画像: 会場風景-宇部興産株式会社賞「空をみんなで眺める」志賀政夫- photo(C)cinefil art review

会場風景-宇部興産株式会社賞「空をみんなで眺める」志賀政夫- photo(C)cinefil art review

第2回 23歳の挑戦、歴史ある野外彫刻展の「第26回UBEビエンナーレ」
2015年10月4日-11月29日-cinefil art review

「ART@Kyushu」第2回目は山口県の南西部に位置する宇部市の「第26回UBEビエンナーレ」です。
UBEビエンナーレは1961年に開催された第1回宇部市野外彫刻展をルーツに持ち、その後公募形式になりましたが、「現代日本彫刻展」の名称で知られる、非常に長い歴史を持つ野外彫刻展です。
炭鉱町は福岡の筑豊炭田や北海道をイメージしますが、宇部市も江戸時代より採炭され、海底炭田として知られる「宇部炭坑」の都市でした。
その後、宇部市は炭鉱都市からセメント事業、石炭化学事業に転換し、現在まで工業都市として発展してきました。
工業都市として都市整備されていくなかで、UBEビエンナーレは戦後日本の彫刻の歴史とともにあったといっても過言ではありません。
歴代の受賞者をみても、江口週、村岡三郎、多田美波、土谷武といったように、戦後日本を代表する彫刻家の面々です。

画像: 大賞模型作品-「宇部の木」竹腰耕平- photo(C)cinefil art review

大賞模型作品-「宇部の木」竹腰耕平- photo(C)cinefil art review

UBEビエンナーレと都市空間における彫刻

UBEビエンナーレの特徴といえば、主に抽象彫刻が多いことですが、近代都市整備のなかで都市が持つダイナミズムを表現したものを多く感じます。
アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)出版の季刊誌「オクトーバー」の編集者で知られる美術批評家ロザリンド・E・クラウスは、1979年の論文「展開された場における彫刻」のなかで、数学者のフェリックス・クラインのクライン群(4元群)を用い、「風景」、「建築」、「非-風景」、「非-建築」といった枠組みをつくりました。
これは単に、記念碑的なモニュメントとしての彫刻から、都市のなかの環境造形、サイト・スペシフィック(特定の場所に帰属する)、あるいはアースワークといったものを、彫刻によるポストモダンの展開として捉えたものです。

画像: 大賞作品-「宇部の木」竹腰耕平- photo(C)cinefil art review

大賞作品-「宇部の木」竹腰耕平- photo(C)cinefil art review

史上最年少23歳の竹腰耕平による大賞受賞

今回の「第26回UBEビエンナーレ」では、現在京都府在住の23歳のアーティスト竹腰耕平による「宇部の木」が、30カ国266点の応募作の中から、史上最年少で大賞を取りました。
実際に会場近くの、同じときわ公園のなかの木の根を掘り出し、アクリル板の床をつけて展示構成しています。
この作品が持たらす置き換えの作業は、先の彫刻の持つあらゆる関係性や、存在、価値といったものを考えさせます。
1993年開催の「第15回UBEビエンナーレ」大賞を取った西雅秋が、コンセプトのもとに大きな鉄鋼のサークルを土の中に埋めたり、川や海に沈めたりしていくものを、もう一度掘り起こして展示する関係性とも違います。
あくまでも「宇部の木」というタイトルにあるように、この場所での置き換えの作業です。

画像: 毎日新聞社賞作品-「Transmigration」プロジェクトムーン [チェ ウンドォン-ウィ セボク]」竹腰耕平- photo(C)cinefil art review

毎日新聞社賞作品-「Transmigration」プロジェクトムーン [チェ ウンドォン-ウィ セボク]」竹腰耕平-
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画像: 宇部マテリアルズ賞作品-「水土の門-Ⅱ/天地を巡るもの」戸田裕介- photo(C)cinefil art review

宇部マテリアルズ賞作品-「水土の門-Ⅱ/天地を巡るもの」戸田裕介- photo(C)cinefil art review

画像: 宇部商工会議所賞-「Fantaisie a la crème de Pistache au the vert et son chocolat acrylique」 ヴィンセント オリネット- photo(C)cinefil art review

宇部商工会議所賞-「Fantaisie a la crème de Pistache au the vert et son chocolat acrylique」
ヴィンセント オリネット- photo(C)cinefil art review

画像: 会場風景-手前作品「orange」津村拓- photo(C)cinefil art review

会場風景-手前作品「orange」津村拓- photo(C)cinefil art review

18組のアーティストによる野外彫刻展

他の受賞もあわせて、計18組のアーティストによる野外彫刻展ですが、地味に感じる彫刻展ではなく、鑑賞者も楽しめる、少し華やかな印象を感じる展示です。
ときわミュージアム館内では、入賞模型作品展やUBEビエンナーレライブラリーもあり、多角的に展示を楽しめる内容になっています。
UBEビエンナーレと瀬戸内国際芸術祭の連携事業の一環として、第26回UBEビエンナーレ大賞のアーティストは瀬戸内国際芸術祭2016に参加します。
竹腰耕平の今後の展開が気になります。

画像: ときわミュージアム会場風景-入賞模型作品展- photo(C)cinefil art review

ときわミュージアム会場風景-入賞模型作品展- photo(C)cinefil art review

画像: ときわミュージアム会場風景-UBEビエンナーレライブラリー- photo(C)cinefil art review

ときわミュージアム会場風景-UBEビエンナーレライブラリー- photo(C)cinefil art review

第26回UBEビエンナーレ 概要
会  期:2015年10月4日(日)-11月29日(日)
時  間:9:00–17:00
入場料:無料
会  場:緑と花と彫刻の博物館(ときわミュージアム)彫刻野外展示場
     山口県宇部市野中3-4-29
     phone 0836-37-2888
     fax 0836-37-2889
     e-mail info@ube-museum.jp
出品アーティスト:志賀政夫、田中清隆、三木俊治、田中毅、浅野芳彦、戸田裕介、久村卓、浅野左倉、武田充生、西澤利高、クオ クオ シャン、プロジェクト ムーン チェ ウンドォン-ウィ セボク、竹腰耕平、gh/e(ジーエイチ/イー、御幸朋寿・永田康祐・砂山太一)、津村拓、晴柀幸一、谷口顕一郎、ヴィンセント オリネット
公式サイト:http://www.ube-museum.jp/modules/pico/content0095.html

森秀信 プロフィール

1966年長崎市生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了後、現代美術センターCCA北九州リサーチプログラム修了。
主に現代美術の創作活動の他、展覧会のキュレーションやワークショップの企画を担当。専門は現代美術。

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