梅雨時期にふさわしい題名のホラー映画を紹介しよう。

「呪怨」シリーズでハリウッドに進出、Jホラーの旗手となった清水崇が監督。
この連載の二回目で取り上げた「7500」(2014)以来の劇場公開映画となる。それも4DXシステムという体験型鑑賞方式を使った画期的な作品だ。

画像1: (c)2016「雨女」製作委員会

(c)2016「雨女」製作委員会

 ヒロイン理佳は、男手一つで育てられたせいか、引っ込み思案なところがあり、恋人隆の浮気を疑いながらも、追及できない。そんな彼女は雨の日に決まって同じ夢を見る。踏切に黄色いレインコートを着て、赤い長靴をはいた少女が立っている。びしょ濡れの黒服をきた女が男の子を抱いたまま踏切にうずくまり、電車に轢かれてしまう。踏切のカンカンとなる音、バシャバシャと降る雨音。黄と赤と黒の色彩。音と色の強烈な印象に、右からいきなりやってきてあっという間に通過していく電車がとどめをさす。

画像2: (c)2016「雨女」製作委員会

(c)2016「雨女」製作委員会

 理佳が勤める雑貨店にやってきた母子づれ——同僚の話では有名モデルだというが、その名前を聞くと、理佳に衝撃が走った。隆がケータイでよく話している女、YURIだった。隆は単なる知り合いだと言い訳していたが、その言葉をもはや信じることはできない。バスタブにつかっていると、体が引っ張られ、次の場面では水中で何者かに下へ下へと引きずり込まれていく。気づくとまたバスタブの中だった。本作では雨以外にもこうした水関係の描写が多く、ウェットで陰気な雰囲気を醸し出している。

画像3: (c)2016「雨女」製作委員会

(c)2016「雨女」製作委員会

「7500」では飛行機内という限定された場所を舞台に、さまざまな人々が怪奇現象に遭遇していたが、今回はヒロイン一人に悪夢が襲いかかる。雨女の悪夢は何度も繰り返され、「呪怨」同様に封印されていた過去が明らかになり、Jホラーらしい怨念の世界が展開されることになる。

 4DXシステムとは、一口で言えば視覚以外の感覚に訴えるもので、ミストや風が前の座席の後部から吹き出したり、座席が揺れたりする。雨や水の場面には当然ミストの噴出があり、体が濡れる(もちろんびしょびしょになるほどではない)。ショッキングなシーンでは座席がグイーンと動いて、テーマパークのアトラクションを思い出させてくれる。このシステムは韓国CJ 4DPLEX社が開発したもので、四つの座席がつながっていて振動するから、左右の端の座席の方が揺れる度合いもすごい。現在33劇場に導入されており、本作はユナイテッド・シネマ系列、109シネマズ系列、コロナワールド系列の24館で公開が予定されている。

 ヒロインの理佳にはモデル出身で、「TOKYO TRIBE」でデビューし、「東京無国籍少女」で初主演を果たした清野菜名が扮している。隆には俊太郎、YURIにはモデルとしても活躍している高橋ユウ、父親に田口トモロヲ。4DX効果といえどもそうそう長く引っ張られると緊張の糸も切れるというもの。そういう点でも35分は適正な上映時間と言える。短時間でも過不足なくストーリーを展開させる監督の手腕にも感心させられる。

画像: 6.4(土)4DX®限定公開『雨女』予告編映像 youtu.be

6.4(土)4DX®限定公開『雨女』予告編映像

youtu.be

配給:ユナイテッド・シネマ

撮影現場の清水崇監督

画像: 清水崇監督

清水崇監督

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

6月4日(土)より 全国のユナイテッド・シネマ他にて4DX®限定公開

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