秋のソナタ』(イングマール・ベルイマン 78)

 主演のイングリット・バーグマン、美貌に惹かれて子どもの頃は好きでしたが、今は演技が饒舌な気がして好きではないです。そのバーグマンの演技が、この映画ではプラス方向へのエネルギーになってると感じます。
 この映画は母娘の確執を描いた映画です。最初は地味な色調の映像から始まりますが,バーグマン演じる母の登場と共に華やかになります。特に夕食時、娘のウルマンの予想を裏切って真紅のドレスでバーグマンが現れる場面では、田舎暮らしの娘一家のなかで異物感を出しまくりなのがすごいです。母親が存在だけで娘にとって、どんな存在なのかを見せつけ、ちょっとした表情の変化からも目を離せなくなります。

画像: http://ameblo.jp/eigajikou/entry-11629865051.html

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 物語が進むにつれて、二人の関係が赤裸々になっていき、娘は生身の自分をぶつけてくる、呪咀のような言葉で追いつめていく、母は取り繕って逃げ回ることしか出来なくなっていく。真に愛し合っていて、絆を切れないからこそ生まれる愛憎劇に圧倒されます。

 映画の序盤で、ショパンを弾く母を食い入るような目で見つめ続ける娘、なんでこんな見つめなければならないのか娘も分からないし、母も見つめられるのか分からない。母の娘に対する負い目、娘の母に対する引け目コンプレックス、という簡単な言葉で表せることではない。だからこそいがみあい傷つけあってしまう。
 母が仕事を一時期休んで、娘をかまうようになったときに過干渉が玩具にされているようで堪らなくイヤだった告白する場面、私も思い当たることがあるので共感しました。
 ほぼワンセットという難しい条件で撮影された映画ですが、名手スヴェン・ニクヴィストの丁寧な撮影が素晴らしいです。
 この作品は、女優イングリッド・バーグマンの遺作でもあります。

12月8日公開映画『秋のソナタ』予告編

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監督: イングマール・ベルイマン
出演: イングリッド・バーグマン リブ・ウルマン
原題: Höstsonaten
販売元: 紀伊国屋書店
価格: 5184円
発売日 2013/12/21
時間: 92分
製作年・製作国: 1978年 スウェーデン

御木茂則(映画キャメラマン)
1969年生まれ 日本映画学校卒業
映画の撮影の仕事を20年以上続けています。仕事を続けながら沢山の映画を観てきました。数えたことはないですが、多分4000本以上の映画を観ているはずです。どの映画も愛おしい作品ばかりであり、私が仕事を続けていくうえで大切なことを教えてきてくれました。この連載は愛すべき映画への感謝の思いで始めます。
「再会したい映画」というタイトルはベタですが、また映画館のスクリーンでこの映画に再会したい!という願いをこめています。読んだ方が紹介した映画に興味を持ってもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします。
撮影担当作品
『部屋/THE ROOM』(園子温 1993年)
『バッハの肖像 LFJより』(筒井武文 2010年)
『フレーフレー山田 忘れないための映像記録』(監督/撮影・2011年)
『希望の国』(園子温 2012年)
『ヒキコ 降臨』(吉川久岳 2014年)
『三人吉三』(串田和美 大形美佑葵 2015年)
撮影補
『奈緒子』(古厩智之 2008年)
『生きてるものはいないのか』(石井岳龍 2012年)
照明担当作品(撮影 芦澤明子)
『孤独な惑星』(筒井武文 2011年)
『夜が終わる場所』(宮崎大祐 2011年)
『受難』(吉田良子 2013年)
『滝を見にいく』(沖田修一 2014年)

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