アヴァンギャルドのハードコア!!
実験映像界の生ける伝説・松本俊夫の劇薬、視覚のサイケデリアに刮目せよ!!

『混沌が意味するもの──松本俊夫アヴァンギャルド映像特集上映』

日本実験映画のパイオニアにして、理論面でも前衛芸術運動を牽引した映像作家・松本俊夫の著作活動を網羅した集成『松本俊夫著作集成』(阪本裕文=編 全四巻、森話社)の刊行開始を記念して、松本俊夫監督の記録映画・実験映画・ビデオアートを特集上映する。

画像: 「ファントム=幻妄」

「ファントム=幻妄」

日本が世界に誇るアヴァンギャルド映像作家・松本俊夫の実験映像作品を全時代にわたって総特集!

彫刻家 流政之の幻のテレビ番組、
寺山修司の詩を岸田今日子が語る作品、
『薔薇の葬列』と同時期に撮影のもう一つのピーター出演作

松本俊夫が総合プロデューサーを務め、横尾忠則が造形ディレクターを務めた70年大阪万博でのパフォーマンス『スペース・プロジェクション・アコ』の記録映像など激レア発掘も含めてHDリマスター版で一挙公開!!

日本の現代音楽の歴史に、歴然と輝く名だたる作曲家とのコラボーー

プログラムに組み込まれた湯浅譲二は、もちろんのこと一柳慧、三善晃、秋山邦晴、近藤譲などが参加

そして、トークゲストには、美術作家・石田尚志、松本作品の音楽を多数手がけた作曲家・湯浅譲二ら豪華ゲストが登場!!

画像: 『アートマン』

『アートマン』

60年代から2000年台までの松本俊夫の世界を一堂に---
フィルム映像もHDデジタルリマスター版で上映!

アヴァンギャルドとドキュメンタリーの統一を模索した『西陣』(1961)や『石の詩』(1963)などの初期の前衛記録映画をはじめ、3面マルチプロジェクションを使った『つぶれかかった右眼のために』(1968)、ビデオ変換装置「スキャニメイト」を日本で初めて使用したビデオアート『モナリザ』(1973)や、圧倒的な視覚のサイケデリアを展開する『アートマン』(1975)、『色即是空』(1975)などの名作はもちろんのこと、今回は大阪万博「せんい館」でのマルチ・プロジェクション『スペース・プロジェクション・アコ』(1970)、現段階での最新作『蟷螂の斧(第三部 万象無常)』(2012)など、上映機会の少ない8mmフィルム作品や新発見作品も一挙公開。
それぞれの時代で4つのプログラムを構成した。オリジナルフォーマットがフィルムの作品は、すべて最新のHDデジタルリマスター版で上映。

【上映スケジュール】
■5/28(土)
・16:00開場/16:10上映【Dプログラム】107分
・18/20開場/18:30上映【Aプログラム】100分
トーク〈松本俊夫と前衛記録映画〉 ゲスト:阪本裕文(稚内北星学園大学准教授)×江口浩(映画研究者)×佐藤洋(映画研究者)
■5/29(日)
・16:00開場/16:10上映【Bプログラム】90分
トーク〈松本俊夫と映画の変革〉
ゲスト:西嶋憲生(多摩美術大学教授)×平沢剛(映画研究者)×阪本裕文
・18:50開場/19:00上映【Cプログラム】108分
トーク〈体験的日本実験映画史〉
ゲスト:石田尚志(美術・映像作家)×西村智弘(美術・映像評論家)
■5/30(月)
・20:50開場/21:00上映【Aプログラム】100分
■5/31(火)
・20:50開場/21:00上映【Bプログラム】90分
■6/1(水)
・19:20開場/19:30上映【Uプログラム《湯浅譲二音楽作品特別プログラム》】90分
トーク〈湯浅譲二の映画音楽〉
ゲスト:湯浅譲二(作曲家)× 川崎弘二(電子音楽研究者)
■6/2(木)
・20:50開場/21:00上映【Cプログラム】108分
■6/3(金)
・20:50開場/21:00上映【Dプログラム】107分

【A program】アヴァンギャルドとドキュメンタリー:前衛記録映画の時代 100分

「西陣」(Nishijin/1961/35mm/26min)
織工の労働と古い伝統の絡み合いを題材とする記録映画であり、松本の前衛記録映画の実践といえる作品。京都で活動していた「京都記録映画をみる会」の自主上映運動を基盤として製作された。撮影は東宝争議を主導したことで知られる宮島義勇、作中で能『土蜘蛛』を舞うのは観世栄夫。 製作:浅井栄一/脚本:関根弘・松本俊夫/撮影:宮島義勇/音楽:三善晃/語り:日下武史

