画像: 京都文化博物館フィルムシアター、映画監督市川崑の世界。『おとうと』(1960)

京都文化博物館フィルムシアター、映画監督市川崑の世界。『おとうと』(1960)

京都文化博物館フィルムシアター、映画監督市川崑の世界。5月22日は『おとうと』(1960)

京都文化博物館フィルムシアター、映画監督市川崑の世界。5月22日は『おとうと』(1960)。原作は幸田文の半自伝的内容。

映画化に際し市川崑と宮川一夫は、大正時代の情景表現に際し、室内調度の表面を油等で加工、ロケでも木の葉にグレーの顔料を吹付ける等して撮影。現像済のポジの段階で発色部分の脱銀粒子を残す手法“銀残し”という特殊現像で仕上げられ、水彩画のようなカラー作品となった。

今回上映のフィルムは、1971年に宮川氏により銀残しで再現されたものであるが、残念ながら退色が激しい。
岸恵子は日本的女性に期待される、優しさと厳しさ、芯の強さと弱々しさ、愛の深さと知的つつしみ等、併存させるのが難しい課題を、本作において“エレガントなお姉さん”として見事に昇華させた。

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『おとうと』(1960)、ストーリー

『おとうと』
1960(昭和35)年大映東京作品/96分・カラー
※上映用フィルムの退色が進んでいます、ご了承ください

監督:市川崑 脚本:水木洋子 製作:永田雅一 企画:藤井浩明 原作:幸田文 
撮影:宮川一夫 録音:長谷川光雄 照明:伊藤幸夫 美術:下河原友雄 色彩技術:田中省三 衣裳考証:上野芳生 助監督:中村倍也 編集:中野達治 音楽:芥川也寸志 

出演:岸恵子(げん)、川口浩(げんの弟・碧郎)、田中絹代(げんの継母)、森雅之(げんの父)、土方孝哉(碧郎の弟・田中)、友田輝(鉄工場の息子)、岸田今日子(田沼夫人)、仲谷昇(署の男)、江波杏子(看護婦・宮田)、穂高のり子(分院の看護婦)、浜村純(院長)、夏木章(刑事)、飛田喜佐夫(馬子)、伊藤光一(船宿の船頭)、星ひかる(借馬屋)

げんと碧郎は三つ違いの姉弟。二人の父は作家だが家庭では無能な暴君に等しく、後妻の母は足が不自由で、その上ひがみっぽい性格だった。暗く貧しい家庭の中で、姉弟だけがお互いの心をわかり合える唯一の相手であった。
学校でのちょっとした事件をきっかけに、碧郎は不良仲間とつきあい始めた。やがて万引きがもとで退学処分になっても、姉のげんだけが碧郎の世話を焼いた。・・・。

「婦人公論」に1956年から連載が始まった幸田文の同名小説を原作に、「シナリオ」誌上で発表された水木洋子の脚本から映画化。

市川が和田夏十以外の脚本家と組むのは1953年の『青色革命』以来となる。
原作は、幸田露伴を父に持つ幸田文の半自伝的内容で、市川は映画化に際し、家庭内の父、継母、姉、おとうとの孤独と愛を浮き上がらせるため、その映像表現において撮影の宮川一夫らと共に、様々な工夫を施した。

特に色彩に関しては、大正時代の情景演出と併せて、全体を抑えたモノクローム調の仕上げるために、室内セットでは調度から柱、壁、襖に至るまで表面を油等で加工し、ロケーションでも木の葉にグレーの顔料をコンプレッサーで吹付け、モノクロームに近い感じのライティングで被写体の色を殺した。
こうして慎重に撮影されたアグファ・フィルムは、現像済のポジの段階で発色部分の脱銀粒子を残す手法“銀残し”という特殊現像で仕上げられ、水彩画のようなカラー作品となった。

俳優陣の出来も素晴らしく、特にフランスから帰国して主演した岸恵子は、日本的女性に期待される、優しさと厳しさ、芯の強さと弱々しさ、愛の深さと知的つつしみ等、併存させるのが難しい課題を、本作において“エレガントなお姉さん”として見事に昇華させた。
(キネマ旬報賞第1位作品)

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