「キング・オブ・エジプト」は題名通り、古代エジプトを背景にした一大スペクタクルである。
エジプトを舞台にした歴史劇というと、誰もが最初に連想するのは「十戒」だろう。紅海がパカッと割れてユダヤ人の行列が海底を行くシーンが、すぐに頭に浮かぶ。
ストーリーの骨子は、ユダヤ人の大群を率いて約束の地へ急ぐモーゼと勇猛なエジプト大軍を率いるファラオの対立だが、いずれも人間と人間の争いである。いや、モーゼには神のご加護があった。チャールトン・ヘストン演じるモーゼの個性があまりにも強烈なので、神の存在をつい忘れてしまっていた。

画像1: ©Photo Courtesy of Lionsgate.

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 さて「キング・オブ・エジプト」だが、古代エジプト人が信仰していた太陽神ラーを頂点とする神々のヒエラルキーの中でも、最強最悪といえる砂漠の神セトが実権を握り、他の神々も従え、人間も支配することに。セトに王座を奪われた天空の神ホルスは意気消沈してしまう。
一方、人間はセトの圧政によって塗炭の苦しみをなめていたが、若い泥棒ベックが大胆にも神殿の宝物庫に忍び込んで、光り輝く球体を奪う。それこそがホルスが王座に復帰するためのは必須のアイテム、“神の眼”だった。

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セトに囚われた恋人ザヤを救出し、人間をセトの暴虐な支配から解放するため、ベックはホルスとともに旅に出た。
天空の彼方にいるラーに会ったり、セトが送り込んでくるさまざまな異形の神々と闘い、愛の女神や知恵の神を味方につけて、もう一つの“神の眼”が置かれているピラミッドへと向かう。

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 人間と神が共存するというかつてない設定の作品であるが、ストーリーの骨子は何度も試されて観客の興味を引くこと間違いなしの冒険アクション、さらに貴種流離譚、ロマンス要素を盛り込んで仕上げてある。
ベックは当初けちなこそ泥として登場するが、ザラと出会ったことで変わっていく。本作の構成は奸臣に宮廷を追われた王がこそ泥少年に救われて……という「バグダッドの盗賊」(1940)を思い出させる。“神の眼”の争奪戦、セト派遣軍団との攻防、宝物庫でのさまざまなトラップは、ゲームの世界そのものだし、「インディ・ジョーンズ」シリーズを思い出す人も多いだろう。

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 スペクタクルの魅力を十分に発揮する巨大なピラミッド、スフィンクスといった建造物、モブ・シーン、巨大なサイズの神々との戦闘シーン。CG処理がなされているのは承知していても、圧倒されずにはおかない迫力だ。
監督はエジプト生まれで、3歳の時にオーストラリアに移住したレックス・プロヤス。「クロウ/飛翔伝説」(94)、「ダークシティ」(98)といった限定された狭い場所をバックに、ダークでノワールな世界が展開する作品を撮っていたことを考えると、ビッグスケールの一大エピックを手掛けたことは彼のキャリアの変換点となる作品かもしれない。

 オーストラリアで撮影され、キャストには同地の俳優が多く起用されている。ベック役には、「マレフィセント」(14)でオーロラ姫を目覚めさせる王子を演じたブレントン・スウェイツ、ホルスにはデンマーク出身のニコライ・クスター=ワルドーが扮している。「300」(07)、「エンド・オブ・キングダム」(16)とヒーローを演じることの多いジェラルド・バトラーがセトを演じている。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

画像: 『キング・オブ・エジプト』予告編 youtu.be

『キング・オブ・エジプト』予告編

youtu.be

監督: アレックス・プロヤス『アイ、ロボット』

出演:ブレントン・スウェイツ『マレフィセント』、
ニコライ・コスター=ワルドー「ゲーム・オブ・ストーンズ」シリーズ、
コートニー・イートン『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、
エロディ・ユン『G.I.ジョー バック2リベンジ』、
チャドウィック・ボーズマン『ブラックパンサー』、
ジェラルド・バトラー『300 <スリーハンドレッド>』、
ジェフリー・ラッシュ『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ

配給: ギャガ

9月9日(金)TOHOシネマズスカラ座ほか全国超拡大公開

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