カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールを始め、世界の映画賞を受賞。
映画史に清冽な光をはなつ伝説の名作が、四半世紀の歳月を経て再公開!

1978 年、カンヌ国際映画祭の公式上映では、2,000 名を超える観客がスタンディングオベーションを送り、 審査員全員一致でパルム・ドールに決定。
その後も、米・ニューヨーク批評家協会外国語映画賞、仏・セザ ール賞外国映画賞など、各国の映画賞を総なめし、日本でも大きな反響を呼んだエルマンノ・オルミ監督の イタリア映画『木靴の樹』が、四半世紀ぶりにスクリーンに戻ってきます。

世界の巨匠エルマンノ・オルミ監督の長き映画人生における金字塔。
名もなき人々に向けるやさしく深い眼差し。
社会の不条理への静かな告発。
本作によって世界の注目を集め、『聖なる酔っぱらいの伝説』(ベネチア映画祭金獅子賞)、『ポー川のひ かり』、『楽園からの旅人』、80 歳を過ぎて万感の思いをこめた最新作『緑はよみがえる』等、オルミ監督は、 時代が激しく変化するなかで、人間への信頼と愛情に満ちた多くの名作を発表してきました。
世界の映画ファンから尊敬されるオルミの揺るぎない視線を示した代表作が『木靴の樹』です。

画像1: カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールを始め、世界の映画賞を受賞。 映画史に清冽な光をはなつ伝説の名作が、四半世紀の歳月を経て再公開!

秋のとりいれ、冬のおき火のもとでの語らい、春の日差しへの夢.. 土とともに生きる人々の営みが、美しく静謐な映像の中で描かれてゆく。
19 世紀末の北イタリア、ベルガモ。厳しい大地主のもとで、肩を寄せ合うように暮す四軒の農家。貧しい彼 らは農具や生活の品の多くを地主から借りていた。ある日、バチスティ家のミネク少年の木靴が割れてしまう。 父は村から遠く離れた学校に通う息子のために、川辺のポプラの樹を伐り、新しい木靴を作った。しかし、そ の樹木もまた地主のものだった...。
人々の暮らしが大地の四季のめぐりとともにあった時代。農家の貧しくつましい日々が、慈しみをこめて映 し出されてゆきます。厳しい農作業、祭、結婚、出産、喜びと悲しみ──現代の文明社会とは対極にある 人々の暮らしは、今日の私たちの心に一層の切実さをもって私たちの心に迫ってくることでしょう。

画像2: カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールを始め、世界の映画賞を受賞。 映画史に清冽な光をはなつ伝説の名作が、四半世紀の歳月を経て再公開!

