【明日公開】映画『抱擁』。
『ネムリユスリカ』や『夏の祈り』などのドキュメンタリ作家・坂口香津美が当時78歳の実母にカメラを向け、愛する者の喪失や自らの老いという現実に直面した1人の女性の生き方を捉えたドキュメンタリ。

画像: シネフィル映画短評 第26回 『抱擁』

伴侶との別れが引き起こす精神的混乱の中、38年ぶりに帰郷した鹿児島県種子島で再スタートを切る監督の母坂口すちえさんとその妹であるマリ子さんをめぐる人々の4年間にわたる葛藤の日々と、絶望からの再生をありのままに映し出す。
年老いた母親が少しずつ回復していく姿に胸を揺さぶられる。くぅーっ、リアルだなあ。衝撃的だなあ。

誰もが抱えるであろう“老いゆく親をどうするか?”がテーマ。
現実は厳しくて辛くて残酷なんだけれど、カメラを通しているのでとても客観的に、そして各人のキャラクタや方言での会話、家族愛などのせいかユーモアたっぷりの温かい印象。
歳を取ること、老いることってやっぱり美しくないんだなあと思わされるショッキングで胸を締め付けられるようなシーンが続くので目を背けたくなるけれど、まあ当然自分の母親を思い浮かべながら最後まで観ちゃうんだよね。

後半、希望が見えてくると共にヒタヒタと静かに深い感動が押し寄せてきて少しの涙にボクは包まれた。
子供が独立したあとの夫婦の時間を“第3の人生”、そのあと伴侶を失って1人で生きる時間を“第4の人生”と言うらしいけれど、その第4の人生について思いを巡らせた。
付き合う女性には「愛する人を失った悲しみを君に味わわせたくないからボクより先に死んでね」と言おうと思う。なんちって。家族や地元を大切にしたいと改めて思える、とても力強い作品だ。
2015年4月25日(土)公開。

シネフィル編集部 あまぴぃ

映画『抱擁』予告篇 Walking with My Mother

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