『グッド・ライ いちばん優しい嘘』と 難民の第三国定住計画

画像1: 『グッド・ライ いちばん優しい嘘』と 難民の第三国定住計画

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 『グッド・ライ いちばんやさしい嘘』が4月17日に公開される。
 1983年アフリカ・スーダンで内戦に巻き込まれ、徒歩で4年かけて隣国ケニアの難民キャンプに逃れた子どもたちが、やがて2001年アメリカの"ロストボーイズ"プロジェクトによってアメリカに移民する。そこでカルチャー・ギャップを感じながらも、新しい人生を送りなおしていくのだが…というストーリーの作品。実際にこのプロジェクトは存在し、親も家も国も無くした子どもたち、といってもアメリカに渡れるころにはすっかりいい大人になっているのだが、彼らを受け入れアメリカで生きていくためのサポートを与えていたという。ただし、それも911の事件により中止されてしまった。映画はその直前を舞台にしたものだ。

 親を殺されて逃げ出した時には兄妹四人だった主人公マメールだが、逃避行の途中で幼い弟が死に、兄は兵士に連れ去られてしまう。途中で一緒になった少年二人と姉で難民キャンプにたどり着き兄弟として育っていく。しかし、13年後アメリカに渡れることになった4人だが、やっと到着した空港で、女性は一般家庭が受け入れるという規則のため姉アビタルだけが引き離されてしまう。3人の青年たちはカンザスシティに向い、職業紹介所職員のキャリーに託される。アパートに連れて行き生活の仕方を教え、仕事をみつけ、キャリーたちのサポートで新しい暮らしをはじめる3人。とまどうばかりの生活が始まった。

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 前半のあまりに過酷な逃避行の描写に比べ、アメリカにわたってからは一種のカルチャー・ギャップ・コメディとも見て取れるような作りにいくぶんとまどうが、コメディ・タッチと見せながら物語は再びシリアスな移民を取り巻く社会状況への告発を内包したドラマへと姿を変えていく。マメールたちの悩みを受け止めることによって自身の生き方が変わっていくキャリーを後半の狂言回しにしたことによって、一般的なアメリカの観客にもアピールするようになっている。社会派的なテーマを持った作品は、いかに一般の観客が受け入れ、自分のこととして感じてくれるかが、問題解決の糸口を作るという意味で大切になるのである。

 アメリカはもともと移民の国であるし、難民の受け入れに対しても鷹揚なところがある。"ロストボーイズ"プロジェクトでは1999年から2002年の間に4000人の孤児(未成年の500人は個人の家庭が受け入れた)とすでに大人になった元孤児たちをアメリカに移住させている。システムとしては「難民の第三国定住」計画の一端であり、この計画の下、現在も難民たちは母国でも難民キャンプのある国でもない第三国、この制度を受け入れている先進国に移住していっている。

 日本も「難民の第三国定住」を受け入れている国の一つだが、その受入数は非常に少ないといっていいだろう。2008年にはミャンマーからの難民を受け入れることを決定し、2014年現在で18家族36人が来日、サポートを受けて定住を果たしている。本人たちがどこに移住したいかという点で、なかなか日本が移住先として希望されることがないともいえるのかもしれないが、それはなぜなのかをもう少し考えなくてはいけないのではないかと思う。

 たとえば、この映画は2001年にスーダンの青年たちがケニアの難民キャンプからアメリカに渡る話だが、この時期の後911の事件が起こり、アフガン・イラクへとアメリカ軍が戦争をしかけることになったとき、アフガンやイラクから日本へと逃げてきた"難民"がいた。かれらは"難民申請"をして日本への受け入れを望んだが、日本はそれを認めず、滞在期間が過ぎた人たちを不法移民として施設に収監し、中には自殺をする人も出る、というような事件もあったのである。日本は決して移民に開かれた国ではないし、まして難民にやさしい国、でもない。
 少子化に伴い、外国人労働者の受け入れを、などと政府は言っているが、その反面ヘイトスピーチなどという排外主義の行動を黙認している日本なのだ。そんなことを改めて考えるためにもこの『グッド・ライ いちばん優しい嘘』はいいきっかけになるのではないだろうか。

https://youtu.be/ShoiDrycTq8

 

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