では、最新作をご紹介する「カミング・スーン」のコーナーです。
今週は4月16日から、渋谷・文化村ル・シネマ他で公開されるイタリア・スイス・フランス・イギリスの合作映画「グランドフィナーレ」をご紹介しましょう。

画像: 映画『グランドフィナーレ』本予告編 youtu.be

映画『グランドフィナーレ』本予告編

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「グランドフィナーレ」は、2015年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された作品で、アカデミー賞の主題歌賞にもノミネートされています。
 監督はイタリアのパオロ・ソレンティーノ。カンヌ映画祭では審査員賞などの受賞歴もあり、2013年の「グレート・ビューティ 追憶のローマ」ではアカデミー賞の外国語映画賞を受賞しています。現在、イタリアを代表する映画監督の一人だと言っていいでしょう。

舞台はスイスの美しい山あいにあるセレブ御用達の超高級リゾートホテル。ここには、引退した有名作曲家や、次回作の脚本を執筆中の一流映画監督、休暇を過ごすハリウッドスターなどが宿泊しています。プライバシーは完全に守られ、素晴らしい施設と、若々しく熱心なスタッフの手厚いケアを楽しみ、美しい自然と静寂を堪能する。そんなホテルです。

画像: 連載 まつかわゆまの カレイドシアター ② 『グランド・フィナーレ』

マイケル・ケインが演ずる、80歳の高名な作曲家フレッドはこのホテルで長いバカンスを楽しんでいます。ハ―ベイ・カイテル演ずる映画監督のミックと昔話に興じたりちょっとした悪ふざけをしたりして、休日はゆっくりとすぎていきます。

 そんなある日、フレッドのもとにエリザベス女王の使いという人物が訪れ、フィリップ殿下の誕生日に、フレッドが作曲した名曲「シンプルソング」を指揮してほしいという女王のオファーを伝えます。
しかし、フレッドは即座にこのオファーを断り、理由を問われると「パーソナルなことだ」と答えます。それは、時々様子見に現れる娘レナもミックも聞いたことがない答えでした。
このホテルに滞在しているセレブ達はみな、昔の名声に今も支配されているような気がしてうんざりしている人たちです。だからこそミックも、ハリウッドスターのジミーも何か新しい挑戦をして、自分の真価を世に示してみたいと考えているのです。

ただ、フレッドはそんな新しい何かにはもう興味はなく、過去の栄光にもこだわることはありません。ただ、燃え尽き、何事にも無気力になってしまったという医者の診断にも全く動ずることはありません。
 そして、静かな日々がまた続いていくのですが、フレッド以外の人の静かな日々はだんだんと「なにもおこらないこと」にむしばまれていきます。そして…

ソレンティーノ監督らしく、美しくスタイリッシュな映像と音楽で、音楽しか愛さなかった男の孤独と悔いを静かな流れの中に描き出していきます。マイケル・ケインを始めとして、久しぶりに主役級の役を演ずる高齢の俳優たちが、とても素晴らしい演技を見せています。

お金と名声があっても、人生は孤独。だとしたら、今からそれが変えられるのだろうか、と考えをめぐらす登場人物たちが、愛おしくなってくる作品でした。

上映劇場は文化村ル・シネマ、池袋シネ・リーブル、新宿バルト9、シネスイッチ銀座など。4月16日土曜日からの公開です。

それでは最後に「グランドフィナーレ」から、アカデミー賞主題歌賞にもノミネートされた「シンプルソング#3」を、サイ・ジョーの歌で、聞いていただきながらお別れしましょう。
…おやすみなさい。また、来週

画像: Simple Song #3 - Sumi Jo (Youth's Soundtrack) - La giovinezza (colonna sonora finale) youtu.be

Simple Song #3 - Sumi Jo (Youth's Soundtrack) - La giovinezza (colonna sonora finale)

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