シネフィル新連載「映画にまつわる○○」#03
映画におけるプレイスメントを考える 谷健二


ご無沙汰しております。映画の撮影やら映画祭の運営などでコラムの更新を怠っていました..ごめんなさい。
ということで再開します。
再開初回はプレイスメントについて考える。
広告業界に長年いたこともあり、直接担当はしていないが、まわりでなんとなくよく耳にしていたプレイスメント。

意味をWikiから拝借させていただくと
プロダクト・プレイスメントとは広告手法の一つで、映画やテレビドラマの劇中において、役者の小道具として、 または背景として実在する企業名・商品名(商標)を表示させる手法のことを指す。
さらに読み進めると
 誕生は1955年公開のハリウッド映画『理由なき反抗』と云われる。劇中でジェームズ・ディーンがポケットから櫛を取り出し整髪する シーンが何度も出てくるが、これを観た当時のアメリカの若者たちから「ディーンが使っていた同じ櫛はどこで買えるのか?」と映画会社(ワーナーブラザーズ)に問合せが殺到。

これが新しい宣伝ビジネスモデルになると気づいた映画会社は、以降、一般企業との「劇中広告でのタイアップ」を始める。
ハリウッド発、ジェームズ・ディーン初ということがわかる。
学生時代、『トゥルー・ロマンス』のクリスチャン・スレイターのサングラスに一目ぼれした友達に付き合って、1日中買い物したことを思いだす。いつの時代も変わらないってことですね。
そこで、これはすごいと思ったプレイスメントをご紹介。

画像: シネフィル新連載「映画にまつわる○○」#03 映画におけるプレイスメントを考える 谷健二

『新・仁義なき戦い/謀殺』
本家・深作作品から数十年。平成・仁義なきシリーズの2本目、『探偵はBARにいる』の監督・橋本一監督の初作品。
小林稔侍演じる組長の跡目争いにインテリ・高橋克典と武闘派・渡辺謙がお互いを信じつつ、すこしづつすれ違っていく物語。
次々と起こる抗争を背景に、信じあっていた2人の心境が変化していく脚本がなんとも秀逸。さらに、伊原剛志、山田純大、坂口憲二、
榊英雄、隆大介、石橋蓮司など出てくる役者さんがとにかくかっこよく、熱くなれる作品。
さて本題のプレイスメントの話。
小林稔侍が高橋・渡辺よりかわいがっている子分が高知東生。
親分の座をゆずりたくなく、切れ者の2人に対抗させるべく、自分に従順な高知をとくにかわいがる。

そこでの台詞がこれ。
『あの2人(高橋・渡辺)は龍と虎や。お前が麒麟になってあの2人を収めるんや。』
『麒麟、ビールでっか?』
『あほ!麒麟っていったら、最も傑出した人物の例えやんけ。』
絶妙のいいまわし。劇中にはもちろん(協賛であろう)キリンビールが多々登場するが、商品だけでなく企業名をはっきりいってしまうなんとも大胆でお手本となるプレイスメント、素晴らしい。
さらに設定にも食い込んでいる。高橋が肝臓が悪く禁酒しているが、最後の最後に逃げ回ったあと○○○をグイッと飲むシーンが
用意されている。文字で書くとなんともあざといが、実際映画をみると物語にかなり入っているタイミングなので全く気にならない。

数多くの映画を見てきたが、違和感なく、これほどまでにプレイスメントされている作品も珍しいのではないかと思う。
もちろん作品自体もかなりおすすめである。
いつの時代でもあるが、なかなか若い監督が容易に映画を撮れるわけではないので、いろいろな手段を模索したい今日この頃です。
次回またお楽しみに。

新 仁義なき戦い/謀殺(予告編)

youtu.be

This article is a sponsored article by
''.