映画『シアター・プノンペン(原題: The Last Reel)』

これが初監督作となるカンボジアの新鋭女性監督ソト・クォーリーカーが手がけ、第27回(2014年)東京国際映画祭「アジアの未来」部門で国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞した(映画祭上映時タイトル『遺されたフィルム』)。

画像: 映画『シアター・プノンペン(原題: The Last Reel)』

ポル・ポトによる独裁政権時代をくぐり抜けた1本の恋愛映画をめぐり、現代の女子大生がカンボジアの過酷な1970年代を生きた家族の真実に向き合う姿を描くドラマ。
若かりし頃の母親が女優として出演した映画を観たことをきっかけに、ヒロインが家族にも知らされていなかった両親の秘密やカンボジアの歴史に触れていくさまをつづる。主演は同国の女優であるマー・リネット。

登場人物のさまざまな思いがせめぎ合う様子に心が揺さぶられる。珍しいね、カンボジア映画。
異国情緒溢れる映像が素敵だなあ。黒歴史から恋愛、家族の再生、古都の美しい風景までカンボジアのすべてが詰め込まれた作品と言えるかも。
女性監督らしいソフトな映像だけれど悲惨な歴史を物語の背景としてきっちり描いてる。当時何があったのか? を描いているわけではなく、それが現代にどのように伝わっているのか? を問い掛けている感じかな。しかもそれをカンボジア人が自分たちの手で作っていることに意義がありそう。家族の再生とカンボジアの悲劇の歴史を織り交ぜながら、その過去や闇(?)と真正面に向き合うことで現在や未来を見据えていくという構成が見事だろう。

映画の中で映画を制作するという手法には監督の“映画愛”や“映画への想い”が溢れてるね。おまけにサスペンスやメロドラマをスパイスとして効かせて楽しませてくれる。カット割りがすっきりしないところがあったり、物語の展開が前半もったりしていたり、俳優たちの演技が荒削りだったりするけれど、失われた映画の制作を通してカンボジアの旧世代と新世代が互いに理解しようとするところや映画制作を通して明かされる真実は見応えたっぷりだ。
“赦し”がテーマなのかな…。しっかりと重い作品だけに観後どっと疲れた…。カンボジア映画復興という意味でも、歴史や現代のカンボジアを知る意味でも見る価値がある作品だ。虐殺された映画人に捧げられたエンドロールには思わず涙が…。

シネフィル編集部 あまぴぃ

画像: 「シアター・プノンペン」予告編 youtu.be

「シアター・プノンペン」予告編

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