「カミング・スーン」『ヘイル・シーザー』

5月13日から、東宝シネマズ シャンテ、東宝シネマズ新宿などで公開の「ヘイル・シーザー」をご紹介しましょう。
「ヘイル・シーザー」は、「ファーゴ」や「ノーカントリー」などでおなじみのコーエン兄弟の監督作品で、50年代初めのハリウッドを舞台にしたコメディです。ゴージャスな時代のデラックスな映画界の裏側を、ラグジュアリーなキャストで描きだします。今年のベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映されました。
 ハリウッドのメジャースタジオのひとつキャピトル・ピクチャーズ。たくさんのスターを抱えるスタジオには問題処理係が必要でした。スターたちのスキャンダルをもみ消し、わがままを聞き、なだめすかし、とにかく無事に撮影を終わらせ、プロモーションに駆り出し、次の現場に送り出す。それが問題処理係「何でも屋」エディ・マニックスの毎日の仕事です。
 今日も今日とて明け方からエディは大忙し。はめを外した新人女優のしりぬぐいから、大作歴史劇に対する宗教指導者たちの反対を抑えるための妥協点をみつけるための会議とか、文芸作品を得意とする名監督に押し付けた若手西部劇スターが、まったく演技ができないという監督からのクレームを処理するとか。分刻みの忙しさです。
 そんなエディに今日はさらなる難題が降りかかります。スタジオの命運をかけた聖書もの歴史大作の主演俳優であり、キャピトル・ピクチャーズの看板スターであるベアード・ウィットロックが、撮影中のセットから忽然と姿を消してしまったのです。しかも謎の人物ザ・フューチャーから脅迫状が…「10万ドル用意しろ。さもなくばウィットロックの命はないと思え)
 ザ・フューチャーの正体とは?
 その目的は?
 そして、ウィットロックの行方は???
 さらに、何でも屋の仕事のかたわら、個人的にも今日という日はエディにとって運命の転換点となるかもしれない日なのです。あまりの忙しさ、神経をすり減らす割に報われない仕事、スターたちのわがままに振り回される日々に、正直言ってうんざりしているエディに、将来有望な企業への転職の誘いが来ているのです。悩むエディ。
 エディの選択はいかに?!
 
看板スターの誘拐事件、赤狩り前夜のハリウッド、夢工場ハリウッドの映画スタジオの舞台裏を、スキャンダルもみ消し人が案内するというブラックコメディに、実はたそがれを迎えつつある映画産業への挽歌も加えて、最高にゴージャスなサスペンス・コメディに仕立てられた作品です。
 脚本賞や監督賞など4つのオスカーを受賞、カンヌ映画祭の常連でパルムドオル受賞者でもあるコーエン兄弟ですが、オスカーの演技賞を獲らせる名人でもあり、多くのスターがコーエン兄弟の映画に出たいと公言しています。気が合えば何回も同じ俳優を起用する監督でもあり、今回、ウィットロックを演ずるジョージ・クルーニーは4回目の登場です。他にも、主役エディを演ずるのは三回目のジョッシュ・ブローリンですし、スカーレット・ヨハンソンも二回目の登板です。初めてコーエン兄弟と組むチャニング・テイタムやレイフ・ファインズなど、本当に豪華なメンバーが勢ぞろいして、ハリウッド第二の黄金時代のスターたちを演じています。
 舞台になっている1950年代は、テレビの登場によって危機感を募らせたハリウッドが、映画の大作化、カラー化、大型化を進めた時代です。華やかなスターと豪華な作りのハリウッド映画は世界をうっとりさせ、第二の黄金時代を築きました。
 しかし、その裏側で冷戦と赤狩りの影響がハリウッドにも迫っている時代でもあり、光と影がきわだっていた時代ともいえるのです。
 ジョージ・クルーニーは現在のハリウッドでもリベラル派として有名なスターで、監督作には赤狩りの時代を描く「グットナイト アンド グットラック」という作品もあります。そんな彼が演ずる、なんにも考えていない大スターがある勢力によって誘拐され洗脳されるという設定などは、なんというか、セルフパロディのような面白さがあります。スカーレット・ヨハンソンが演ずるグラマーなブロンド女優は、「水着の女王」エスター・ウィリアムズを彷彿とさせますし、チャニング・テイタムが演ずるミュージカルスターは「踊る大ニューヨーク」のジーン・ケリーを思い出させます。このように往年のハリウッド映画史をなぞりながら見ると、魅力倍増。何回も楽しめる作品と言えるでしょう。
「ヘイル・シーザー」は、5月13日より、東宝シネマズ シャンテ、新宿、渋谷六本木など、東宝シネマズにて公開されます。

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