ヤクザと憲法
抗争シーンや襲名披露の場面などはヤクザ映画に頻繁に登場しますが、淡々としたヤクザの日常の記録は興味深いものです。
住宅街にある事務所の外観は素っ気ないもので看板もありません。部屋は綺麗に片付いていてミニマルです。そこに象徴的に置かれた木彫りの彫刻や富士山の風景画から伝統的な日本趣味を感じますが侘び寂とは違い戦国武将の嗜好に通じる外連味を感じさせるアイテムばかりです。忙しなく動く新人?は最近の自由な若者には無い礼儀正しさと忠誠心を持ち合わせている様に見えます。ドンと構えた若衆頭は世間一般のカジュアルなファッションが好きな様ですが、目つき、顔つき、体つき、話し方、動作などから身体に染み込んだ不気味なヤクザらしさを醸し出しています。
彼らが守る機能的な事務所は独特なルールが支配する空間です。これは高級ファッションブランドの整然としたショップやスターデザイナーを頂点とした主従関係に近い空気を感じました。苦痛や我慢、豪華を表すアイテムで心意気を表現する方法、見栄と従属を表す仕草など静かで張り詰めた緊張感があります。少しでもそのルール、琴線に触れたら最後、途端に修羅場に変わる怖さです。
では、この特別な空間と対局は何だろうと考えました。そこで一つの写真を思い出しました。それは、異型の人物を書く20世紀で最も重要な画家の一人とされているフランシスベーコンのアトリエの写真です。これ以上無いほど散らかった絵の具の中に孤独に座るベーコンは静かです。そこは修羅場であり作品は狂気を孕んで見えます。考えてみればヤクザの静寂が崩れれば修羅場が訪れます。それはルールから自由になった人間の真の姿なのかもしれません。

画像1: 「FINALHOME 津村耕佑の脳内サバイバル術」vol 10

画像2: 「FINALHOME 津村耕佑の脳内サバイバル術」vol 10

画像3: 「FINALHOME 津村耕佑の脳内サバイバル術」vol 10

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