「石の詩」(The Song of Stone/1963/16mm/24min)
彫刻家・流政之の取材のために来日した『ライフ』誌のカメラマン、アーネスト・サトウが撮影した香川県木田郡庵治村の石切り場の写真と、流による彫刻の写真を素材として、テレビ番組として再構成した作品。1963年2月28日にTBSテレビにて放送された。 脚本・編集:松本俊夫/写真:アーネスト・サトウ/音楽:秋山邦晴/言葉:流政之

「母たち」(Mothers/1967/35mm/37min)
アメリカ、フランス、ベトナム、ガーナの四カ国でロケを行い、それぞれの社会的背景のなかに生きる母たちの姿を捉えた作品。プリマハム株式会社のPR映画であるが、いわゆるPR映画色は払拭されている。作中の詩を書いた寺山修司は、撮影旅行にも途中まで同行した。 製作:工藤充/脚本:松本俊夫/撮影:鈴木達夫/詩:寺山修司/音楽:湯浅譲二/語り:岸田今日子

「つぶれかかった右眼のために」(For the Damaged Right Eye/1968/16mm x3/13min)
1968年に草月アートセンターで開催されたシンポジウム「なにかいってくれ、いま、さがす」で上演された、映写機を3台使用したマルチ・プロジェクション作品。社会的なドキュメントの断片がフレームの枠を越え、多層的に衝突する。5/28の上映のみ、初演の際に行われたストロボ演出を再現する。 製作:工藤充/脚本・編集:松本俊夫/撮影:鈴木達夫/音楽:秋山邦晴

【B program】眩暈の装置1:実験映像の時代 90min

「エクスタシス=恍惚」(Ecstasis/1969/16mm/10min)
劇映画『薔薇の葬列』と同時期に制作された作品。首を左右に振って恍惚を身振りで表すエディ(ピーター)、手を広げて観客へ迫ってくるゲバラ(内山豊三郎)。これらのショットのミニマルな反復が、観客をトランス状態に導く。 製作・脚本・編集・音楽:松本俊夫/撮影:鈴木達夫

「スペース・プロジェクション・アコ(記録版)」(Space Projection AKO (Document)/1970/16mm/15min)
松本が総合ディレクターを務めた、大阪万博せんい館で上演されたマルチ・プロジェクション作品。10台の映写機、8台のスライド投影機によって、一人の少女のイメージを館内ドームの全方位に投影する。本映像は、館内の様子を全編記録したもの。 総合dir.:松本俊夫/造形dir.:横尾忠則/映像dir.:鈴木達夫/音響dir.:秋山邦晴/照明:今井直次/展示:福田繁雄・植松国臣・吉村益信/ロビー人形制作:四谷シモン/作曲:湯浅譲二

「メタスタシス=新陳代謝」(Metastasis/1971/16mm/8min)
ダダを意識した便器の映像を、医療用の映像機器によって電子的に加工・変形した、ビデオアートの先駆的作品。濃淡の諧調が、濃度に応じて異なる色相に変調される。グラフコンテに従ってリアルタイムで装置を操作し、モニターに表示される映像を、フィルムで再撮影して完成された。 製作・脚本・装置操作:松本俊夫/撮影:杉山昭親/音楽:一柳慧

「オートノミー=自律性」(Autonomy/1972/16mm/12min)
『メタスタシス』と同じ手法で、波打ち際の映像を電子的に加工・変形した作品。本作では、装置のパラメータは事前に設定され、人為的な操作は行われていない。これによって色相は、自動的・自律的に変化してゆく。 製作・脚本・装置操作:松本俊夫/撮影:杉山昭親/音楽:湯浅譲二

「エクスパンション=拡張」(Expansion/1972/16mm/14min)
前二作品に続く、医療用映像機器によって加工・変形する手法の発展形といえる作品。『エクスタシス』『スペース・プロジェクション・アコ』の映像を引用し、その色相を電子的に変調し、編集を加えている。
製作・脚本装置操作:松本俊夫/撮影:鈴木達夫・杉山昭親/音楽:一柳慧

「モナリザ」(Mona Lisa/1973/16mm/3min)
東洋現像所(現イマジカ)に導入された映像合成装置「スキャニメイト」を使用して、モナリザの映像を電子的に加工・変形した作品。松本は、当時テレビCMでもスキャニメイトを活用した実験を行っていた。 製作・脚本・音楽:松本俊夫/素材撮影:鈴木達夫・杉山昭親

「フライ=飛ぶ」(Fly/1974/16mm/5min)
自身が手がけたテレビCMの映像を引用し、腕に羽を付けた男が羽ばたく様子を電子的に加工・変形した作品。モニター映された映像をフィルムで再撮影する際に撮影コマ数を変化させ速度の変化を生み出している。 製作・脚本・音楽・装置操作:松本俊夫/撮影:杉山昭親・石井尋成

