今週・来週と「カレイド シアター」が上映するのは、リメイク・リブート、柳の下にドジョウはいっぱいシリーズいろいろです。

 まず、「リブート」と「リメイク」の違いとはなになのでしょう。
「リメイク」という言葉は昔からよく聞いていますよね。
古いところで言えば、フランク・シナトラが主演した1960年の「オーシャンと11人の仲間」が、ジョージ・クルーニー主演で2001年の「オーシャンズ11」として作り替えられたのは、「リメイク」です。設定もストーリーもほぼオリジナルを踏襲していて、監督や俳優、時代的なところが変わっています。
フランス映画の「赤ちゃんに乾杯」をハリウッドで「リメイク」した「スリーメン・アンド・ベイビー」など、外国作品をもとにアメリカ的に描き直すものも「リメイク」です。
 つまり、「リメイク」というのは、オリジナルの基本となるところ、アイデア・ストーリー・キャラクターなどを残して、新しい監督や出演者を迎え、設定を時代や場所に合わせたものに作り直すことを言います。
 黒沢明監督の「用心棒」をリメイクしたのが「荒野の用心棒」、「七人の侍」をリメイクしたのが「荒野の七人」。椿三十郎をリメイクしたのが森田芳光版「椿三十郎」。という具合です。
 森田版「椿三十郎」はシナリオもそのまま使ってのリメイクでしたが、「隠し砦の三悪人」を樋口 真嗣(ひぐち しんじ)がリメイクした「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」はリメイクと言いながら、かなり大胆な改変を加えたものでした。
 シナリオをそのまま使ってのリメイクということでは、ヒッチコックの「サイコ」をカラーにしただけであとはほぼ同じに作ったというガス・バン・サントの「サイコ」という作品もありました。

 さて。では、「リブート」とはなんでしょうか。こちら、映画用語としては新しいもので、私の記憶に寄れば、日本でこの言葉を使い始めたのは「バットマン」シリーズが、2005年「バットマン・ビギンズ」から始まる「ダークナイト」三部作にうまれかわったときだと思います。
 もともとはコンピュータ用語で「再起動」という意味の言葉です。
主にシリーズもので、一度終わったものや、あまりヒットしなかったものを、監督と俳優を入れ替えるだけではなく、設定やストーリーなども書き換えてしまい、新たなものとして再始動させることを「リブート」と呼ぶようになりました。
 例えば先ほどの「バットマン」で言えば、まずDCコミックで1939年から始まったバットマンは、実写映画もありましたが60年代半ばにテレビ番組化され、70年代にはアニメ化されます。
久しぶりに映画化されたのが1989年の「バットマン」で、このシリーズは4本あり、バットマン俳優は3人います。四本目の「バットマン アンド ロビン ミスターフリーズの逆襲」が1997年の公開でした。
 この間、コミックの方も80年代に入って人気が落ちてきたのでいったん終了し、新しいコンセプトと書き手で再始動しました。それが1986年の「ダークナイト・リターンズ」だったのです。

 リブートされた映画バットマンもこの『ダークナイト』シリーズを踏襲しています。
 まず、バットマンというキャラクターがただの勧善懲悪スーパーヒーローではなく、心の闇を抱えた複雑なキャラクターになっていること。こちらのシリーズでは、バットマンが、いかにして少年ブルース・ウェインから、青年大富豪ブルース・ウェインにしてゴッサムシティを守る闇の騎士バットマンになったかが描かれます。
 シリーズもの、シークエルの全日談、なる前の話のことをプリクエルと言いますが、「ダークナイトシリーズ」はプリクエルであるともいえるわけです。
 しかし、「ダークナイト」シリーズのバットマンは、三本で完結し、その後89年からの、荒唐無稽アクションヒーローもの「バットマン」シリーズには全く続きません。
つまり、「ダークナイト」シリーズは、キャラクターと設定は踏襲しているけれど、全ての旧映像作品のどこにも続かない、新しいシリーズ、だったわけです。それが、「リブート」というものなのですね。

バットマン、ときたら、スーパーマン、ですよね。
スーパーマンもDCコミックから登場したスーパーヒーローでした。戦争中も連続もののアニメ映画化され、50年代にはテレビ化されて人気を博しました。

