シネフィル新連載 : 映画監督・旦 雄二の ☆ それはEIGAな! 1(通算 第20回)

映画『マンゴーと赤い車椅子』を観賞して -cinefil.tokyo

画像: シネフィル新連載 : 映画監督・旦 雄二の ☆ それはEIGAな!  1(通算 第20回)  映画『マンゴーと赤い車椅子』を観賞して   -cinefil.tokyo

映画『マンゴーと赤い車椅子』を観た(2月11日@ヒューマントラストシネマ渋谷)。仲倉重郎監督の、じつに30数年ぶりとなる新作、しかも、あの『きつね』以来の第二作である。心して拝見した。

往年の旧き良き松竹映画を観るような、正統派の、今風にヘンにヒネらない、さわやかで一本気な人生ドラマ、青春映画だった。いまの時代、日本映画も、つくり手は目一杯 複雑なプロットにしようとするわけだが、仲倉さんは いまも、けっして スレてはいない。第一作を世に問われた30数年前の若々しい感性を保ったまま、ピュアに、ストレートに、シンプルに、この社会と人生、青春を描いておられる。いまどき珍しい平易な語り口に目から鱗の思いがするとともに、そこで描かれているひたむきで前向きな物語に心が洗われた。

秋元才加の目ヂカラと意志力の体現に驚かされる。NAOTOも強い存在感を放ち、すばらしい。仁科 貴という、いまの日本映画の宝のひとつも、充分に用意された出番に応え、水を得た魚のようにその魅力を存分に発揮している。

この映画の高橋康夫エグゼクティブ・プロデューサーの夫人でもある三田佳子が、はじめ彼女とは気づかぬほどの徹底した老け役を虚心に演じ、最大限の応援参加となっていることも 敬服に値する。

これらはもちろん役者たちが持つ力量によるものだが、それらを適確に引き出し、見事にバランスのとれたアンサンブルにまとめ上げられた仲倉監督のご手腕をも讃えなければならないだろう。

2月11日、国家が「祭日」と定めた日の観賞となったため、場内は若い観客を中心にほぼ埋めつくされていた。仕事柄、上映直後のお客さんたちの反応を見る習性が身についているが、みなさん一様に満足そうな笑顔で席を立ったのを確認し、わがことのようにうれしい思いがした。

東京の渋谷はモーニング上映のみに切り替わったと聞くが、まだまだ、若い人をはじめとして さまざまな年令層の多くのかたが この映画をご覧になることを切に願うものである。-cinefil.tokyo

公式サイト
http://akaikurumaisu.com


旦 雄二(だん・ゆうじ)
映画監督 。長編映画に『少年』、制作したCMに『DHC』他多数。
助監督、CM会社を経て、フリー。

This article is a sponsored article by
''.