ストーリー


19 世紀末、北イタリア、ロンバルディア地方ベルガモ。4家族が一緒に農場に住み込んでいる。
彼らは貧しく、この農場の土地、住居、畜舎、道具、そして樹木の1本1本に至るまで、ほとんど全て地主の所有 に属し、彼らがあげる収穫の 3 分の 2 は地主の物となる。
物語は4家族(バチスティ一家、アンセルモ一家、フィナール一家、ブレナ一家)のエピソードが絡み合ってすすんでゆく。
バチスティは、ドン・カルロ神父のたっての勧めで、息子のミネクを小学校にあがらせる決意をした。農家の子ど もを学校にあげるというのは、農村では異例のことだった。「こどもを学校にあがらせるなんて聞いたらみんながな んていうだろうか?」
ルンク未亡人は、夫に先立たれたあと、洗濯女をしながら 6 人の子どもたちを養っている。牛の世話と耕作は長
男のペピーノとアンセルモじいさんが受け持ち、上の娘ふたりは村で洗濯の注文を受けてくる。ペピーノは、まだ 15 歳だが、家計を助けるためこの冬からとうもろこし製粉工場に勤めることにした。アンセルモじいさんは、雪の日 にニワトリの糞を畑に撒き、春になったら苗を植えて一番にトマトを収穫できるように準備している。雪が降って大 地が凍えても、ニワトリの糞を撒いた土だけは冷えないからだ。その秘密は末娘のベッティーナだけが知っている。
ある日、ドン・カルロ神父は、ルンク未亡人の窮乏を見かねて、下の子ふたりを施設に預けるよう提案した。長男 のペピーノにだけこのことを相談すると、彼は夜も昼も働くから皆で一緒にいようという。この言葉に彼女はなにも いえなくなった。待ちわびた春が来て、子どもたちが大地を駆け回る頃、ルンク家の牛が病気にかかった。獣医は 手遅れだと言ったが、ルンク未亡人はあきらめず、礼拝堂で祈りをあげた。その祈りが神に通じたのか、牛はやが て回復した。
とうもろこしの軽量の日が来ると、けちなフィナールは、例年のように馬車の引き出しにいっぱい小石をつめこん で軽量をごまかした。その年の収穫は豊作で、地主は蓄音機を買った。フィナールはよく息子のウスティとつかみ あいの親子喧嘩をしたが、これは日常茶飯事のことだった。聖母祭の日、村の広場にメリー・ゴーランドが設けら れた。生まれて初めて政治演説集会を見物していたフィナールは、人込みの下の地面に金貨を一つ見つけた。 彼は農場に戻り、金貨を馬の蹄の泥の中に隠し、ひとりほくそ笑んだ。ある朝、金貨がなくなっていることに気付い たフィナールは、逆上して馬を殴りつけたが、逆に馬に追いまわされ蹴り殺されそうになった。恐怖のあまり寝込 んだフィナールは、治療のため医者ではなく祈祷師を呼んだ。
バチスティ家に男の子が生まれた。夕方学校から帰ったミネクは新しい弟と対面するも、彼の表情は暗かった。 一足しかない木靴が割れてしまったのだ。バチスティは夜になって、河沿いのポプラの樹の一本を伐り、深夜遅く までかかってミネクのための新しい木靴を作った。
ブレナ一家の美しい娘マダレーナは、紡績工場に勤めている。ある夕方、彼女は工場で知り合ったステファノ 青年に送られて帰って来た。彼女の両親も、農場の人々も何も言わなかった。ふたりの交際は村の皆に認められ たのである。聖母祭の数日前、縫布などの雑貨を満載した行商人フリキの馬車が来た。結婚を考えているマダレ ーナは布を買う。やがて、彼女はステファノと結婚式を挙げ、新婚旅行にミラノへ行った。ミラノの街は、労働者の ストライキと、それを抑圧する軍隊とで騒然としていた。ふたりは、目指していたサンタ・カテリーナ修道院のマダレ ーナの伯母の尼僧マリアを訪ねた。伯母のはからいで、その夜ふたりは、ベッドをふたつ隣り合わせにして作られ たダブル・ベッドで初夜を迎えた。
翌朝、伯母マリアが赤子を抱いて現れた。生後数か月の捨て子の親になってほしいと頼まれるふたり。ひきとり 手には修道院から養育費が支払われることになっているという。新婚夫婦はその赤子を黙って引き受け、農場に 戻った。
アンセルモじいさんのトマトは、計画通り、他の畑より 1 週間早く実を結んだ。じいさんとベッティーナはその年 初めての真っ赤なトマトを町へ売りに行った。
その日の夕方、ベッティーナとアンセルモじいさんが農場に戻ると、バチスティ一家がなけなしの家財道具を荷 車に積み込んでいた。河沿いの並木からポプラの樹が伐られていることが地主の目に留まり、農場を追われること になったのである。ミネクは、もう使うこともないであろう、母が夜なべして縫ってくれた学校鞄を大事そうに抱えて いる。農場の人々は誰もこの一家を見送ろうとしない。バチスティ一家の荷車が去ったあと、人々はやっと家の外 に出て、夜の闇のなかに遠く消え去っていく小さな灯を見続けるのだった。