実写映画化は1978~87年にかけて4本製作されています。リチャード・ドナーの監督で、クリストファー・リーブスがスーパーマンを演じています。ちょうど、スターウォーズから始まるSF映画ブームにのって、懐かしのヒーローがよみがえったわけですね。
 その後、1993年から2011年まで、アニメ・実写ドラマから、若き日のクラーク・ケントを描く青春ドラマまで、テレビではコンスタントな人気を持ち続けていたスーパーマン。
 「バットマン」のリブート、「バットマン・ビギンズ」が2005年ヒットしたので「スーパーマン」も、と企画されたのが2006年の「スーパーマンリターンズ」でした。「Xメン」シリーズをヒットさせたブライアン・シンガー監督によってリメイクされたスーパーマンは、「スーパーマン2 冒険篇」の続きになる話で、5年ぶりに地球に帰ってきたスーパーマンの物語になっていました。しかし、これが思ったよりもヒットせず、このリメイク作品はこれ一本でおしまいになってしまいます。
 とはいえ、せっかく映画化権を持っているスーパーヒーロー、生かさなけりゃもったいない。というわけで、最初の「スーパーマン」シリーズも、「スーパーマンリターンズ」も、無かったことにして、全て最初からやり直す、新シリーズを再始動させるリブートに踏み切ったのが「マン・オブ・スティール」でした。

 アメリカン・コミックス界では、ひとつずつのシリーズのヒ-ローたちがシリーズの枠を超えて協力する、ヒーロー・チームものがまた一つのシリーズになっています。
 日本で言うなら、仮面ライダーと戦隊モノが一緒になる、という感じですね。
 マーベル・コミックスでは、それがアベンジャーズになり、DCではエクステンデット・ユニバースになります。
 こちらの「マン・オブ・スティール」のスーパーマンは、エクステンデット・ユニバースへの序章のようなもので、今年「バットマンVs スーパーマン ジャスティスの誕生」が公開され、本格的にエクステンデット・ユニバースが起動しました。

 二大DCヒーローのリブートが揃ったところで、今度はマーベル・ヒーローのリブートに行きましょう。

 マーベルの場合、映画会社との契約が複数にわたっているため、ワーナーがほぼ映画化権を持っているDCコミックスと違い、ちと、ややこしいことになっています。

 今年の公開作「キャプテン・アメリカ シビル・ウォーズ」ではアベンジャーズが二つに分裂して戦うことになりますが、アイアンマンが新しい戦力としてリクルートするのがスパイダーマンです。
 1963年スタン・リーのコミックとして誕生したスパイダーマンは1977~79年に映画化され、その人気を引き継ぐ形でテレビ映画化されています。

 その後、スパイダーマンは2002年に映画化されてヒット、04年07年と三作目まで作られました。スパイダーマン役にはトビー・マクガイア。地味で真面目な脇役タイプの彼がスーパーヒーロー役というのには驚きましたが、科学オタクでジャーナリスト志願の奥手な少年というピーター・パーカー役には確かにピッタリでした。
 2007年、三本目でひと段落したのは、20代半ばのはずのピーターを32歳のマクガイアが演ずることがそろそろ無理になってきたから、ということもあるでしょう。もっとも、最初の計画ではスパイダーマン6まで作るつもりだったようです。一作目の監督で制作も担当していたサム・ライミの降板が、シリーズ終了のおおきな理由でした。
 
 そしてスパイダーマンは2012年「アメイジング・スパイダーマン」としてリブートされます。リブートの場合、もう一度最初からやり直すという意味もあり、ストーリーや脇役の設定などが変更されることもあります。「アメイジング・スパイダーマン」の場合、敵役の設定、恋人の設定などが変わり、それに伴いストーリーにもかなりの変化が見られました。2014年「アメイジング・スパイダーマン2」が公開され、3へ続くような終わり方をしたのですが、このリブートシリーズ、突然打ち切りになってしまいました。
 これで終わったのかと思っていたら、今度は「アベンジャーズ」の一員として「スパイダーマン ホームカミング」というタイトルでリブートされることになったようです。