「アンディ・ウォーホル=複々製」(Andy Warhol: Re-reproduction,/1974/16mm/23min)
展覧会のため1974年に来日したアンディ・ウォーホルの姿を撮影したフィルムを素材とした作品。プリズムレンズによってウォーホルの姿を増殖させながらスクリーンを再撮影するという手法がとられている。 製作・脚本:松本俊夫/撮影:杉山昭親/音楽:湯浅譲二

【C program】眩暈の装置2:実験映像の時代 108分

「青女」(A Girl/1975/16mm/30min)
一人の女性が森の中をさまよい、海辺にたどり着き、波間に消えてゆくまでの様子を幻想的に描いた叙情的な作品。同時期に制作された『ファントム』『アートマン』と同じく、赤外線フィルムを使用することで、非現実的な色彩感を表現している。 製作・脚本:松本俊夫/撮影:杉山昭親/音楽:一柳慧

「ファントム=幻妄」(Phantom/1975/16mm/10min)
海辺、ヨガのパフォーマンス、赤髪の女性、空中に浮かび都市を見下ろす眼球、不可思議な庭園など、妄想的なヴィジョンを様々な手法で表現し、それら異質なイメージを結合した作品。赤外線フィルムの色彩効果が絶大。 製作・脚本:松本俊夫/撮影:杉山昭親・柿原勝彦/合成:山田孝/音楽:近藤譲

「色即是空」(Everything Visible Is Empty/1975/16mm/8min)
サイケデリックな幻覚体験を映画に持ち込んだ作品。般若心経が一文字ずつ鮮やかな色彩のフリッカーをともなって5回繰り返される。この反復は次第に激しさを増して観客をトランス状態に誘導し、眩しい光のイメージに収斂する。 製作・脚本:松本俊夫/撮影:辻嘉行・栗田豊通/音楽:一柳慧

「アートマン」(Atman/1975/16mm/11min)
河原に佇む般若の面を被った人形の周囲を視点が激しく旋回し、強烈な眩暈の感覚を与える国内実験映画の傑作。今回上映するHDデジタルデータは、監督立会いのもとでカラーコレクションをやり直した完全版であり、赤外線フィルムを使用した独特の色彩が、監督の意図に忠実に表現されている。
製作・脚本:松本俊夫/撮影:山崎博・高間賢治/音楽:一柳慧

「殺人カタログ」(Murder Catalog/1975/VTR/10min)
近年発見されたビデオ作品であり、オープンリールテープからデジタル化した。ビデオアート的な長回し撮影のなかで、メタ的な循環性をブラックなイメージに結びつけている。 製作・脚本:松本俊夫/撮影:遠藤正

「エニグマ=謎」(Enigma/1978/16mm/3min)
宇宙空間を思わせる暗闇の中に、様々なイメージが吸い込まれてゆく作品。スキャニメイトを駆使し、映像をトンネル状に折り曲げることで、中心点に向かうイメージが表現される。 製作・脚本・撮影・美術・音楽:松本俊夫

「ホワイトホール」(White Hole/1979/16mm/7min)
『エニグマ』での手法を応用し、スキャニメイトの表現力を最大限に引き出したビデオエフェクト作品の集大成。以降、松本はビデオエフェクトの追求から離れてゆく。 製作・脚本・撮影・美術:松本俊夫/音楽:湯浅譲二

「コネクション」(Connection/1981/16mm/10min)
雲を撮影したフィルムを複雑なオプチカル合成で再構成し、時間と空間を幾重にも多重化させる作品。本作以降、松本の表現は関係性をテーマとしてゆく。 製作・脚本・撮影・編集:松本俊夫/合成:山田孝/音楽:稲垣貴士

「リレーション=関係」(Relation/1982/16mm/9min)
『コネクション』同様、時空間を多重化する作品だが、本作では、ビデオ合成が駆使されることで、画面内の関係性はさらに緻密化する。 製作・脚本:松本俊夫/撮影:松本俊夫・伊奈新祐/合成:奥山重之助/音楽:稲垣貴士

「シフト=断層」(Shift/1982/16mm/10min)
周回運動とズームで撮影された九州芸術工科大学校舎の映像が、ビデオ合成によって横方向に六分割され、ズレながら複雑な関係性を生成する。 脚本:松本俊夫/撮影:松本俊夫・伊奈新祐/合成:奥山重之助/音楽:稲垣貴士

【D program】物語の迷宮:制度・越境・記号生成の時代 107min

「ディレイエクスポージャー」(Delay Exposure/1984/8mm/3min)
九州芸術工科大学勤務時代に制作された8mm作品。カメラの自動露出機構を利用し、露出オーバーから適正露出に至るまでの数秒間の遅れを捉える。 製作・脚本・撮影:松本俊夫