画像: ストーリー


監督/脚本/撮影/編集:エルマンノ・オルミ Ermanno Olmi


1931 年 7 月 24 日、『木靴の樹』の舞台であるイタリア・ロンバルディア州ベルガモ県に生まれる。33 年 に、家族でミラノに移り住む。両親は農家出身の敬虔なカトリック信者。父は鉄道員だったが、反ファシズム運動で解雇され、第二次世界大戦中に死亡。母は、ミラノの電機会社エディソン・ヴォルタ社の工場の職工 で、自身も 49 年同社に入社。
はじめ演劇を志しミュージカルの演出などをしていたが、ロベルト・ロッセリーニの映画を観て以来映画の 魅力にとりつかれ、53 年工場で映画部が創設されるとともに映画部長に就任。61 年までに 30 本に及ぶ産 業や技術に関するドキュメンンタリー作品を製作した。

59 年、雪に閉ざされたダムで働くガードマンの老人と若い相棒の友情を細やかに綴った長編第 1 作『時 は止まりぬ』で長編劇映画に進出。ドキュメンタリーとして作りはじめ、フィクションとして完成させた本作でベ ネツィア国際映画祭でサン・ジョルジョ賞を受賞するなど好評を博した。61 年、長編 2 作目の『就職』ではふ たりの若者の大企業への就職を通して、社会の一員として働くことの困難と夢、疎外感を描き、同年のヴェネ ツィア国際映画祭でイタリア批評家賞、カトリック事務局映画賞など 3 つの賞を受賞するほか、その他各国 の映画祭でも数々の賞を受賞、注目を集める。

続いて 65 年には、急速に工業化を遂げている南部に転勤した若い工員とその妻が手紙のやりとりによっ て真の愛に目覚めていく様を描き、男女を結びつける愛の正体を凝視した長編 3 作目の『婚約者たち』を撮 影。本作は第 16 回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、国際カトリック映画事務局賞 を受賞。ドキュメンタリー映画の製作で培った観察力で、急激な工業化に翻弄される人々を描いたこの 3 本 で、映画作家としての地位を確立し、初期の傑作 3 部作として現在でも高い評価を得ている(日本では未公開)。
翌 66 年、家族(妻のロレンダ・デット、子供のファビオ、エリザベッタ、アンドレア)とともに、ミラノでの都会 の生活より田舎の自然に囲まれる生活を選び、ミベネト州アジアーゴ高原に移住。2016 年現在も同地に住 み、最新作『緑はよみがえる』はこの高原を舞台にしている。
78 年、本作『木靴の樹』で第 31 回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。

82 年、国営放送曲 RAI(イタリア放送協会)の総裁パオロ・ヴァルマラーナらと共に映画学校を創設。映画製作の時代に伴う変化に対応しつつ、実践的かつ創造的な映画理論を指導し、10 年あまりの間に、多数 の映画監督を輩出した。その間、幼児イエスを礼拝する巡礼の旅を描いた『どんどん歩いていくうちに』、ドキ ュメンタリー『ミラノ’83』など自身も平行して創作活動をつづけた。
87 年、地方の由緒あるホテルに給仕見習いとして参加した男女の学生 6 人組のひと夏の青春を描いた 『偽りの晩餐』で久しぶりに国際的舞台に登場すると、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞他 2 部門受賞。 続く翌 88 年には、初の原作もので、しかもパリが舞台、スター俳優(エドガー・ハウアー)を起用、英語作品と オルミ監督としては異例の、これまでとは趣を異にした『聖なる酔っぱらいの伝説』でヴェネツィア国際映画 祭のグランプリ、金獅子賞に輝く。

