画像: (C)cinefil art review

(C)cinefil art review

現在、会田家の「作品撤去問題」が話題のMOT(東京都現代美術館)で開催されている展覧会です。

4組の作家たち[ヨーガン レール]、[はじまるよ、びじゅつかん(おかざき乾じろ 策)]、[会田家(会田誠、岡田裕子、会田寅次郎)]、[アルフレド&イザベル・アキリザン]が、美術館の展示室のなかに、「ここではない」場所への入口を作ります。

MOTでは、毎年、夏休み期間に、子どものための展覧会を開催しています。今までは未就学児向けでしたが、今回は、子どもの知性に訴えかける、問題定義型のものということで、小学生・中学生・高校生向けに企画したそうです。

対象の世代というのは、どちらかというと親と一緒に行動しない世代です。その世代にこそ、自分たちの視点で、見て、考えて欲しい、ということです。

「ここはだれの場所?」「自分の場所はどこ?」というのは、人間の権利に関わります。場所についての問いかけから、様々な問題定義につなげるという意図があります。

展覧会公式サイト http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/whoseplaceisithis.html

■美術館はだれのもの?
ヨーガン レール

デザイナーとして有名なヨーガン レールは、晩年の2年くらい、移住先の石垣島でアクティビストともいえるような活動をしていました。石垣島での生活の中で、島がどこからか流れ着くゴミに荒らされていることに心を痛め、「ゴミからまた美しいものを作ろう」と決意してつくり貯めた作品群が展示されます。これらは、なんとも言えない…恐ろしく美しいです。

画像: 石垣島に流れ着いた、ペットボトルのキャップや様々なプラスチック製品の破片(C)cinefil art review

石垣島に流れ着いた、ペットボトルのキャップや様々なプラスチック製品の破片(C)cinefil art review

画像: 製作されたランプの数々(C)cinefil art review

製作されたランプの数々(C)cinefil art review

ヨーガン レールが足もとの砂の感触がおかしいことに気付き、よく見ると、それは細かいプラスチックだったそうです。プラスチックは分解されないので、どんどん細くなるだけなのです。下の対になっている写真は、「美しい自然」と「もう一つ同時にある現実」です。

画像: 上の写真は「美しい自然」と「もう一つ同時にある現実」。手前は細かくなったプラスチック。(C)cinefil art review

上の写真は「美しい自然」と「もう一つ同時にある現実」。手前は細かくなったプラスチック。(C)cinefil art review

画像: 奥の壁面に架けられているのはビーチサンダル(C)cinefil art review

奥の壁面に架けられているのはビーチサンダル(C)cinefil art review

■美術館はだれのもの?
はじまるよ、びじゅつかん(おかざき乾じろ 策)

おかざき乾じろ=岡崎乾二郎氏は、子どもしか入れない美術館を、美術館の中につくりました。バリケードのような塀の中、大人は入れません。入り口から覗くだけです。中には、「自分の思いを話しかけてくる謎の監視員」がいます。

画像: バリケードのような塀(C)cinefil art review

バリケードのような塀(C)cinefil art review

画像: 入り口は「にじり口」のよう(C)cinefil art review

入り口は「にじり口」のよう(C)cinefil art review

岡崎氏によれば、
「大人の条件→社会に合わせられる。」
「子どもの条件→社会に合わせられない。」
「美術・芸術は自分で感じた・考えたことを自分で表現するのだから難しい。」
とのこと。

子どもたちは、ここで見た作品について、自分たちの言葉で語ることでしょう。
にじり口みたいな入り口にしたのは、「これから美術を見るぞ」という心構えをつくるため、だそうです。

■社会はだれのもの?
会田家:岡田裕子、会田誠、会田寅次郎

今回の企画には、それぞれが現代美術家として活躍している父と母、そして子どもの親子三人で、会田家として参加しています。子どもが生まれてから、夫婦で話す機会が増えたそうで、そんな家族の新旧作品群です。

3人による共同作業の垂れ幕が、「作品撤去問題」で話題の「檄」です。内容は、なんともユーモラス。ウィットに富んでいます。美術館に、大きく家族の日常会話を出しちゃった感じです。これを「檄」と名付けたところも笑えます。その後ろに見える映像が、ビデオ作品「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」。こちらも笑うしかない。

これらを「政治的」と見るのは、内容が解らず、もしくは見てもいないで、「表現方法が政治的っぽい」からという視点でしょうか。

画像: 話題の「檄」の垂れ幕(C)cinefil art review

話題の「檄」の垂れ幕(C)cinefil art review

画像: 左手の映像が、ビデオ作品「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」(C)cinefil art review

左手の映像が、ビデオ作品「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」(C)cinefil art review

なお、話題となっている作品撤去要請は、会田誠氏のコメント(http://m-aida.tumblr.com)によると、下記の流れだそうです。MOTの「友の会会員」1名から美術館にクレームがあったこと、そして、東京都庁のしかるべき部署からも美術館に要請があったことを受けて、美術館としてどうするか検討した。その結果、美術館を代表する形で、チーフキュレーターと企画係長が、会田氏に2作品に対する撤去要請を行った。

キュレーターはもちろん、アーティストの作品制作の意図を汲んでおり、この2作品が企画に相応しいものとして展示に同意していたはずなので、この撤去要請は断腸の思いのはずです。

それこそ、「ここはだれの場所?」、「東京都の施設だから?」、「東京都ってなに?」、「東京都民ってだれ?」、「東京都に住んでいる私の意見はどうなるの?」

あれ? 美術館の企画通りに、「私たちの場所」をもう一度探すことになっていませんか?

