱志杰  Qiu Zhijie(中国) Tattoo 2 C-print, 100x80cm 3点 1996

邱志杰  Qiu Zhijie(中国)
Tattoo 2
C-print, 100x80cm 3点 1996

画像: 張 洹  Zhang Huan(中国) 1993-1994

張 洹  Zhang Huan(中国)
1993-1994

画像: 陸根丙  Yook Keun Byung(韓国) The Sound of landscape + eye for field Vide Monitor, soil サンパウロビエンナーレ出品 1989

陸根丙  Yook Keun Byung(韓国)
The Sound of landscape + eye for field
Vide Monitor, soil サンパウロビエンナーレ出品 1989

画像: 李康昭  Lee Kang So(韓国) Untitled 75031 Wood,Plaster,Iron,Chalk,photos 1975

李康昭  Lee Kang So(韓国)
Untitled 75031
Wood,Plaster,Iron,Chalk,photos 1975

画像: 李升澤 Lee Seung Taek(韓国)

李升澤 Lee Seung Taek(韓国)

画像: 金成培 Kim Sung Bae (韓国) Haha Pine tree Pine tree 1987

金成培 Kim Sung Bae (韓国)
Haha Pine tree
Pine tree 1987

画像: 金壮燮 Kim Sung Bae (韓国) Painting on matter Courrugated fiber board, pigment 1987

金壮燮 Kim Sung Bae (韓国)
Painting on matter
Courrugated fiber board, pigment 1987

画像: Project 2 オル太  Jang-Chi メグ忍者 川村和秀 斉藤隆文 井上 徹 長谷川義朗 Walking Cascade Camera, video tape, etc. 2016

Project 2
オル太  Jang-Chi メグ忍者 川村和秀 斉藤隆文 井上 徹 長谷川義朗 
Walking Cascade
Camera, video tape, etc. 2016

画像: Project 2 タムラサトル Tamura Satoru Point of Contact #2 電球、配線、 etc.  2016

Project 2
タムラサトル Tamura Satoru
Point of Contact #2
電球、配線、 etc.  2016

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