「EEコントロール」(EE Control/1984/8mm/3min)
本作も九州芸術工科大学勤務時代に制作された作品。EEコントロールとは、カメラの自動露出機構の名称。短いショットの構成がさらに緻密になる。 製作・脚本・撮影:松本俊夫

「バイブレーション」(Vibration/1984/8mm/3min)
京都芸術短期大学に異動した時期に制作された作品。本作のコマ撮りとズームを組み合わせた表現は、『エングラム』や『スウェイ』でも使用される。 製作・脚本・撮影:松本俊夫

「スウェイ=ゆらぎ」(Sway/1985/16mm/8min)
『西陣』の作中で取り上げた釘抜地蔵は、いまも人々の信仰を集めている。ここに参拝する人々の姿を撮影した映像を、ズームを変化させて再撮影することにより、フレームの境界は乗り越えられ、記憶と現在が相対化される。 製作・脚本・撮影:松本俊夫/音楽:稲垣貴士

「エングラム=記憶痕跡」(Engram/1987/16mm/15min)
ポラロイド写真で撮影された風景が現実の空間からズレはじめ、松本が記憶についての話を繰り返し、坂を上る学生が一人ずつ減ってゆく。これまで追求してきた関係性のズレや虚実の対比というテーマを物語的に展開した。 製作・脚本・撮影:松本俊夫/音楽:稲垣貴士

「気配」(Old / New/1990/VTR/20min)
東欧民主化革命のニュースを観た松本は、『夜のダイヤモンド』で知られるチェコの映画監督ヤン・ニェメッツのことを回想し、過去と「今」、東欧と「ここ」を重ね合わせる。 製作・脚本・撮影:松本俊夫

「ディシミュレーション=偽装」(Dissimulation/1992/VTR/20min)
松本が老いや死について語りながら、自らの半生を振り返る過程で、自分自身を「松本俊夫」として偽装してゆく。作中ではインスタレーション作品『ナラトロジーの罠』や、劇映画『十六歳の戦争』から複数の場面が引用される。 製作・脚本・撮影:松本俊夫/音楽:中村滋延

「蟷螂の斧:第三部『万象無常』」(2012/DVD/35min)
『万象無常』は松本の企画・構成によるオムニバス映画三部作の第三部。参加作家が撮影してきた映像を、松本が解体するという方法がとられている。この匿名的かつ混沌とした映像は、東日本大震災を経た共同体のドキュメントにもなっている。 製作:佐野眞澄/企画・構成:松本俊夫/参加作家:タノタイガ・稲垣佳奈子・大木裕之・奥野邦利・田中廣太郎

【U program】作曲家・湯浅譲二音楽作品特別プログラム 90分

松本俊夫の映画にとって音楽家の存在は極めて大きい。今回は、松本の創作的パートナーの一人である作曲家・湯浅譲二が音楽を担当した松本作品をセレクトして特別プログラムを構成する。このプログラムのみの特別作品として、松本俊夫が監督し、湯浅譲二が音楽を担当した、近年発見されたばかりの貴重なPR映画『晴海埠頭倉庫』(1965)を上映する。
そして、湯浅氏をゲストにお招きし、名著『日本の電子音楽』の著者で電子音楽研究家の川崎弘二を聞き手に、松本俊夫との共同作業や、映画音楽についてのトークを開催する。器楽曲から電子音楽・テープ音楽まで、多彩な実験的手法を駆使した湯浅氏の創造性の源泉を探る。

「晴海埠頭倉庫」(Harumi Pier Warehouse/1965/16mm/33min)[特別上映]
近年発見された輸送経済新聞の製作によるPR映画であり、1965年に完成した晴海埠頭倉庫の業務を解説する。斬新なフレーミングと綿密なカメラワークを展開しており、企業のPR映画でありながら実験性に満ちた作品となっている。音楽は湯浅譲二による器楽曲とテープ音楽。 製作:小平亨/脚本:松本俊夫/撮影:高田昭/音楽:湯浅譲二/解説:小松方正

「スペース・プロジェクション・アコ(記録版)」(1970/16mm/15min)A pro参照
「オートノミー=自律性」(1972/16mm/12min)B pro参照
「アンディ・ウォーホル=複々製」(1974/16mm/23min)B pro参照
「ホワイトホール」(1979/16mm/7min)C pro参照

刊行される書籍

画像: 刊行される書籍

会場にて特別先行販売
『松本俊夫著作集成』第Ⅰ巻[一九五三─一九六五]
阪本裕文=編
616頁/6000円+税/2016年5月刊
森話社 shinwasha
101-0064 東京都千代田区猿楽1-2-3
Tel.03-3292-2636 Fax.03-3292-2638
www.shinwasha.com

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