画像: 作品解説する「会田家」。奥に写っているのは、会場でリアルタイムで製作する会田氏の絵を木版にする彫り師の方。(C)cinefil art review

作品解説する「会田家」。奥に写っているのは、会場でリアルタイムで製作する会田氏の絵を木版にする彫り師の方。(C)cinefil art review

■私の場所はだれのもの?
アルフレド&イザベル・アキリザンによる「住む:プロジェクト−もう一つの国」です。

彼らが4年間取り組んでいる「住むこと」をテーマにしたワークで、オーストラリアのコンテンポラリー・アートミュージアム向けの制作がきっかけだったそうです。テーマは「Engagement(対話していく、関わっていくこと)」です。

「場」というものも重要なコンセプトです。作品が作られる「場」、「コミュニケーションする場」などがあります。今回も、美術感近くの江東区立元加賀小学校の生徒たちと協働しました。子ども達に、「夢のおうち」や「今いる場所」について考えてもらい、ダンボールで模型を作ってもらいます。それを積み上げてタワーにしています。

画像: 展示空間には、たくさんのタワー(C)cinefil art review

展示空間には、たくさんのタワー(C)cinefil art review

画像: タワーのクローズアップ(C)cinefil art review

タワーのクローズアップ(C)cinefil art review

同様の作品をインスタレーションとして、オーストラリアでは8箇所くらいで開催したそうですが、場所ごとに違いがあるそうです。その違いが「場に馴染む」ということであり、「移住」とも関わります。

制作の最中は、キュレーターとのやりとり、小学生とのやりとり、美術館にどう置くか、など様々な「Settlement(すまう。腰を落ち着ける)」についても考えます。もちろん、最後はオーディエンスとの関わりも考えているので、これも「Engagement」です。そして、見え方より、作品とオーディエンスがどういう関係を作っていくか「Relationship」が重要です。

会場には、訪れたオーディエンスが、自分たちの「家」の模型をつくる空間が設けてあります。そこで作られた「家」は、展示されている作品に追加されていくそうです。

画像: オーディエンスが「家」をつくることが出来るスペース(C)cinefil art review

オーディエンスが「家」をつくることが出来るスペース(C)cinefil art review

「自分たちの場所」を考えて、ここで「家」もつくっちゃいましょう。
下記の関連プログラムもあるので、子ども連れでぜひ!


▪️ワークショップ 「ここはだれの場所? 自分だけの家をつくろう!」

「家」ってなんだろう?「自分の場所ってなんだろう?」
このワークショップでは「家」や「自分の場所」について考えて「家」を作ります。

対象|3歳以上 
*中学生未満のお子様は保護者と一緒にご参加ください。 *ハサミを使います。
実施日| 7月中の土日祝、8月中の毎日(休館日除く) *各日2回制
時間|1回目 10:45~11:30/ 2回目 11:45~12:30
定員|各回26名様(整理券制)
会場|本展会場内アルフレド&イザベル・アキリザン展示室内ワークショップスペース
参加費|無料(ただし当日有効の本展チケットの提示が必要です。)

【整理券配布について】
各回とも「ここはだれの場所?」展会場入口にてお1人様につき1枚お渡しします。
各回ともに10:00より配布
*定員に達し次第、整理券の配布は終了します。

▪️展覧会情報

会期:2015年7月18日(土)―10月12日(月・祝)

開館時間:10:00〜18:00
*2015年7~9月の金曜日は21:00まで
*入場は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(2015年7月20日、9月21日、10月12日は開館)、7月21日、9月24日

会場:東京都現代美術館 企画展示室1F

観覧料:一般1,000円(800円)/ 大学生・専門学校生・65歳以上800円(640円)/ 中高生600円(480円)★小学生以下無料★
*小学生以下は保護者の同伴が必要です
*( )内は20名以上の団体料金
*身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)は無料です。
*毎月第3水曜日は65歳以上の方は年齢を証明できるものを提示していただくと無料になります。
*本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
*同時開催の「オスカー・ニーマイヤー展」「きかんしゃトーマスとなかまたち」との2展、3展セット券もございます。

アクセス:東京メトロ半蔵門線・清澄白河駅B2番出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線・清澄白河駅A3番出口より徒歩13分

美術館お問い合わせ:03-5245-4111(代表)、03-5777-8600(ハローダイヤル)

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
協力:株式会社ヨーガンレール、江東区立元加賀小学校

同時開催:2015年7月18日(土)-10月12日(月・祝)
「オスカー・ニーマイヤー展」
「きかんしゃトーマスとなかまたち」
「MOTコレクション 戦後美術クローズアップ」

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