マーベル・コミックの作品は、映画化に際して作品ごとに製作会社が映画化権を買って映画にしていたのですが、マーベル社は自前で制作した方がもうかるのではないかと、製作会社「マーベル・スタジオ」を設立。作品ごとに違う会社と共同制作し、その会社には配給をまかせる、という形で自社制作を始めました。例えば、「X-MEN」と「ファンタスティック・フォー」は20世紀フォックスと製作して配給は20世紀FOXに任せ、「スパイダーマン」はソニーと、といった具合です。
2009年にディズニーがマーベルを買収したことによって、マーベル・コミックの映画化はほとんどディズニーが手がけるようになりました。ディズニー以外の会社が手がけてきたマーベル・ヒーローたちの映画も、単独の作品だけでなく、マーベル・シネマティック・ユニバースと呼ばれるマーベル作品のヒーローたちが集合して作られる映画世界に参加できるようにして、二回儲けよう、と、ディズニー以外の会社が考えた、ということですね。
そのためには、マーベル・シネマティック・ヒーローとしてヒーローやストーリーの設定を変えなくては行けなくなり、リブートする必要がでてくる、というわけです。

というわけで、今週はリブートとはなにかについて、アメコミヒーローものを例にとり、解説してきましたが、今週の最新作をご紹介する「カミング・スーン」のコーナーも、リブート作品です。
 
1984年に制作され、1987年に続編も作られた「ゴーストバスターズ」です。一本目は大ヒットしたのですが続編は芳しくなく、その後作られることのなかった「ゴーストバスターズ」を、ニューヨークでゴーストを捕まえる四人組という設定をそのままに、女性四人でリメイクしました。ヒットしたらシリーズ化をもくろんでいるという点で、単発のリメイク作品というより、シリーズ再起動のリブート作品というべきでしょう。

 リブート作品の場合、そのきっかけとして、資格効果技術の格段の進歩をあげることができます。27年ぶりに再起動した本作はまさにその恩恵を受けたものといえます。
オリジナルが作られた80年代半ばは、コンピュータによる特撮が広まりつつあった時代です。当時ゴーストバスターズのゴーストたちがCGで描かれているというだけで話題になったものでした。
 今はゴーストだけではなく、俳優以外の何でもCGで描いてしまえる時代になりました。まぁ、俳優だってCGで描くことができるのですが、そうすると実写ではなくなりアニメになってしまうので、それは別の話として、ですが。

 今回の見所はゴーストの特撮も一つですが、なによりも女性コメディアン4人の競演です。
 この数年アメリカでは、いい年をしているのだけれど中二病の男子コメディのヒットに続いて、女子本音ぶっちゃけコメディがつくられ、かなりのヒットを記録しています。今回の四人はそんな女子コメから出てきた人たちです。コメディ劇団出身やスタンダップコメデテアン、コメディライター出身の人気者四人です。
 テンポのいい掛け合い、下ねたも辞さないギャグ感覚、体当たりのフィジカルコメディを、いい大人の女たちが真面目に演じています。一発芸、ではなく、ちゃんと「演技」として成立させているところが、すごいなぁと思います。

 ニューヨーク。名門コロンビア大学の物理学科教授をつとめるエリン。若いころ友達のアビーと書いたゴースト本がネットで出回っていることを知り大慌て。そんな、非科学的なことを考えていたと知られたら、長年頑張りもう少しで一生教授でいられる権利をもらえそうなのに、全てがおじゃんになってしまいます。本のネット販売を止めてほしいと、アビーのいる学校に直談判に乗りこむエリンでしたが、エリンを裏切り者だと思っているアビーが素直に頼みを聞くはずはありません。
 ところが、エリンが本の存在に気付いたのは、本を見てエリンにゴースト退治を依頼してきた人がいるからだと知り、アビーの態度は急変します。アビーが助手のジリアンとともにずっと研究してきたゴーストの存在を証明するチャンスだ、とばかりに、嫌がるエリンを引っ張って、ゴーストが出るという屋敷にでかけます。
 そこで、19世紀のまま封印された地下室に閉じ込められていたゴーストに遭遇しビデオに収めた三人は大興奮。その姿がyoutubeにあげられて、エリンは首になってしまいます。そこで、やはり大学を追い出されたアビーとジリアンと一緒に、ゴースト調査会社を設立します。地下鉄でゴーストと遭遇した地下鉄職員のパティを加え、ニューヨーク中に放たれたゴーストを捕獲するため、エリンたち四人はゴーストバスターズとなり、ジリアンの開発した様々な機械を担いで出動していきます。

上映劇場はTOHOシネマズ日劇など全国公開。ムービックス川口でも上映されます。
8月11日から先行公開。19日から全国ロードショー公開です。

旧作のファンにはうふふとうれしくなってしまうような仕掛けもありますよ。

画像: 映画 『ゴーストバスターズ』予告ラスボス登場編 youtu.be

映画 『ゴーストバスターズ』予告ラスボス登場編

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