90 年代は、聖書の第一章をテレビ映画としておさめた『創世記:創造と洪水』などのほか、ドキュメンタリー の製作を中心に活動した。
2001 年、待望の劇映画『ジョバンニ』をカンヌ国際映画祭に正式出品。16 世紀初頭ルネサンス勃興期の 宮廷都市を舞台に、メディチ家の若き武将の人生最期の 6 日間を描いた本作は、ダヴィッド・ディ・ドナテッ ロ賞作品賞を初め 4 部門を受賞、興行的にも成功を博した。
03 年、市川準を主演にした『屏風の向こうで歌いながら』、05 年には、ケン・ローチ、アッバス・キアロスタミ と共に、ローマへ向かう列車で繰り広げられる人間模様をコメディタッチで切り取った瑞々しいオムニバス作 品『明日へのチケット』を作りあげた。
07 年になると自身最後の劇映画として、『ポー川のひかり』を撮影。時代に絶望し地位、肩書、そして名前 まで捨てて大学を去った若く高名な哲学教授の、岸辺の廃屋での村人たちとの交流を通して、現代におけ る真の人生の豊かさを問うた。
08 年、長年の功績を讃えられ、ヴェネツィア国際映画祭より栄誉金獅子賞を授与された。

13 年、引退宣言を翻し、『楽園からの旅人』を撮影。凋落した教会で愛を説き続ける老司祭とアフリカから のイスラム系不法移民者との交流から、宗教や人種の違いを越えた未来への希望を新約聖書の世界を通し て映し出した。
そして 14 年、息子のファビオを撮影監督、娘のエリザベッタをプロデューサーに迎え、第一次世界大戦 の厳しい塹壕戦に従事するイタリア兵を見つめた最新作『緑はよみがえる』を発表した。
『緑はよみがえる』は、4 月 23 日(土)より、岩波ホール他全国にて公開される。

◆『木靴の樹』受賞歴◆

カンヌ国際映画祭パルム・ドール、エキュメニカル審査員賞 、セザール賞最優秀外国映画賞
ヴィッド・ディ・ドナテッロ賞 作品賞 、ニューヨーク映画批評家協会最優秀外国語映画賞、 英国アカデミー賞ドキュメンタリー賞(ブラハティ賞) 、キネマ旬報外国映画ベストテン第 2 位(第 1 位『旅芸人の記録』)

コメント
戸外には馬車が行きかい、室内には蝋燭のランプが灯され、一家には何人もの子供が生まれ、男は黙っ て木靴を造り、女は小川で洗濯し、子供たちは野原を駆けまわり、病人が出れば祈祷師が呼ばれるという北イタリアの貧しい農村。
教会で結婚式を挙げたばかりの若い男女が馬車で船着き場に向かい、家族 と別れて無蓋の河船でミラノに向かい、デモで騒然とした街に驚きつつも徒歩で修道院にたどりつき、 そこで初夜を迎えるまでの寡黙な美しさ。
そのスタンダードサイズの画面には、映画がいま生まれたば かりだというかのような悦ばしい鼓動が脈打っている。                          蓮實重彦(映画評論家)

画像: 映画『木靴の樹』予告 youtu.be

映画『木靴の樹』予告

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【監督・脚本・撮影・編集】エルマンノ・オルミ
【音楽】ヨハン・セバスチャン・バッハ
【オルガン演奏】フェルナンド・ジェルマーニ
【美術】エンリコ・トヴァリエリ
【衣装】フランチェスカ・ズッケリ
【製作】アッティリオ・トリチェッリ
【出演】ルイジ・オルナーギ、フランチェスカ・モリッジ、オマール・ブリニョッリ他
(原題) 「L’Albero degli zoccoli」
(米)The Tree of Wooden Clogs (英)The Tree with the Wooden Clogs
1978 年/イタリア/カラー/スタンダード/187 分/DCP
©1978 RAI-ITALNOLEGGIO CINEMATOGRAFICO – ISTITUTO LUCE Roma Italy

3 月 26 日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー!

公式ホームページ
www.zaziefilms.com/kigutsu/



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