「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館 -cinefil art review

2015年6月16日から始まった、今回が2回目となる独立行政法人国立美術館5館による、共同企画展です。5館というのは東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館です。
前回は2010年の「陰影礼賛」展(国立新美術館)でした。

今回は合計4万点の国立美術館のコレクションの中から、美術館そのものをテーマに、様ざまな時代や分野の、約170点の作品を厳選しています。
そしてそれらを36個のキーワードに沿って、辞典のように紹介しています。

画像: ©cinefil.asia  「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館

©cinefil.asia 「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館

美術館をテーマとした展示はいままでにもありましたが、ここでは従来と異なる展示形式を目指しています。
美術館を、作品を保管・展示する動かぬ器として捉えるのではなく、多様な機能を持った複合的なメディアとみなして、分節化しているのです。
「美術館の機能や役割」、「美術館の具体的な営み」、「作品の属性や質に関わるもの」、「その質を担保する枠組」といったものです。

そのため、例えば「Light:光/照明」の項目では、絵画作品とともにスポットライトの光そのものが壁に置かれる、ということになりました。

画像: 左手と中央の四角がただの照明の光です。「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館  ©cinefil.asia

左手と中央の四角がただの照明の光です。「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典
国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館 ©cinefil.asia

また、通常は並ぶことのない作品が隣り合わせになることで、新しい意味が生まれるのではないか、との意図があり、「Original:オリジナル」の項目では、マルセル・デュシャンの「レディメイド」とピエール・オーギュスト・ルノワールによるルーベンス作品の模写、マルセル・ブロータースの「署名、シリーズ1」が同じ部屋に並んでいました。全てが一緒に目に入るところに立つと、確かに今までにない違和感を覚えます。

画像: 左手にマルセル・ブロータースの「署名、シリーズ1」、中央にマルセル・デュシャンの「レディメイド」、右手に「ピエール・オーギュスト・ルノワールによるルーベンス作品の模写」©cinefil.asia

左手にマルセル・ブロータースの「署名、シリーズ1」、中央にマルセル・デュシャンの「レディメイド」、右手に「ピエール・オーギュスト・ルノワールによるルーベンス作品の模写」©cinefil.asia

そのような組合せの中では、「Tear:裂け目」の項目で、平面作品(厳密には平面作品ではない)の「空間概念 期待:ルーチョ・フォンタナ」とビデオ作品「切り裂き:ゴードン・マッタ=クラーク」、そしてこちらは輸送中の事故で裂け目が入ってしまい、後に修復された平面作品「哲学者クラテース:ジュゼペ・デ・リベーラ」が、並列しているのが面白かったです。

「これからの美術館辞典」という副題がついていますが、具体的に「これから」が示されているわけではありません。
まずは「これまで」を知ってもらい、「これから」を語り合う場づくりをしたい、会場を訪れる鑑賞者の皆さんや、ジャーナリズムとともに、「これから」を展開していくのが理想のようです。

普段、私たちはあまり意識していませんが、国立美術館のコレクションは国民の財産です。
「美術館と国民との距離を縮めたい、国民の皆さんから美術館への要望をぜひ聞いてみたい。」と語る加茂川幸夫、東京国立近代美術館長の言葉が、記憶に残ります。

画像: 奥の部屋「Plinth:台座」を示す間仕切り壁の小口面。右手は「Oliginal:オリジナル」の項目に含まれる「トロウッド:斎藤義重」「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館  ©cinefil.asia

奥の部屋「Plinth:台座」を示す間仕切り壁の小口面。右手は「Oliginal:オリジナル」の項目に含まれる「トロウッド:斎藤義重」「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館 ©cinefil.asia

会場デザインは、トラフ建築設計事務所です。

辞典のように、他の頁・項目にすぐ飛べる感覚で別の空間に移動出来ることを意図しています。
通常は、一筆書きになるようつくられることの多い展示導線ですが、今回は部屋ごとの移動がランダムに出来、壁のあちこちに空いている穴から、隣室の作品や、鑑賞者の姿が見えます。
間仕切り壁の小口部分は、まさに辞書のようにアルファベットが記されています。

カタログも辞典のようなつくりになっています。
これからの美術館について語り合いながら、このカタログに付箋を貼っていきたいです。

画像: ©cinefil.asia 「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典  国立美術館コレクションによる展覧会」カタログ@東京国立近代美術館

©cinefil.asia 「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」カタログ@東京国立近代美術館

「No Museum, No Life? ―これからの美術館事典
国立美術館コレクションによる展覧会」@東京国立近代美術館

[イベント情報]
○ギャラリートーク
桝田倫広(東京国立近代美術館研究員・本展企画者)、新藤淳(国立西洋美術館研究員・本展企画者)
2015 年6 月26 日(金) 18:00-19:30
2015 年7 月11 日(土) 14:00-15:30
2015 年8 月28 日(金) 18:00-19:30
場所:1階企画展ギャラリー
*申込不要、要観覧券

○MOMATサマーフェス(仮称)
2015 年7月31 日(金)~ 2015年8月2日(日)の3日間
詳細は近日公開


[展覧会概要]
会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
会期:2015年6月16日 - 2015年9月13日
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし7 月20 日は開館)、7月21日(火)
主催:独立行政法人国立美術館
共催:朝日新聞社・東京新聞・日本経済新聞社・毎日新聞社・読売新聞社・NHK

http://www.momat.go.jp/am/exhibition/no-museum-no-life/

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